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MMT(現代貨幣理論)を理解するには才能があるのですか?私はすぐに理解できたので...

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ID非公開さん

2019/10/1101:15:17

MMT(現代貨幣理論)を理解するには才能があるのですか?私はすぐに理解できたのですが、私は経済学の才能があるのですか?MMTについて理解していない人が大量に存在しているように感じます。

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1〜1件/1件中

ric********さん

2019/10/1411:31:39

どうでしょうねえ。


日本で「MMT」と呼ばれているものって、
非常に素朴なファンクショナル・ファイナンスと
SFCの組み合わせの様なものでしかなくって、
そもそも「MMT」と言い出した人たちの議論が
全然、消化されていない気がするんですよね。
先ごろ翻訳されたランドール・レイのMMT入門でも
解説者の一人は、「MMT」がなぜ
中央銀行と財務省のオペレーションの連携関係について
重要視しているのか、論点をさっぱり認識できて
いない様子でした。実は、この部分こそ、
それまでバラバラだった
MMTの素材の数々をまとめ上げることになる
最終ピースだったのですけれど、この部分を
全然理解できていないものだから、
MMTが「リフレ派」と同じものになってしまったり
するわけです。(部分部分を切り貼りするだけなら、
MMTを「日銀理論」と同じものだ、ということも
できたはずです。現に、以前はそう言っていた人もいました。)
そんな状態ですから、中には、
あんまり日本で「MMT」と言っている人のことを
信用しないほうがいいケースもあるんですよね。。


例えば、昨年、上記のランドール・レイが
発表したワーキングペーパーでは、もともとの
ファンクショナル・ファイナンスの主張者であった
アバ・ラーナーという人物が取り上げられています。
この人は、終生、ファンクショナル・ファイナンスの立場を
崩さなかったにもかかわらず、
60年代に入りアメリカでインフレがひどくなり
そしてスダグフレーションが発生するに至ると、
高失業率であるにもかかわらず、インフレ抑制のため、
均衡財政を主張するようになり、
そしてインフレ対策は金融政策で応じる
というような、マネタリスト政策を主張するように
なるわけです。これが最終的にファンクショナル・
ファイナンスの主張者が行きついたところです。
これに対して、やや若かったハイマン・ミンスキーは
スダグフレーションに対して、
同じく均衡財政を主張することにはなりましたが、
その眼目は、財政政策を失業者を政府が直接雇用することに
「的を絞った」ものへと変更することでした。

ランドール・レイという人は、ハイマン・ミンスキーの
直弟子ですから、当然、このワーキングペーパーでも、
ミンスキーの方に好意的なのですが、
現在、MMTの人たちが主張しているのは
(これは日本で「MMT」と言っている人たちからは
ほとんど無視されていることですけれど)、
「的を絞った財政政策」(ちょっとミンスキーとは
意味が違うが)なんですよね。
ですから、JGPなどの一部の政策を除くと、
たとえインフレになろうとも財政支出を減らすことは
考えていない(これはクルグマンとの論争の
ポイントの一つ)と言っているわけです。
一方で、ファンクショナル・ファイナンスを全面的に
引き継いでいながら、同時に、
裁量的な財政政策によって景気を維持することには
反対だ、という、ある意味で
両義的な主張になってくるわけです。レイ自身の言葉で言えば
裁量的財政政策というのは
「インフレを失業対策の手段とし、
失業をインフレ対策の手段とする最悪の手法」です。
だから、「MMTを理解した」というのであれば、
一方で、「ファンクショナル・ファイナンス」を
理解しながら、同時に「裁量的財政政策の
拒否」も理解しなければならない。この部分が、
実は難しいところで、日本の多くの「MMT」には
あんまり理解されていないように見えるところなのですが、
いかがでしょうか。

ファンクショナル・ファイナンスの議論は
ラーナーばかりでなく、ラルムとか、当時の
多くの人たちにとっては当たり前の議論だった。
ところがそれが70年代80年代を通じて
消え去ったわけです。消え去ったのには
消え去っただけの理由があったわけで、
それを復活させるにあたっては
当然、なぜ消え去ってしまったのか、その事情を勘案し、
それに対応した内容に進化させなければならないのですけれど、
日本で「MMT」と言っている人たちの議論を見ると
ラーナーのファンクショナル・ファイナンスの議論から
一歩も出ていない気がすることしばしなんですよね。。。

