警察ロボ、運用テスト中に「助けてボタン」を押した市民を邪魔者扱い

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  • author Victoria Song - Gizmodo US
  • [原文]
  • 岡本玄介
警察ロボ、運用テスト中に「助けてボタン」を押した市民を邪魔者扱い
Image: Knightscope

ちゃんと使えるようになってからテストすれば良いのに。

もし何か緊急事態が突発して、そのときちょうど警察ロボットがその辺をパトロールしているのを見たら? 常識を持った人であれば、搭載された緊急警報ボタンを押したら助けが来るだろうと思いますよね。

報告では、カリフォルニア州の女性がそんな場面に遭遇し、そのようにボタンを押したのだそうです。ですがロボットは、彼女に「そこをどいて、今までしていたことを続けなさい」と言い放ったのだそうです。

ケンカを目撃した女性が緊急ボタンを押す

NBC NEWSによりますと、ハンティントン・パークにあるソルトレイク公園でケンカが始まったとき、その場にいたコーゴ・ゲバラさんが警察ロボに気付いたのだそうです。ですが何度も緊急警報ボタンを押したにも関わらず、ロボットはゲバラさんに対して単に「横に退いてそこの道を行きなさい」そして人々に「公園をキレイにしてください」と指示しただけだったのでした。

結局のところ、誰かが昔ながらの方法で911(日本の110番)に電話せねばならず、15分後にはケンカしていた女性が頭から流血しながら担架に乗せられたのでした。

あのお粗末ロボットでした

行動に首をかしげてしまう、このロボットは「HP RoboCop」。弾丸のような、新幹線の鼻みたいな形をしたセキュリティー・ロボットで、そのお腹には「警察」の文字が書かれています。

運営しているのはKnightscopeという会社なのですが…これまでにも路上で布を被されたり蹴り倒されたり、BBQソースをぶっかけられたり、散歩されていた犬の興奮を抑えられず、飼い主からのクレームで無許可運行に罰金刑が課せらたり、はたまた幼児をひいたり、噴水に自ら突っ込んで溺死するなど、お粗末な事件悪名高いロボコップとなっている、例のアレなのです。

試験運転中だった

通常、Knightscopeのロボットはショッピング・モールを警備するような任務に限られています。ですが今回の例では、「HP RoboCops」はハンティントン・パーク警察署による試験プログラムのひとつとして稼働していたため、「警察」の文字が書かれていたのでした。

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Image: Knightscope

笑っちゃうくらいポンコツすぎる

しかしなぜ、このロボコップはこうも役立たずなのでしょう? 試験中だったからなのか、そもそもこの緊急ボタンは警察署には繋がっておらず、どうやらKnightscopeを呼び出すようになっていたのだとか。また、24時間365日の映像を録画することはできるものの、警察は映像を見られない仕様になっていたんですって。加えてセメントで舗装された道しか通行できないので、この公園の北端より先は監視できなかったりします。

つまるところ、「HP RoboCop」は限定的な地域しかパトロールできず、助けも呼べず、撮影した映像を地元警察がすぐ見ることもできないのです。

では何が良いの?

この役立たずロボは年間のリース料が6万~7万ドル(約643万~750万円)と、もしケンカの仲裁をしてくれるであろう人間の警察を、この公園で雇った場合と同額となっています。近隣の住民はNBC NEWSに対し、ロボットの存在は彼らを確かに安心させた反面、「実際のダメっぷりを考えると、Knightscopeロボットは高価なプラシーボ効果に過ぎないことは明らかだ」と語ったそうです。

もちろん、おそらく多くのアメリカ人は、近所をパトロールしている人間の警官と同じくらい良いと思うかもしれませんし、人間の警官と違って誰も撃たないだろうから、公共の安全のために使うことを考えとそんなにイカれたアイディアではない、と思うかもしれません。

今のロボット工学はまだ初期の技術

ボストン・ダイナミクスのロボットたちは、間違いなく一歩進んだエンジニアリングを持ち合わせていますが、それ以外のロボットは一般的にまだ初期の技術です。ロボットができることのコストと実際の能力は、ロボットに熱狂的な人たちが言うほど合致していないのです。

コンパニオン・ロボットを例にとってみましょう。昨年、注目を集めた多くのソーシャル・ロボットは市場から姿を消してしまいました。その可愛さにも関わらず、ほとんどどれもが機能的に音声アシスタントほど優れているわけではなく、天文学的に高い値段でし。その結果、ロボたちは広く受け入れられる道が見つからず、開発企業は資金不足に陥ったのでした。

高校での銃乱射に備える?

昨年、Knightscopeがマージョリー・ストーンマン・ダグラス高校銃乱射事件を受けてコンテストを実施すると発表したことを考えると、HP RoboCopの失敗はその一例にすぎません。それは、優勝校に警備ロボ「K5」を送り、セキュリティー向上に役立てるというものでした。学校内の銃乱射でどう役立つかも不明ですが、それ以前に高校生たちからありとあらゆるイタズラを受けるでしょうね。

Source: NBC NEWS, CITY OF HUNTINGTON PARK CITY COUNCIL