「…ばかだなあ。死にたきゃ死んでいいけどさ、じゃあおれの話を聞いてからにしろ。そのくらいはしてくれてもいいだろ」
「…」
「あのなあ、お前おれにうんこぶつけてきてんだよ」
「うんこ?」
「うんこ」
「なにそれ」
「うん」
「どのくらいガマンできる?」
「うーん」
「3歩あるいたらアウトくらいのときとかさ」
「そんなの無理じゃん、ガマン無理」
「だよな?」
「うん」
「ちなみに、そういうときってどうすんの?」
「そういうときって?」
「トイレ行く」
「まあそうだよな」
「うん」
「うん」
「知ってた?」
「うん、まあ」
「生きてるとな、自然とうんこしたくなるの、なんにもなくても」
「うん」
「うん」
「どうやってうんこが作られるか知ってる?」
「うん」
「食べないと死ぬじゃん」
「うん」
「食べるとうんこ出るじゃん」
「うん」
「生きるためには食べるのとうんこするのセットなんだよ」
「うん」
「お前、ひとりでずっといられる?」
「ん?いや、さびしくなる、無理」
「だよな」
「うん」
「うん」
「すると、いやなことあるじゃん」
「うん、ある」
「いらいらしたり、怖くなったり、自分を嫌いになったりするじゃん」
「うん、いつもそう」
「でも、会わないとさびしいじゃん」
「うん」
「生きるために人に会うといやな思いをするわけだよ」
「うん」
「いらいらしたり、怖くなったり、自分を嫌いになったりするのはお前のうんこなんだよ」
「ああ」
「心もうんこするわけだよ」
「…」
「だからお前以外の人も、みんな心のうんこするわけ、わかる?」
「うん」
「お前がおれにうんこぶつけてるって言ったじゃん」
「うん」
「意味わかった?」
「うん、ごめん」
「うん、でもそれはいいの」
「いいの?」
「うん、いいの。うんこしたくて、おれにぶつけるしかないなら、別にそれでいいよ」
「なんで?」
「うんこ出ないとつらいじゃん、だろ?」
「うん」
「うん」
「おれが今してるのは心のうんこの話な?」
「ん?うん」
「うんwww」
「うん、さっき聞いた」
「…うん」
「うん」
「お前の親とか、きれいにラッピングしたうんこをお前のためって投げてくるわけ」
「うん…」
「いや」
「ふつう、よけるよな」
「うん」
「…」
「どうすればいいの?」
「お前、親の愚痴に気を遣って『たいへんだね』とか言ってんだろ?」
「うん」
「わざわざうんこ拾ってんだよ」
「ああ」
「拾うな、流せ、相手すんな」
「なるほど」
「人間がうんこするのはしょうがないんだ。親がうんこするのもしょうがないの」
「うん」
「ただ、それを子どもがだまって受けなきゃいけない決まりはない」
「うん」
「ああこの人、自分の子どもに向かってうんこしてんだなあって思ってろ」
「うん」
「言えるかな…」
「心の中で言うだけでいいよ、ホントに言うとケンカになるからwww」
「そっか」
「うん」
「でも、うんこぶつけられ続けるのは無理がある。おれだってそうだ」
「うん、だよね」
「そうなの!?」
「疑えってwww」
「www」
「うん」
「じゃ、しょうがねえじゃん」
「うん」
「さっきも言ったけど、お前のうんこはおれが受け止めてやるから」
「うん、でもなんで?」
「うん…」
「でも、それでもどうしても死にたかったら、死んでいい」
「いいの?」
「うん、しょうがねえじゃん。うんこしたのにつらかったら、そりゃ相当なうんこだよ」
「うん」
「なんかやだ」
「まだ死にたいか?」
「いや、なんか大丈夫になってきた」
「うん」
「変わった趣味してんな」
「違」