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(さだ)私の住んでる荒木荘で炊事 洗濯 掃除をするそういう下働きの仕事をな。
(喜美子)ここで女中やらせてもらいます。川原喜美子と申します。
よろしくお願いします。(さだ)賄い付きよ?
うわ~い!
うわ~…。(ふすまにぶつかる音)
(ちや子)うう…。 何? 何!?
(ちや子)何!? はあ はあ…。
♪~
♪「涙が降れば きっと消えてしまう」
♪「揺らぐ残り火 どうかここにいて」
♪「私を創る 出会いもサヨナラも」
♪~
♪「日々 恋をして 胸を焦がしたい」
♪「いたずらな空にも悔やんでいられない」
♪「ほら 笑うのよ赤い太陽のように」
♪「いつの日も雨に負けるもんか」
♪「今日の日も涙に負けるもんか」
「何や この子新しく来る言うてた子か?若いなあ。 どうせ続かんやろ」。
「鼻の下にある あれ 鼻くそちゃう?ハエや!」。
「どうでもええわ。 あと10分寝よ」。
あ…。
♪~
ちょっと ちょっと。
ここ座って。 お話があるの。
(さだ)まず 私から話すわ。
あのな ここでの仕事やけど。はい。
ここは 賄い付きで お部屋を貸してるの。はい。
朝ごはんから始まって生活のこまごましたこと洗濯も掃除もしますいうてお家賃高めに頂い
てるの。
はい。今は 私を含めて4人いてる。
分かる?大久保さんの後を引き継いであなた1人で大人4人のお世話をするいうこと。
はい。無理や。
(さだ)お父さんが「できる」言うからお願いすることにしたんやけど…。
そんなん 親の欲目でっせ。こんな子にできるわけあらへん。
ごめんなあ。 もうちょっと年いった大人の人がええ言うの。
ちょっと待って下さい。 うち できます。
信楽で ごはん炊いたり 大根たいたり食事を毎日作ってたんです。
掃除も洗濯もやってました。
そら 何にもできへんとは思てへんのやで?
ほな 何で? 何でですか!?う~ん…。
うち 一生懸命 働きます!
ここに お皿が3枚ある。
この1枚は 家族のために磨きます。
この1枚は 仕事やから磨きます。
最後の1枚は 家族や仕事や関係なしに一生懸命 心込めて磨きます。
さあどのお皿がきれいになるでしょうか?
このお皿です。
皆 おんなじや。えっ?
お皿なんか磨いたら きれいになるわ。
ええ…?
最初に言うたけど 大久保さんは若い時から荒木家で女中さんやってたの。
そのあと結婚して4人のお子さん育て上げて厳しいおしゅうとめさんも看取って家の中のこと
ず~っとやってきた人なの。
一生懸命やったからて仕事やから割り切ってやったからてどんな気持ちでやったかて人から
見たら大して変わらん。
何でか?
誰にでもできる仕事やと思われてまっさかいな。
さだちゃんみたいに 乳あて…。(さだ)ブラジャー。
それの それの… あれの ほら…。(さだ)デザイン。
デザインして 皆から「すてきや すてきや」って言われてる仕事とはちゃいまっせ。
信楽のお家の手伝いとも違います。
褒めてくれるお母はんは いてへん。
ここは 家族でも親戚でもない赤の他人の寄り集まりや。
仕事も暮らしぶりも いろいろや。
あんたみたいな若い子には無理や。そんなこと…。
早速 あんな失態してしもうたやろ。
あんな失態…?
隣のふすま 倒したんやて?あそこの部屋に住んでるちや子さんいう人は女やけど 新聞記
者よ。不規則な生活で 空いた時間に帰ってきて体を休めてはるの。
(大久保)断言します。あんたには無理や。 信楽帰り。
♪~
あの! ふすまを倒してほんまに すいませんでした!
ああ…。ほんまに… ほんまに すいませんでした!
うち…。ああ 自己紹介やったら明日にして。
あ… それが…。何? 新しい女中さんちゃうの?
それが うちには務まらへんて明日帰れ言われまして…。
ほな 元気で。元気なわけないやん。
すみません。 行ってらっしゃいませ!
(戸を閉めようとする音)
うん?
あ…。
♪~
最後に ごはんをごちそうになりました。
…が 食欲なんてありません。
はい。
♪~
ごはんはおいしく… しかし 悲しく…。
♪~
ハハハッ。
最後には おいしくが勝ちぱくぱく頂きました。
大久保さんから おわびの手紙とお金の入った封筒を渡されました。
荷造りした時に入れた覚えのない物が入っていました。
臭っ…! くっさ… 何!?
(マツ)「喜美子へ。余計なこと言うな 言われてるので要点だけ書きます。同封した葉書に
はこっちの住所と宛名が書いてある。そのまま送れば お母ちゃんに届く。魔法の葉書や。
用意したんは お母ちゃんちゃうで。陽子さんたちです。あんたのために縫うたブラウスとスカ
ートと一緒に届けてくれました」。
回想 (マツ)ありがとう。
(マツ)「『信楽の人は みんな優しい』ってお母ちゃんは言いました。そしたら 陽子さんが言
いました。『頑張ってんの見てきたからや。一生懸命お手伝いしてた喜美ちゃんをみんな よ
う見てきたからや』」。
回想 (陽子)おはよう。あっ おはようございます。
寒いのう。うん 寒いのう。
ありがとう。気張りや~。
(泣き声)おんぶしたる。 おいで。
はい よっこいしょ…。
(マツ)「喜美子 どんなことでも一生懸命やってたら誰かが見ててくれてるんやな」。
(マツ)「もひとつ。 お父ちゃんが自分の手拭い入れとけ言いました。わざと洗うてないの。
臭うて腹立つさかい 負けるもんかと思うはずやって。ほんまやろか?そしたら それも魔法
の手拭いや。お父ちゃんの 働いた汗のにおいです」。
(マツ)「ほな体に気ぃ付けて頑張るんよ。お母ちゃんより」。
♪~
くっさ!
ああ… 臭い。
臭い~!