日本代表がスコットランド代表を28―21と破ったW杯1次リーグ最終戦。横浜に6万7666人を集めて行われた試合を見て、そう感じた。
日本は後半3分までに28―7と大きくリードして、史上初めての準々決勝進出に大きく近づいた。しかし相手は、世界のラグビーの歴史そのものを築いてきた伝統チームだ。黙ったままではなかった。
スコットランドは、その後の10分強で2トライ、2ゴール。あっという間に7点差に詰めた。そして、そこから試合終了までの24分間がけんかのようだった。
紳士のはずのタータンチェックの男たちが目をつり上げ、なりふり構わず、日本陣内に押し寄せた。接点にちゅうちょなく頭を突っ込み、密集で日本選手の上体を締め上げた。
かつて日本ラグビーを背負って戦った名選手が、国際試合でのメンタルについて、こう話すのを聞いたことがある。
「日本の選手たちは、死んでもいいという気持ちで相手に立ち向かう。相手の外国チームの選手たちは、殺してやるぐらいの気迫で戦う。そんな違いを感じていました」
しかし、桜のジャージーの男たちは、殺気立つ相手に同じ殺気で挑んだ。リーチ・マイケル主将のタックルには、死んでもいいとか、そんな空気はみじんもなかった。思い切り前に出て足首を刈る姿は、「襲いかかる」という表現がしっくりきた。
SOの田村優や、この日2トライを奪ったWTBの福岡堅樹も同様だった。相手の2番、フレイザー・ブラウンがナンバー8の姫野和樹にはじき飛ばされ、「いまアイツはわざと肘を前に出したよ。反則だ!」と顔をゆがめながらレフェリーにアピールした。先生に告げ口しているガキ大将のようだった。
初めての8強進出という結果で歴史を変えた男たち自身の内面は、2015年大会の南アフリカ戦勝利などを経験し、とうの昔に負の歴史とおさらばしている。だから大仕事を成し遂げられた。
相手の虚を突いてすねを蹴ったわけでなく、取っ組み合いで勝ったことが誇らしかった。(ラグビーマガジン編集長)