文政権をめぐる韓国の「分裂」の現在地〜「200万人デモ」の実態

韓国の人々は怒り、心配し、困っている
伊東 順子 プロフィール

それを見て、次は瑞草洞派に気合が入った。前回「盛った」と言われてしまった動員数を現実的に挽回しなくてはいけない。10月5日には前回を上回る規模の集会が瑞草洞で行われ、さらに10日には光化門と、両派のせめぎ合いが続いた。

 

韓国の人は今、とても怒っている

地方からバスに乗ってまで駆けつけるほどの、その人たちはどんな気持ちなのだろう?

まずは、みんな怒っている。それぞれの集会に参加した人が、それぞれの理由で怒っている。わかりやすいのは光化門に集まる、「反チョグク・反文在寅」の人々だ。

彼らの最大の怒りは、チョグク長官一家の一連の不正疑惑である。疑惑の詳細に関しては、日本でも散々報道されているようなので、ここでは説明しない。ただ、日本のワイドショーで使われていた「タマネギ男」という表現は、少なくとも韓国の地上波TVなどで使われていない。

人々はもっと真剣に怒っている。怒りの対象は、そういう疑惑がありながらも彼を長官に任命した文在寅大統領にも及んでいる。朴槿恵大統領の時はあんなに厳しく不正を糾弾したのに、自分の側近となったらそれを認めるのか、それはおかしいではないかということだ。

一方、わかりにくいのが、瑞草洞で集会を開いている人たちの怒りだ。彼らもものすごく怒っているのだが、それは「疑惑のチョググ」に対してではなく、彼の一家を捜査している検察に対してである。現地の新聞の言葉を借りるなら「検察の過剰捜査」、その横暴ぶりが常軌を逸しているというのである。これについて、12日も瑞草洞のデモに参加する予定という40代女性の怒りを紹介してみる。

「だってチョグク長官の奥さんは身体の具合が悪いのに、11時間も家宅捜査をしたんですよ。そして聴聞会の日に合わせて、彼女を起訴するというのも、あきらかな嫌がらせです。検察はチョグク長官をなんとかつぶしたい。そのために、家族に対して過酷な取り調べをしているのです」

「検察から最初からチョグク長官を狙っていたんです。周辺の小さな疑惑をかき集めて、メディアにリークしていく。いつもの検察のやり方です。独裁政権時代から何も変わっていない」