(第1章は文庫本6ページ分。よろしくお願いします)
F1シンガポールGPに行ってきました!
人生2度目のF1現地観戦。
4月に書いたF1上海GPのブログで予想以上の反響を頂き、モータースポーツファンや関係者、ホンダや他のF1チーム関係者の方々にも読んで頂いたようで、多くのご感想、メッセージを頂きました。仕事柄、特定の企業のことは本来書けないのですが、まあ、個人の趣味なので表に出さなくても良いかと思っていましたが、現地で観戦した興奮、何よりも世界で闘っている日本人のチャレンジ精神を多くの人に伝えたくて、伝えなければならないと思って、無我夢中でブログを書きました。そしてなんと、ブログを読んで下さったホンダの方に「是非PITにも」とご招待頂きました。
7月下旬、仕事の予定を見てみると9月下旬に数日の空きがあった。丁度シンガポールGPが開催されている時期だ!アジアなので近い、さらに市街地コースでナイトレースという未知の世界、想像しただけでワクワクが止まらない。10月からは次のドラマの撮影に入り年内は休みがないので10月の鈴鹿グランプリも、他の開催地にも行けない、そう、この9月22日のシンガポールGPが今年のラストチャンスなのだ。
この数年間苦戦していたホンダ。今シーズンは第8戦まで全てメルセデスが優勝していた。しかしついに、6月30日の第9戦オーストリアGPでレッドブルホンダが優勝!続いて7月のドイツGPでも優勝という快挙を成し遂げ、日本中のファンを湧かせた。レッドブル本社があるオーストリアでの優勝、そして王者メルセデスのホームゲームであるドイツでの優勝は大きな成果だった。
オーストリアGPの優勝台の一番高いところで、ドライバーのフェルスタッペンが誇らしげに胸のHondaマークを指さす姿には感極まった。
そしてホンダの田辺テクニカルディレクターが表彰台でのシャンパンファイトに呼ばれた。あまり感情を表に出さない田辺TDが、溢れる涙をシャンパンで隠していた、その姿が印象的だった。ファンも悔しい思いをしてきたが、反論せずに風を受けてきたスタッフにとっては大きな勝利だった。
レッドブルホンダ優勝がテレビの速報で流れたり、Yahooニュースで大きく取り上げられたり、今までのコツコツと積み上げた努力の結果が現れたことで、更に面白くなってきた。そのドラマをまた生で見たい、応援したい。
しかーし、やはり1人で海外に自分の趣味のために行くのはちょっと心が痛い・・、そうだ、夏休みは僕も妻もずっと撮影で家族で何処にも行けないので、これを家族旅行にするのはどうだろう。うん、それは良いアイディアだ。
と言うことで妻と子供に「シンガポールとか、行かない?」と、いつもより語尾を明るく上げて提案、それぞれの9月下旬の予定を聞く。
子供は少し大学の授業を休まなければならないけど、それは必修授業ではないので単位は大丈夫とのこと。それに上海でF1を見てから、いろいろと詳しくなってさらに興味を増したようだ。
妻は、9月中旬に今の映画の撮影が終わり、その翌日に四国に行って次の映画の撮影をし、20日に東京に戻ってくるとのこと。
シンガポールに行くとしたら20日の夜中に家を出て飛行機に乗らなければならない。つまり20日のお昼とか夕方に四国から羽田に戻り、家に一度帰ってまた夜の11時半には家を出て羽田に向かわなくてはならない。ずっと映画の撮影で神経と体力を極限まで使う、移動の飛行機も体力的にはつらい。無理をしてもそれは良くない。さらに下旬から次の映画の撮影に入るが、20日から数日は休みらしい。
ひとまず、この旅の目的がF1だけではないように演出しなければ。あくまでも家族旅行でシンガポールに行くのであって、たまたま「F1も開催されているから、せっかくなら見ようか~」という作戦だ。つまり、F1以外に魅力的な旅行にしなければならない、そこであらかじめ調べておいた。
まずは、一生に一度は泊まりたい名門ホテルがシンガポールにある、サーキットにも歩いて行ける。ここの部屋はネットで見たけど空いていた。そして、最近の夫婦の共通の趣味であるガストロノミー。世界のベストレストラン、今年のアジアのランキング1位のお店のレース翌日のランチの1席が空いていた。数ヶ月先まで予約が完璧なまでに埋まっているが、なぜかここが空いていた、これはもう「来なさい」ということではないだろうか。ここ数年ずっとアジア1位をキープしていたバンコクのGAGANを抑えて2019年1位に輝いたODETTE、ものすごく行ってみたい。同じくシンガポールのベストレストラン上位常連のアンドレにも行ってみたかったけれど、2018年にミシュランの星を返上して閉店し、シェフのアンドレチャンは自分の国・台湾に帰ってしまった。台湾で2014年にアンドレがオープンさせたガストロノミーレストラン・RAW以外にも自分のお店を出すのだろうか、今後が楽しみだ。
