かわいいあの子は君の彼女
もう彼女なんてつくんない。って、
もう誰も好きにならない。って、
もう恋なんてしない。って、
そうあたしに言ったよね?
なのに、どうして・・・?
「まり子、まり子ー!聞いて聞いて!俺彼女できちった」
久しぶりにムチャクチャ笑ってるな、なんて思ってたら、あたし見つけて、走ってきて、いきなり爆弾発言かましてくれた。
「あんね、あんね、告られたの。好きですって。好きですだよ?好きです」
「好きです言いすぎ」
そしてはしゃきすぎ。
「だってだって、だってね、だってだよ?」
「だって言いすぎ」
そして繰り返しすぎ。
「あーもー、許せよそんなん。なっ?だって好きですなんだからさー」
「わけわかんない」
「わけわかんなくねーよ」
「熱あんの?」
測ってみようと額に手伸ばそうとする。
「あるわけないじゃん」
その手を、バシッ、って払われる。
「・・・痛い」
「いたいのいたいのとんでけー」
「・・・・・」
あたし、傷付いてるよ?
今ので。
きっと、絶対、圭吾はそんなこと思いもしないだろうけど、あたし結構傷付いてる。
でも、今あたしがここでどんなに傷付いたカオしても、圭吾は気にもしてくれないんでしょ?そのムチャクチャ笑顔が崩れることはないんでしょ?
そんなの嫌だから、そんなの悔しいから、だから、傷付いたカオなんてしてやんない。
「圭吾ー!!彼女来てるよー」
ドアのとこで中原が呼ぶ。
「んぁー」
あほみたいな返事した圭吾は笑顔抑えながらそっちへ行く。
廊下には噂の女の子。校内でも結構評判の女の子・ひなたちゃん。
中原に冷やかされながらも、2人で仲良く話してる。
「まり子?」
ぼーっとそれ眺めてたあたしに望が声掛けた。
「ん?」
「ヤキモチやいてんの?」
「んなわけないじゃん」
平静をよそおう。
「焦がすなよ?」
なのにバレてる。
「焦がしたらまずいもんねー」
「発ガン物質だよ?発ガン物質」
「繰り返さない!」
「はーい」
廊下の2人から目をそらして望を見る。色の抜けた望の髪。
「のんちゃんは素直でいーねー」
「だって圭吾じゃないもん」
「のんちゃん自分で髪脱色する?」
「ううん。圭吾が紹介してくれたとこでやってもらってる」
「あたしの髪脱色して」
「自分でやってないっつってんじゃん。あ、脱色なら圭吾にやってもらえば?上手いよ、あいつ。・・・・・多分」
「・・・・・」
あたしが必死で話題変えてんのに、望はどうしても話題を圭吾に持っていこうとする。
わかってるんだよね、望は。あたしが今圭吾の話したくないって、絶対わかっててやってるんだよね。
「なんの話してんのー?」
冷やかすのも飽きたらしい中原が寄ってくる。
「圭吾の話」
「そんな話はしてない!」
望の即答を即座に否定する。
「えー、してたじゃん」
「してない!」
勝手に望が圭吾の話してただけで、あたしは全然圭吾の話なんかしてないもん。
「じゃあ俺も圭吾の話しよ。ねっ!まり子♪」
意味ありげに笑って中原はあたしを見る。
「だーから、してないってば!」
「圭吾ってさー」
アホ原 バカのん
「ねぇねぇねぇ!尚子は自分で髪脱色する?」
話題ムリヤリ変えてみる。
「は?ナニ?尚子って」
「中原尚子。可愛いでしょ?」
「尚之ですけど。可愛さイラナイ」
中原が、呆れたカオつくって、あたしに見せる。
「で、尚子、自分で髪脱色する?」
「しない。だって俺黒髪一筋だしー」
「・・・・ぷっ」
望が吹き出す。
「何だよお前」
「だって、聞いた!?まり子?」
「聞いた。ウソもいいとこだよね」
「ねっ」
つい最近まで金髪に近いような髪だった中原が、ちょっとふくれたカオする。生徒指導につかまって、渋々黒染めしたくせに。黒髪歴が片手で足りる日数のくせに。
「あ、尚子がすねた」
「すね子だ。すね子」
「もーいいっ」
中原に背向けられちゃったあたしたちは顔を見合わせて、ご機嫌とり。
「ごめーんね。尚子ー。怒んないでー」
