アップルパイの食べかす
2.5、アップルパイの食べかす
2013年12月26日
「そんな感じのたのしいクリスマスだったよ」
いつものように学食で会った吉塚と二人、話している。
「いいね。にぎやか」
「うん」
吉塚は今日はいつものわかめうどんじゃない。やぶれ饅頭の包装を破いている。僕はチキン南蛮定食を完食済。
「饅頭、すき?」
「うん」
「じゃあ一個あげる」
僕は欲しそうな顔をしていたかな、饅頭を一つ受け取る。
「ありがとう」
「いいえ」
でもさっきシュークリーム食べたからなあ、あとで食べよう。
「最近さむいな。雪が降りそうだ」
窓の向こう、空は白い。薄い灰色の雲で覆われている。昼前だが明るくない。最近あまり晴れないな。
「今日はまだ降らないけど、大晦日は降るよ」
「そっか」
「そうだ」
吉塚は天気の話をするとき断定的だ。しかもいつも吉塚が言った通りの天気になるから、吉塚予報を僕は信頼している。僕らのテーブルには饅頭の包装ビニールが散乱している。吉塚は食べるのはやいな。いつの間に、いくつたべたんだ。
「今日もまた教授のお手伝いしてそのあとはバイトか?よく働くなあ」
「そうかな。吉塚はバイトしないの?」
「一回くらいやってみたいけどそうはいかないだろうなあ。家庭の事情で」
「そっか」
いろいろな事情の家庭があるものだ。さて、いまは何時だろう。腕時計を覗く。
「そろそろ行くか?」
「うん。またね、吉塚」
「うん。いってらっしゃい」
まだ饅頭を食べている吉塚と別れて、午後の作業に向かう。吉塚はまだ授業とかの時間大丈夫なのかな。まあ、大丈夫なんだろう。吉塚だから。食堂を出ると思ったより寒かった。ほんとに雪まだ降らないのかな?はじめてちょっと吉塚予報を疑った。ちょっとだけ。
アップルパイ、完食。
「刺青ピアスとアップルパイ」の人々。
透明人間…相変わらず透明な大学生。オフィスの面々に毒されてよくしゃべるようになった。
千鳥[ちどり]…金髪、刺青、ピアスのヤ〇ザですか?いいえ、凄腕の霊的トラブルシューターです。刺青とピアスは自分の『いれもの』と『中身』を強く固定させるために必要なものです。金髪も元の自分の姿に近づけるためにブリーチしてるんです。決してDQNの若気の至りではありません。昔は弟より背が低かったのがコンプレックスだった。
ジャスミン…人生ゲームでの職業は女優。美女天才呪術師というの自称であり他称でもある。
日田[ひた]…われらがボス。実は地縛霊のため、オフィスから外に出られない。笑顔の胡散臭いサンタさん。
皿倉[さらくら]…ゆとり世代の男子大学生。幽霊こわいし、見えて一つも得なことないし、除霊とかマジ無理だから、と思っている。
熊谷[くまがい]…幽霊ストーカー女子。女性らしくてかわいい。
みなみ…千鳥の弟。愛されキャラ。元の千鳥より背が高い。瀕死のところを姫に拾われ、人間を辞めて妖精的な神の使いにジョブチェンジした。現在は姫様たちと元気に異世界で生活している。
姫様…神様。小さな女の子の姿で、見た目通り無邪気。
かすみ…姫様のお供の男性。常識人。
神社の周りの霊獣ちゃんたち…お察しの通り神社というのは皿倉の実家の神社で、霊獣ちゃんたちは皿倉の母様が家を守るために放ったもの。強くてやばそうなやつが来たら喰え!それが無理なら呪え!と教育されている獰猛な子たち。
吉塚[よしづか]…透明人間の友人。眼鏡。いつもわかめうどんを食べている。たまにやぶれ饅頭を食べている。
おわり。