いまや「悪の枢軸」のような扱いですが…本当にそれでいいのでしょうか(写真:AFP/アフロ)

Google、Apple、FacebookAmazon――GAFA。4社の強さの秘密を明らかにし、その影響力の恐ろしさを説く書籍『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』が話題を集めている。各国政府がGAFAに対する規制を強化するなど、2019年もまだまだ目を離せない存在だ。
一方で、現在のGAFAへの批判について「行きすぎだ」という意見もある。
「GAFAのおかげで、僕は自由で幸せな働き方ができています。GAFAには足を向けて寝られません」
そう語るのが、東京大学法学部を卒業、東証一部上場企業に就職しながら3年で退職、現在は年収50万円の「芸人」として暮らす「しんめいP」氏だ。しんめいP氏の「GAFA擁護論」を掲載する。

GAFA批判に物申す!

最近、GAFA批判すごくないですか?


『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』(画像をクリックすると特設サイトにジャンプします)

ガーファは危険!

ガーファは悪い!

お前のかーちゃんガーファ!

GAFAのみなさま、いつのまにこんな悪者なっちゃってるんだっけ?

どうやらGAFA批判の大本は、『the four GAFA』という本。僕も読んでみたんですけど、もうめっちゃくちゃに言っていてスゴい!

・グーグルは「宗教」

・アマゾンは「小売りの悪魔」

・フェイスブックは「気持ち悪い」

・アップルは「セックスに近づくためのぜいたく品」

→4つまとめて、GAFAは「金儲け」が目的の「ペテン師」である!

ひえ~! なんて言いようだ! 「気持ち悪い」とか、もはや言いがかり! ビジネス書というより、毒舌エンターテインメント本という感じです(笑)。

しかし……GAFA”様”に、日頃より大変本当にお世話になっている僕は、黙って見過ごすわけにはいきません!

ということで、GAFA大好き芸人の立場から見たGAFAをお話させていただきます。

GAFAのおかげでお金がなくても生きていける

3年前、東京のサラリーマン生活から「脱落」した僕は、鹿児島県の島に移住。生活環境ががらっと変わって、サバイバル生活が始まりました。


家の床はシロアリにやられちまったんだ!(筆者撮影)

収入は激減し、身寄りもいない「島」だったんですけど……驚くほど、生活の不便を感じなかったんです。

仕事道具はアップルのiPhoneとMacBookだけ。資料作成はグーグルのソフトが無料で使えるし、アマゾンは、東京から遠く離れた島であっても、なんでも届けてくれる。感動!

意外にも欠かせなかったのが、フェイスブック。

東京でサラリーマンをやっていたときは、正直「もうだれも使ってないでしょ」と思ってました。でも実際は、地方やフリーランスの業界では名刺代わりにフェイスブック。完全に「ビジネスのインフラ」になってました。

ここ3年、僕の仕事の9割はフェイスブックのメッセージで完結しています。SNSがあると友達と離れたところにいてもつながっていられるので、寂しさも感じない。

みんな「田舎は仕事がない」って言うけれど、東京の会社と遠隔でお仕事できる。しかも鹿児島だと毎日温泉に入れる! 貧乏だけど、毎日旅行中?みたいな!

こんな自由な生活環境、仕事のスタイルを可能にしてくれた「GAFA親分」には、足を向けて寝られません!

GAFA批判の急先鋒、『the four GAFA』著者のスコット・ギャロウェイさんは、

GAFAのミッションは何なのか。がんの撲滅か。貧困の根絶か。宇宙探検か。どれも違う。彼らの目指すもの、それはつまるところ金儲けなのだ。

と、GAFAの拝金主義を批判しています。

さらに、

いまは億万長者(ビリオネア)になるのはかつてないほど容易だが、百万長者(ミリオネア)になるのはかつてないほど難しい時代だ。

という独特の言いまわしで、貧富の格差が広がることも批判しています。

でも、よく考えると、「ミリオネア」も「ビリオネア」も、僕たち世の中の「残りの99%」には縁がないお話です。

むしろ、ギャロウェイさんって、ウォール街出身で、現役のビジネススクールの教授なんですよね。泣く子も黙る資本主義ワールドの勝者です。少なくとも、ギャロウェイさんが「ミリオネア」でいらっしゃることは間違いないでしょう。ファイナルアンサー!

