2019年9月下旬、シンガポール・チャンギ空港。17時、僕たちが乗った羽田行きの飛行機が飛び立った。東京に着くのは夜中の25時、次の朝から日常が始まる。
窓外を眺めた。赤道直下の国の太陽がまだギラギラと輝いている。シートに深く体をゆだね、シンガポールでの数日を思い返した。
まずは、出発直前にばたばたしたホテルの件。無事にチェックインできました。
本当に素晴らしいホテルでした!ホスピタリティ、歴史有る建物、部屋、細部に至るまで全てが素晴らしく、心に残る滞在でした。今まで泊まった各国のホテルの中でベスト3には確実に入ります、また泊まってみたい。
シンガポールでは観光したり、プールに入ったり、ご飯を食べたり。マーライオンも見に行きました。マリーナベイサンズを中心としたベイエリアの景色も素晴らしかった。GRABというタクシーアプリで色々回りました。行き先もアプリで指定するので運転手さんに説明しなくて良いし、アプリ内でクレジットカード支払いなので目的地に着いたら車を降りるだけ、本当に便利です。そして海外のタクシーは安いので、特に3人だと地下鉄よりも安かったり。
ベストレストランのODETTEも素晴らしかった。繊細で創作的なお料理の数々、一皿ごとに目と舌で満喫。
シンガポールスリング(カクテル)発祥のバーに行ったり。街の食堂で名物のチキンライスを食べたり、チャイナタウンの食堂がいっぱい入っている雑居ビルで小籠包を食べたり。シンガポールはマレー系、中華系、インド系、イスラム系など様々な文化が折りあって、とても不思議な魅力のある街でした。パスポートのランキングでもビザなしで行ける国の数は日本と並び世界一位、安全で季候が良くて、都会的だけれど車で少し行けばアジア特有の力強い雨林も広がっていて、本当に魅力的な街でした。
そして、F1シンガポールGP。
初めて入るPIT、戦いの前の最終準備が行われていました。神聖な場所。F1マシンの心臓部、パワーユニット。それを制御する多くの日本人スタッフ。
炎のような情熱の山本MD、静かなる情熱の田辺TDを始め、広報の方、エンジニアの方、多くの日本人スタッフが活躍していました。短い時間でしたがいろいろ貴重なお話を伺うことが出来ました。
ドライバーがどうしても注目を集めますが、こういう分野で世界を相手に戦っている誇るべき日本人がいるということをもっと世の中に紹介したいと思いました。英語は身に付けなければなりませんし、海外を拠点にしなければならないので体力も必要ですが、職業として興味を持つ子供や若者も多いかと思います。(NHKのドキュメンタリーとかで紹介して欲しいです)
そして、グリッド。世界中のマスコミや大勢のスタッフ、そして目の前にある、戦いを前にしたマシンとドライバーがスターティンググリッドに並ぶ。まるで今から闘う猛獣がいるサファリパークの中に入ったかのような緊張感。その場の空気を生で感じることが出来たのは本当に貴重な経験でした。レッドブルのクリスチャンホーナー氏やヘルムートマルコ氏ともお話しできて感激です。いつも日本に向けて情報を発信してくれるF1ジャーナリストの方々も。あらためて招待してくださった関係者の方々に感謝です。
↑グリッド動画:大きな音が出ます。
そして、2019年シンガポールGP。素晴らしい戦いでした。
暗闇の中で光り輝く市街地サーキット、エンジン音が天を裂き、地深く響き渡る、その中心にいる獣のようなF1マシン。その姿を見るだけで涙が出そうになる、美しいモンスター。日常でみんなが生活するために使う道路を、その猛獣たちが叫びながら駆け抜けていく。日常と非日常が交差する光景。世界最速を決める闘い、アジアの熱い夜。
↑スタート動画:大きい音が出ます。
レースでは、4番手スタートのレッドブルホンダのフェルスタッペン選手、追い越しが難しいコースで見事に順位を上げ、3位入賞でポイント獲得。10月の鈴鹿に向けて、さらなる飛躍が楽しみです。
世界中から集まったF1ファン。みんな幸せそうな顔をしていました。そして僕も、幸せな時間でした。
↑ゴール動画:大きな音が出ます。
F1サーカスという例えがありますが、ナイトレース、まさに一夜の夢。猛獣と猛獣使いたちが繰り広げる、世界最高峰の競争、世界中のファンが集まる狂騒。
翌朝、街は静かだった、昨日までのお祭りが嘘のようだ。
解放された市街地コースを歩いてみると、かすかなオイルのにおいが残っていた。
あれは夢ではなかった。目を閉じると、叫ぶようなエギゾーストノートが聞こえてきそうだ。
レース翌日、チームは次の開催地ロシアに向かった。
疾走する男たち、その戦いは終わらない。
僕は深呼吸して、もう少し夢の名残を探し歩いた。
F1シンガポール日記・おわり