他にも、ケインズの「有効需要説」をどのように理解
するべきか(例えば、ケインズがなぜ、
国内生産量の測定単位として「賃金単位」を
用いたのか、など)、MMTは、過去の議論を
「復活」させるにあたって、ただ、昔言われていたことを
復活させているだけではないことがわかります。
(P.チェルヌバなどの議論。)

もっと難しいのは、MMTの「租税貨幣論」と言われる
部分で、MMTによれば、租税によって
貨幣の価値が保証されるといっても、それは貨幣が
「1円は1円の価値を持つ」という部分(額面価値)を
保証しているだけであって、
購買力(実質価値)までは保証していないんですよね。
中世ヨーロッパで金属貨幣が使われたのは、この額面と購買力とを
一致させようとする営為の結果だったのですが、
結局、矛盾は解消されることはなかった。
貨幣に価値を持たせようとすれば、それは必ず投機的(裁定)取引の
対象となり、貨幣としての流通が妨げられる。
この購買力と額面の乖離をどのように調整するか、というのは
非常に難しい問題で、この矛盾が
金属トークン論の問題として延々と語られています。
この額面という「意味するもの」と、購買力という
「意味されるもの」の乖離が非常に重要な問題になっています。
(M=イネスの再検討にはじまり、
一連のティモワーニュのブログなど。)
残念ながら、日本のMMTの間では
「租税が貨幣価値を維持する」という言葉の意味が
租税によって貨幣供給量を増減させることで
貨幣の購買力が維持される、というような単純な(というか
マネタリスト的な)話に
勘違いされてしまう嫌いがあります。
(実際、アメリカやオーストラリアのMMTerでも
累進課税によって、購買力を取り除くことが
インフレ抑制につながる可能性があることを
しばしば言及してはいますが、同時に、
状況次第では、増税によって
かえって物価が上昇する可能性があることも
示唆されている。)

MMTの人たちがおもしろいのって、
例えば、金属貨幣が信用貨幣に代わったことを
普通の人であれば、歴史的進歩だ、
と考えたくなるんですけれど、
むしろこうして制度が進歩してしまったことで
もともと貨幣というものに内在していた問題が
見えなくなってしまって、そのせいで
誤った政策に導かれる可能性がある、
と、そういう考え方をとりたがることなんですよね。
いま、システムが安定して、問題なく動いている、ということは
かつてあった問題が存在しなくなったことを意味しているわけではなく
単にその問題が顕在化しないようにシステムでカバーされているだけなのだ、
という考え方です。「当たり前」と思っていることが
実は「当たり前」ではないかもしれない。1ドルは
シカゴでもニューヨークでも1ドルで使える、という状態は
実は、歴史的なシステムの積み重ねと
そのシステムを支える人々の日常的な営為で出来上がったものなのであって、
当たり前でも自明でもない。それを
あたかも自明な当たり前なこととして政策を考えるようなことをすれば
大きな誤りに陥りかねない。
逆に言うと、そういうMMTのスタンスを理解していないと
何故MMTが、中央銀行と中央政府のオペレーションに事を
あれこれこだわっているのか、
中世の金商品貨幣のことを繰り返し議論するのか、
安定こそまさに不安定化の要因だ、と主張しているのか、
その辺がわからなくなってしまって、
無駄なことを論じている、と早とちりする羽目になるんです。

いずれにせよ、MMTというのは
クナップやらイネスやらケインズやらラーナーといった
多くの先人たちの議論の上に創り出されたものなのですけれど、
過去の議論をそのまま寄せ集めただけというのとも
ちょっと違うんですよね。


まあ、その辺考えて、あんまり性急に
理解したのなんのと言わずに、
気長に付き合ってみてはいかがでしょうか。
ブームに乗せられて右往左往するのだけでは、
本当におもしろいところまではわからないですよ。
毎年、何本かは査読誌に論文も載っていますし、
書物も出版されている。
ワーキングペーパーなら数多く出ています(インター
ネットで無料で手に入る)から、
ご自分で目を通してみてはいかがでしょうか。
英文ですけれど、一部の人(Fullwilerなど)を
除くと、基本的に読みやすい英語の人が多いですから
辞書を引き引きでも
何とかなると思いますよ。

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