そして、9月下旬でもシンガポールは暑いのでプールや海で泳げる、この夏は泳いでいない、妻も子供も泳ぐのが大好きだ。名門ホテル、ガストロノミー、プール、この3つでカンペキではないだろうか、さらにF1だ。
家族に今回の旅の魅力をプレゼンテーションをするぞ、と思った矢先に妻が言った。
「行こう行こう!今年の夏は家族旅行してないし、子供も一緒に旅行できるのは学生のうちだけだし、ちょっとハードだけど、皆んなの休みが合うのはここしか無いし」
おー、良かった。体力的にはきついはずなので、なるべく無理なく計画しよう。
9月下旬の休みを事務所に再確認し、ホンダにPITパス申請の僕の写真とパスポートデータなどを送り手続き開始。PITパスの発行はレースギリギリになるので、滞在ホテルのフロントに届けて頂けるとのこと、早速ホテルと飛行機を予約せねば。
まずは飛行機の予約。マイルがたまっているので航空会社の無料特典航空券を探したけれど、丁度良い便に空きが無い。まあ、アジア便はそんなに高くないので航空会社のページから購入、次はホテルだ。
世界中から多くの人が集まるので、予約が厳しい。でも7月下旬の時点ではまだホテルは空きがあった、8月に入ると本格的に厳しそうだ。折角なので一度泊まってみたかったホテルを予約。通常が100レベルだとすると年に一度のお祭りのF1の時期なので150くらいに値段は上がっていたけれど仕方ない。
クレジットカード会社の旅行デスクを通じて予約するとレイトチェックアウトなどの特典もあるので、クレジットカード会社に電話して無事に予約完了。心配性なので予約確認書をメールで送ってもらう。名前や日付、部屋の種類などいろいろ正しいか確認して一安心。
ガストロノミーレストランODETTEの予約も済み、これで旅の準備が完了。「本当にまたF1を観戦できるんだー」という実感がジワジワ湧いてくる。さらに、ピットガレージに行ける、すごい。(F1の魅力を広く伝えるという意味で上海のブログが貢献したと言うことで、ピットにご招待頂きました、これも読んで下さった方みなさんのおかげです。ありがとうございます!)
仕事をしていても何をしていても「シンガポールGPに行けるんだあ」と思うとパワーが湧く気がします、スペック10くらいのパワーが湧く気がします、DRS全開です。そう、がんばった先のご褒美がクッキリとみえているので、何でも乗り越えられそうな気がします。そういった自分へのご褒美はたまには大切ですね。最大級の自分接待。
何よりも、自分の心がふるえる体験、感動する経験は大切だと前回の上海GPで実感しました。サーキットであのエンジン音を聞く、耳からだけではなく全身で感じる、全力で闘っているドライバーやスタッフの闘志、姿勢を直接感じる、そういう経験はその場でしか味わえない。ドラマや映画や舞台、スポーツでも芸術でも音楽でも、それに接し、心を振るわせる、感動する、そうすると、自分の魂が洗われた気持ちになったり、なにかか浄化したり、新しい自分になって、次の一歩を踏み出す勇気が出る気がします。
そして暑い夏も過ぎ、9月下旬。
シンガポールGPの決勝は9月22日の日曜日、僕達は現地に土曜の朝8時に到着する予定。生まれて初めて行く国なので観光して土曜夜のF1の予選を鑑賞、そして日曜夜の決勝レースへ。金曜から土曜に日付が変わって直ぐの2:30出発の真夜中のフライト。金曜の23時半に家を出て空港に向かえばいい。さあ、準備は万端だ。
しかし・・・
金曜の午後、旅行前に夏の疲れをリフレッシュさせるために指圧マッサージへ。車を駐車場に停めると1通のメールが届いた。それは、ホンダのSさんからだった。
「ホテルにPITパスを届けに行きましたが、宿泊の予約が入っていないようです。フロントに確認したところ、7月30日にキャンセルになっているとのことです」
え・・・出発まであと8時間・・・・・・
つづく
F1シンガポール日記2019
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