「半身不随の43歳男」身にしみた健常者の無慈悲

「歩きスマホ」でさえ障害者には大きな恐怖だ

前回に引き続き、漫画家・サシダユキヒロさんに「障害者になってしまったとき」にどういった心がけをすればいいのかお話を伺った(写真:Rich Legg/iStock)

2015年冬、漫画家・サシダユキヒロさんは、「ひき逃げ」に遭遇し、 左手足に障害を負った。障害等級(レベル)4。“社会での日常生活・活動が著しく制限される”ほどの後遺症が残り、左足には歩行を補助する装具が欠かせず、今も杖なしでは歩くこともままならない。

「障害を負ったことで、これまで当たり前にできていたことができない。日常生活が、これほどまでに変わってしまうとは夢にも思っていなかった」

自分は大丈夫だろう――。はたして、100%そう言い切れるだろうか? もしも自分の体に後遺症が残るような病気や事故に遭遇したとき、私たちはどう社会と向き合っていけばいいのか。健常者から障害者になった当事者だからこそ気づいた、「まだまだ障害への理解が不十分」という現状について、言葉を紡ぐ。

「例えば、歩きスマホ。向こうから視線を下にしたままスマホを操作している人が歩いてくると、本当に怖いんです。身体が不自由なので、気づいたときには避けることが間に合わないときもある。雨の日などは、スマホを持つ逆の手に傘などを持っているため、杖が弾き飛ばされることもある。僕自身、障害を負うまでは気がつかなかったことなので、自戒を込めて反省するとともに、日常のささいな不注意が、障害者にとっては大きな恐怖につながっていることを知ってほしい」

人が多い場所には怖くて近寄れない

2016年4月1日、障害者差別解消法が施行され、障害者への差別の禁止や、合理的配慮の提供が求められるようになった。しかし、今年NHKが実施したアンケートでは、「今の日本の社会に障害のある人への差別や偏見があると思うか」との問いに、「かなりある」が18%、「ある程度ある」が60%、実に約8割の人が「ある」と感じていることが明らかになった。

「障害を負ってから最初の1年ほどは、新宿や渋谷のような大きな街には恐ろしくて行くことができませんでした。不自由な身体である以上、人が多ければ多いほどリスクが高く、対人への恐怖心が募るんです」

次ページ障害者を「乗車拒否」するタクシーも
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
  • Amazon週間ビジネス・経済書ランキング
  • 非学歴エリートの熱血キャリア相談
  • 読んでナットク経済学「キホンのき」
  • 中学受験のリアル
トレンドライブラリーAD
  • コメント
  • facebook
4

コメント投稿に関する規則(ガイドライン)を遵守し、内容に責任をもってご投稿ください。

ログインしてコメントを書く(400文字以内)
  • 名無し13bf7da736bf4
    本来、理想論なら、障がいの方も健常者と全く変わらない生活、補償や目に見える支援だけでなく、精神的な面も十分すぎる補償があるべきなのです。
    なのにまだ理解が浸透していないとか、企業も、法律に従うだけの障害者雇用を形だけ程度で、その他にも障がい者の方から記事のような不満が多いということは、日本はやはり後進国と呼ばれてもおかしくないです。誰にとっても理想論を突き詰めることなど不可能のは分かりますが、にしてもできることをせずしなくて良いことばかりするこの国に、本当に違和感と最上級の軽蔑しかないです。
    障がい者の方などに手厚くする当たり前のことが失礼だとか偽善だとかデメリットばかり挙げて、この国の人間は本当に狂っています。だからって障がい者が生きづらい世の中で本当にバランスが取れている気になっているのか?本当に物事の優先順位がおかしい。
    up65
    down37
    2019/10/15 18:41
  • 阿井卯栄男d1c7e5e16494
    生産活動が出来なくなれば、一体どういう生きがいを持てるのか、私はそれを心配します。サシダさんは交通事故で下半身の自由を失われたようですが、仕事はなさっている。しかし、仕事が出来ないような障害を負ったり、寝たきりになった場合、どういう生きがいが持てるのでしょうか? 私はそのことを思うと、いつもほとんど恐怖に苛まれる思いになります。そして、不意の事故には十分気をつけて日々を過ごして行きたいと思っています。

    up13
    down5
    2019/10/16 00:25
  • d6b7ef648b15
    無慈悲を検索したら、将軍様の無慈悲ばかりが でてきた
    up5
    down1
    2019/10/16 05:45
  • すべてのコメントを読む
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
激突! アサヒvs.キリン<br>「正反対」のビール戦略

2020年に豪州最大のビール会社を買収するアサヒグループHD。国内縮小を見越し「スーパードライ」集中でグローバル化を強化する。一方、キリンHDは化粧品・健康食品のファンケル買収などで多角化を推進。正反対の戦略の成否は? 両社トップに聞く。