さて、この「ミリオネア」による「ビリオネア」批判。ちょっとヘンな感じがする(お金持ちが悪いとは1ミリも思ってないけど)。

さらに「残り99%」側が「そうだ!そうだ!」ってミリオネアに賛同している状況は、もっとヘンな感じがする

GAFA批判者が見落としている視点

たしかにGAFAは巨大化してるし、「支配者」と言えるかもしれない。

でも、GAFAと、ウォール街や20世紀的大企業などGAFA以前の「支配者」とは明確な違いがあると思うんです。

それはGAFAが「個人に武器を配る」ことによって成功してきたこと。

GAFAはスマートフォンやSNSを作ってくれました。

そのおかげで、個人が大組織に入っていなくても、経済ゲームを戦えるようになってきました。まだまだ力は弱いけど、自立できる人が増えているし、僕もそのうちのひとりです。

GAFAは雇用を「破壊」してきたと言われています。テクノロジーを使って、人を雇用せず富を生み出しているからでしょう。

でも、僕も含めて、GAFAのインフラがあるから成立している膨大な数のフリーランスの存在が見落とされていないでしょうか?

アメリカでは労働人口の中のフリーランスの割合がすでに35%になっていて、あと数年で50%を超えると言われています。もはやフリーランスが多数派に。日本でもフリーランスの割合がどんどん増えていっています。

GAFAは雇用の「破壊者」かもしれないけど、同時に、膨大な仕事の「創造者」でもありますよね!

さらに、GAFAが、窮屈な労働文化に大きな風穴をあけてくれたことには、涙が出るほど感謝しています! 人間がスーツや長時間労働、満員電車から解放されつつあるのは、GAFAの成功なしには語れないはず。

僕も含めて、「その他99%」にとっては、GAFAという雲の上からの「支配」よりも、自分が経済的に依存している組織からの「支配」のほうが、圧倒的にリアリティがあると思うんです。

GAFAはむしろ、個人に力を与えることによって、組織の必要以上の「支配」から僕たちを解放してくれる存在。ゲリラ戦の親分という感覚なんですよね。

もちろんデータ流出など重大な問題は出てきたし、税金逃れも節税のレベルをはるかに超えているので、ルールに従って、処分もあってしかるべきです。でも、僕個人の心情としては「まだ親分についていきます!」っていうのが正直なところなんです。

GAFA時代をどう生き抜くか?

世はまさに大プラットフォーム時代!

仕事・恋人・動画・ブログ・空き家……あらゆるプラットフォームが乱立している昨今。

「GAFAにプラットフォームをとられた!」

「われわれもプラットフォームをつくらねば……」

プラットフォームプラットフォームぷらっとふぉーむ……。

あれ、プラットフォームってなんだっけ……。

プラットフォームって「舞台」のこと。役者が少ないのに、舞台の数だけどんどん増えていっているような。

よく考えたら、GAFAも、国も、みんな裏方です。巨大なパワーをもった組織が、僕たち個人のために、せっせと舞台を整えてくれている状態です。

あるときそれにふと気づいて、「裏方ではなく主役を目指せばいいじゃん!」って思ったんですよね!

世界の天才たちが自分のために、最高の舞台を用意してくれてるってすごいチャンスじゃないですか!? ギャロウェイさん風に言うなら、

「今は主役になるのはかつてないほど容易だが、裏方になるのはかつてないほど難しい時代だ」

って感じです!

自ら発信して、支え合う仲間を作り、組織ではなく自分の名前で何かを始めること。ハードルはどんどん低くなっていく。

GAFA時代、プラットフォーム時代を生きていくのに必要なのは「主役になる覚悟」だ!と思って、僕は仕事を辞めて芸人になりました!

半年間徹底的に準備し、R-1ぐらんぷり2019に出場!

結果……初戦敗退だったけどね! 30歳既婚。借金だけが残ったよ!

あれ? 「自分の名前で生きる」の失敗例になっちゃった? 芸人になるの、違ったかな!? まぁいいか! オチということで!

ありがとうございました~!!