台風19号の襲来時、東京都台東区が路上生活者の自主避難所利用を断っていた問題で、服部征夫・台東区長が10月15日、謝罪のコメントを出した。
服部区長は15日に発表したコメントで、「避難所での路上生活者の方に対する対応が不十分であり、避難できなかった方がおられた事につきましては、大変申し訳ありませんでした」と謝罪。
そのうえで、「今回の事例を真摯に受け止め、庁内において検討組織を立ち上げました。関係機関等とも連携し、災害時に全ての方を援助する方策について検討し、対応を図ってまいります」としている。
この問題を巡り、安倍晋三首相は15日の参議院予算委員会で「避難所は全員受け入れることが望ましい」と答弁し、状況を調査する考えを示していた。
コメント全文
この度の台風19号の際に、避難所での路上生活者の方に対する対応が不十分であり、避難できなかった方がおられた事につきましては、大変申し訳ありませんでした。
また、この件につきまして区民の皆様へ大変ご心配をおかけいたしました。
台東区では今回の事例を真摯に受け止め、庁内において検討組織を立ち上げました。関係機関等とも連携し、災害時に全ての方を援助する方策について検討し、対応を図ってまいります。
最後に、この度の台風19号においてお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された多くの皆様に、心からお見舞いを申し上げます。一日も早い復旧をお祈りいたします。
経緯を振り返る
台東区では12日、路上生活者・労働者支援団体が、上野駅付近や上野公園で野宿をしている路上生活者に、支援物資の配布など見回りをしていた。
台風19号は非常に強い台風で、都内でも被害が予想されていたために、支援団体も路上生活者に、区内に設置されていた自主避難所の利用を促していた。
しかし、路上生活者が自主避難所に行ったところ、利用を断られたという。
ボランティアが台東区役所に確認すると、「区内に住所がない」などを理由に、路上生活者の自主避難所利用を断っていたということが判明した。
台東区広報「避難所は区民の施設」
台東区災害対策本部は13日、BuzzFeedの取材に対し、路上生活者の自主避難所利用を断った事実を認め、次のように述べていた。
「自主避難所では入り口で避難所カードに名前や住所をご記入いただいています。そこでいらっしゃった住所不定者の方が『住所がないんです』とおっしゃり、避難所は区民の方への施設ということで、お断りをさせて頂きました」
担当者によると、区内に住所がない路上生活者が避難所を利用できないという判断は、「区の決定」で「災害対策本部の事務局が判断した」という。
「避難場所のすぐ外で台風の夜を過ごした」
上野公園で寝泊まりする男性は13日、BuzzFeed Newsの取材に対し、路上生活者の一人が避難所の利用を断られ、さらに、上野公園内の東京文化会館で風雨をしのいでいると「ここは避難場所の入り口なので移動してください」と、中に招かれるでもなく、移動を要求されたと話していた。
東京文化会館は、交通機関が計画運休をしたために区内に留まらざるを得なくなった外国人観光客や、国内遠方からの訪問者のために、避難・宿泊できる「緊急滞在施設」として解放されていた。男性はこう、語っていた。
「避難所に行こうか話し合ったけど、たぶんダメだろうと一人が言い出した。話し合っているうちに、上野公園から一番近い自主避難所の小学校まで歩いて行った仲間が『ダメだった。断られた』と帰って来た」
「お前らは人間じゃない、と言われてるようだったね。私たちも人間ですよ」
「職業が何か、金を持っているかで判断するものじゃない。まあでもそういう考え方は行政だけじゃなくて、世間全体でも同じですね」
安倍首相「避難所は全員受け入れが望ましい」
10月15日の参議院予算委員会では、国民民主党の森ゆうこ議員(新潟選挙区)の「今回のホームレス受け入れ拒否の問題をどう思うか」という質問に安倍晋三首相が答弁し「避難所は、災害発生時に身体生命を保護するために設置される。すべての避難者を受け入れるのが望ましい」と語っていた。
また、「関係自治体に確認し、適切な対応をしていきたい」とも述べた。
武田良太・防災担当相も答弁に立ち、「昨日の報道によるものと承知している。人命第一。人命を守るために全力を尽くさねばならないと考えている」と発言した。