住宅設備機器などを手掛けるLIXILが、大便の形状や大きさを国際指標に基づいて自動分類できる“AIトイレ”のプロトタイプを、家電やIoT機器の見本市「CEATEC 2019」(10月15日~17日、千葉・幕張メッセ)で展示している。実用化のめどは立っていないが、介護施設などでの利用を想定。介護施設のスタッフは判定結果を見て、入居者の体調管理に役立てられるという。
便器の内部にセンサーカメラを搭載。利用者が排便すると瞬時に大便を画像認識し、形状を7段階、大きさを3段階でそれぞれ自動判定する。AIが判定したデータは、ネットワークを経由して管理者のPCに集約する。
判定基準は国際指標を参考にしており、医師と協力しながら開発を進めている。便が小さく細かいほど便秘、大きく形がないほど下痢の可能性が高いため、スタッフは結果を見ただけで便秘や下痢などの症状がないかが分かるという。
従来の介護施設における排便管理では、入居者が排便の内容を自己申告し、スタッフが手書きで紙に記録していた。しかし、認知症のある入居者が排便したこと自体を忘れてしまったり、入居者が自身の排せつ内容を伝えることに抵抗感を示したりして、正しく排便状況を管理するのが難しい状態だったという。
高齢者は便秘になりがちで、放っておくと腸閉塞(へいそく)になる恐れもあるため、LIXILは、これらの問題を解決するために便の自動判定システムを開発した。
研究開発に携わったLIXILの永田政昭さんによると、同システムの開発は2014年ごろに始まった。最も大変だったのは「便の画像を集めること」だったという。
AIに学習させる便の画像を集めるため、同社は社内に4台のAIトイレを設置。有志の社員に使ってもらい、約半年かけて3000枚の教師データを集めることに成功した。
「データは暗号化して、誰がトイレを使用したのか分からないようにしました。ただ、比較的健康な人が多いので、極度な便秘や下痢の症状が出ている画像はあまり集まっていません」と永田さん。高齢者の健康状態を正しく把握するためには、便秘や下痢の症状が出ている便の画像をさらに集める必要があるという。
「現段階で、画像認識の精度は80%くらいになっています。目視でも5回に1回間違えると考えれば、なかなか良い精度になってきているのではないでしょうか」(永田さん)
同社は実用化に向け、今後は介護施設での実証実験を進めていくという。
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