「お前ほんとにすね子になる気?尚子で止まっとけよー」
「別に怒ってないしー。すねてないしー」
やっとこっちを向いた中原を見てほっとする。
だって中原がすねると面倒だもん。
「んで何?まり子髪脱色したいの?」
「うん」
「染めたいんじゃなくて?」
「うん」
「髪痛むよ?」
「うん」
「なんで?」
「気分的に」
「・・・ふーん」
「うん」
「俺がやってあげよっか?」
「ほんと!?」
「うん、いいよ」
「ありがとう!」
中原からOKが出た!!でも質問多くない?なんでだろ?尋問みたいだったよ。
「中原上手いの?」
「下手」
何故か望が答える。
「のん子うるさい。普通だよ」
「のん子って言うな。」
「のんちゃんはのぞむだからのぞみでしょ?や、のんちゃんはのんちゃんのままで充分可愛いよ」
あたしの意見にニコニコののんちゃんと、再び呆れたカオの中原。
「どんくらいにすんの?」
中原があたしの髪に触りながら聞く。
「任せる」
「んじゃ、任される」
「白っぽくなるまでやっちゃって」
望のとんでもない提案。
「あー、それいいかも」
「それはやめて」
髪、染めたくなかった
脱色したかった
上から色重ねるなんて、自分の気持ち隠すみたいだから
そんなことするくらいなら、色を抜いてしまいたい
こんな気持ち消してしまいたい。
「あ、で、圭吾ってさー」
またその話に戻んの?いい加減くどい。
「俺が何ー??」
タイミングよく戻ってきた圭吾。
「あれ?お前彼女は?」
「次教室移動なんだって」
「そんな少しの時間にも会いにきてくれるなんていい子だねぇ」
「ほんと、マジいい子。圭吾にはもったいねぇよ」
「うん、もったいない」
「もったいないもったいない」
望と中原がうなずき合う。
「うっせぇっつーの」
圭吾が2人を叩く。
「ってぇー」
「ったぁー」
「ちょっ、圭吾。手加減くらいしてあげなよ」
思わず立ち上がって2人の頭をなでる。
「何で今日まり子そっちの味方なワケ?」
「誰がお前の味方なんてするかよ。バーカ」
のんちゃんが調子に乗り始める。うーん、やな予感。
「望知らねぇの?バカって言った方がバカなんだよ?」
「バカにバカって言って何が悪いんだよ」
どこの小学生ですかー・・・。
止まらなそうな2人の言い合いは無視して、中原と会話する。
「まり子いつ暇?」
「別に。いつでも暇」
「寂しい奴」
「うるさい」
「じゃあ、今日。暇?」
「ん、暇」
「んじゃ、帰り俺ん家ね」
「いいの?」
「いいよ」
「いつの間にお前らそんな関係になってんの?」
望と言い合うのやめて、圭吾が驚いたように言う。
「ひっみつぅー」
中原があたしの髪触りながらアホな返事する。
「えっ、ウソ。マジでっ?」
圭吾が嬉しそうに望に聞く。
「残念だけどさー圭吾。お前が想像してるような関係じゃねぇよ?こいつら」
「は?」
「言うなよ」
中原があたしの髪引っ張りながら言う。
「痛いって」
「じゃーどういう関係?」
「♪ひーみつ、ひーみつ、ひーみつ、ひみつぅの♪」
「髪脱色してもらうの」
中原が最後まで歌う前に言う。
「歌わせろよー」
「何で?まり子今髪いい色してんじゃん。何で色抜いちゃうの?」
「飽きたから」
「え?だってまり子もうずっと髪色このままでいいって言ってたじゃん」
もう彼女なんてつくんないっつったのあんたでしょ?
もう誰も好きになんないって、
もう恋なんてしないっつったのは、あんたでしょ?
『まり子の髪いい色してるよね』
『俺好きだなー。この色』
『変えんなよ?』
圭吾の鈍感。
「次授業なんだっけ?」
「・・・古典だな」
まわり見回して望が答える。
「頭痛い」
それだけ言って立ち上がる。
「保健室って言っとけばいい?」
中原がやっとあたしの髪から手離して聞く。
「うん。ありがと。じゃね」
ワケわかんない。ってカオしてる圭吾は無視して、授業開始のチャイムと同時に教室を去る。
好きって気持ちが消えないからこそ、一緒にいられないときがあるんだよ。