〜Aviation sometimes Railway 〜 航空・時々鉄道

航空や鉄道を中心とした乗り物系の話題や、「迷航空会社列伝」「東海道交通戦争」などの動画の補足説明などを中心に書いていきます。

台風の影響で北陸新幹線が長期運休の危機・・・復旧はいつになる?

10月12日から13日にかけて日本列島に上陸した台風19号は日本各地に大きな爪痕を残していきました。被災した方には心よりお見舞いを申し上げます。

さて、鉄道各社や航空各社は台風に備えてあらかじめ列車や航空機の運航を止める「計画運休」を行いました。この為運行中の事故や台風通過中の突発的な運休を防ぐことができましたが、一方でいくつかの路線ではまだ復旧のメドが立っていません。中には深刻な被害が出て長期間の運休が見込まれる路線もあり、台風の影響はまだしばらく続きそうです。

 

 

そんな中、最も深刻な影響を与えそうなのが北陸新幹線。千曲川の氾濫により長野市にあったJR東日本の新幹線車両センターが水没し、JR東日本所有のE7系8編成とJR西日本所有のW7系2編成が合計10編成120両が浸水してしまった事で、東京~富山間の全列車が引き続き運休となりました。車両センターの職員の方が全員避難して無事だったのは不幸中の幸いでしたが、北陸新幹線の車両30編成の3分の1が浸水してしまった事や、工場にあるメンテナンス機器や変電所なども水につかったことで早期の復旧は困難な状態です。

 

headlines.yahoo.co.jp

 

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それでは北陸新幹線の復旧にはどのくらいかかるのでしょうか?現時点では正確な被害状況が分からないのではっきりした事は言えませんが、車両センター付近の水が引いた後の点検で本線の被害状況が深刻でなければ、運行再開自体はそう長くは掛からないのではないかと思います。しかし、全体の3分の1の車両とJR東日本側の車両基地が使用不能になった今の状態では、運行再開しても本数は半分程度になるのではないでしょうか。

日常の点検整備に関してはJR西日本の白山総合車両所があるので、運行自体は問題ないと思います。運行は当面は残る20編成で廻す必要がありますが、実際には予備や検査代替用で2編成程度は残しておく必要がありますので、実際に運用できるのは18編成となります。そうなると通常の5~6割程度の本数での運行となりますが、恐らく減便されるのは同じ時間帯を走る「はくたか」で代替可能な速達型の「かがやき」や、長野どまりの「あさま」になると思います。当面は残りの編成で廻すことができ、かつ長野滞泊を極力発生させないよう、1時間に1本程度の「はくたか」と数往復程度の「かがやき」、富山~金沢間の「つるぎ」だけになるのではないでしょうか。

 

また、水没した10編成が復帰できるか否かも完全復旧の時期を左右することになります。修理可能であれば再整備して復帰させればいいのですが、修理不可能だったり、費用面や修理期間の面で新造した方が早いと判断されれば水没した編成は廃車となり、新たに大体新造する必要があります。

そうなると10編成で300億以上の費用が掛かる上に発注から製造までに年単位での時間がかかり、完全復旧は更に遠のきます。しかも水没した車両の中にはJR西日本所有のものも2編成あり、JR東日本と西日本との間での費用負担の割合の問題も発生します。車両センター周辺は長野県のハザードマップで「付近の川が氾濫した際は10メートル以上浸水するおそれがある」とされており、JR東日本の過失の有無で揉める可能性があります。

車両自体は現在上越新幹線用のE7系が製造中なので、この車両を北陸新幹線に廻して既存の車両の廃車を先送りにすれば何とかなりそうですが、場合によっては上越新幹線にも影響が出そうなのが心配です。何とか修理できればいいのですが、映像を見る限りでは窓枠下の部分まで水没しているようなので厳しそうですね・・・車でもここまで浸水したら冠水車扱いになりますし。

www3.nhk.or.jp

 

一方、北陸新幹線の運休を受けてANAでは20:10富山発羽田行きの臨時便の運航を決定しました。14日以降も臨時便の運航を検討している他、JALも羽田~小松線の一部大型化を決定しました。JR西日本でも14日に金沢~米原間で臨時の「しらさぎ」の運行を決めた他、2時間に1本程度、金沢~糸魚川間で臨時の「はくたか」を運転する予定です。

北陸新幹線の運休が長期化するとなると、当面は航空路線や米原経由に頼る必要が出て来ます。場合によってはかつての主力ルートだった長岡経由も考える必要があるかも知れませんが、在来線の特急車両の数やJR東日本との調整を考えると現実的ではないかな・・・越後湯沢経由はもっと無理だと思いますし。

www.ana.co.jp

 

trafficinfo.westjr.co.jp

 

また、今回の北陸新幹線の運休で交通インフラを分散させる必要性が改めてクローズアップされたのではないかと思います。以前の記事で私が東京に行くのにあえて空路を使う最大の理由を「使わないと富山空港が無くなるから」と言いましたが、今回の運休で改めて万が一の際の富山空港の必要性を再認識しました。東日本大震災の際も長期不通となった東北新幹線の代替交通機関として山形空港や福島空港の存在がクローズアップされ、多数の臨時便が運航されて復興の大きな助けになったことは記憶に新しいと思います。同じような事が北陸新幹線でも起こった今、富山空港が富山と首都圏を結ぶ大事なライフラインとなっています。運休が長期化すれば機材大型化や臨時便で対応する事になりそうですが、まずは北陸新幹線の1日も早い復旧を願いたいですね。復旧にあたるJRの方はどうかご安全に。

 

www.meihokuriku-alps.com

 

 【10月14日追記】

北陸新幹線は13日の夜に東京~長野間で「あさま」のみ運転を再開しました。また、北陸側も運転区間を金沢~糸魚川間に拡大し、金沢~富山間の「つるぎ」の他に金沢~糸魚川間に臨時の「はくたか」を13往復運行します(1~4号車の自由席のみ。他の車両は閉鎖)。また、ANAも14日の午後に羽田~富山線の臨時便運航を決定しました。

www.aviationwire.jp

 

www.toyama-airport.jp

しかし、残る長野~糸魚川間は運転再開の見通しが立っていません。未確認情報ですが車両基地だけでなく、変電所や本線の設備も浸水の被害を受けている可能性があるそうで、まだ水が引いていない現状では点検もままならないようです。被害ができるだけ小さいといいのですが・・・

本線の被害状況によってはこの区間の運休が長期化するかもしれず、その場合は現行の米原廻り以外の代替ルートを考える必要がありそうです。恐らく、羽田~富山間や小松間の航空便も大型化や臨時便運航が検討されると思います。

 

www.nikkei.com

 

trafficinfo.westjr.co.jp

 

この他にも吾妻線長野原草津口~大前間、両毛線足利~小山間、中央線高尾~大月間、水郡線前線が土砂流入や橋りょう流出などで長期運休の見通しとなっており、特に中央線の不通で山梨県や長野県中信地方への鉄道ルートが寸断されてしまっています。30名を超える死者も出てしまい、改めて被害の大きさに戦慄するとともに、亡くなられた方には心からお悔やみを申し上げます。まだ復旧作業にかかれる状態ではないと思いますが、一日も早い復旧と作業をされる方の安全をお祈りしております。

 

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