ジェフ・ベゾス(2019年10月2日撮影) Photo by Getty Images

ジェフ・ベゾス肝いり! Amazonが「謎の通信規格」をつくる理由

Alexaの陰で進行する秘密実験とは

「Amazon=通販」の間違い

Amazonは多くの人々にとって、いまだ「インターネット通販の会社」という印象があるかもしれない。

しかし、同社は、創業以来の25年間で(そう、もうそんなに長い歴史をもつ会社なのだ)、大きく姿を変えてきた。オンライン書店から始まって、広汎な商品を扱う通販会社になり、通販と「クラウドインフラ」の会社への変貌を経て、現在は動画配信や電子書籍などのプラットフォーマーにもなっている。

そしていま、大きな柱になりつつあるのが「ハードウエア事業」だ。

 

2007年に電子書籍端末「Kindle」の開発とともに本格的なスタートを切った同社のハードウエア事業は、10年以上が経過した現在、大きな収益源の1つとなっている。別の言い方をすれば、Amazonはすでに、「大手家電メーカー」の一角を占めているのだ。

そんなAmazonは、9月末に米国・シアトルの本社にて新製品発表会をおこなっている。現地で取材した「Amazonとハードウエア事業」の現状と、そこから見えてくる未来を展望しよう。

The Spheres発表会がおこなわれた、米シアトルのAmazon本社隣にある施設「The Spheres」
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ジェフ・ベゾスAmazonのジェフ・ベゾスCEO
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「Alexa」と「Echo」が生み出した市場

Amazonのハードウエア事業の主軸は現在、「Echo」とよばれるスマートスピーカー群が担っている。

スマートスピーカーといえば、音声で命令するとそれに応えて働く「音声アシスタント」を使った機器である。いわゆるAIを活用したデバイスだが、2015年にアメリカでAmazonが、音声アシスタント「Alexa」を組み込んだ初代「Echo」を発売したところから始まったビジネスだ。Amazonは、このジャンルの始祖といえる存在なのである。

その後、日本を含め、全世界にスマートスピーカーが広がった。

アメリカの市場調査会社Canalysの予測では、2019年末までに年間2億台が出荷される。そのうち4分の1は中国市場向けで、シャオミやアリババ、バイドゥといった中国企業がマーケットを押さえているものの、それ以外については、AmazonとGoogleがシェアを分け合っている状況にある。

一方で、シンプルなスマートスピーカーは、そろそろ市場が減速するのでは……との予測もなされている。

スマートスピーカーは、きわめてシンプルなハードウエアだ。なぜなら、音声アシスタントとしての処理は、クラウド側でおこなっているからだ。そのため現在は、スマートスピーカーがもっていた要素がさまざまな機器に拡散し、さらに連携する機器が広がる、というフェーズに入っている。

わかりやすいのは、自動車への訴求だ。