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人狼令嬢、人狼ゲームの世界に転生する? 作者:naru

人狼ゲームの世界に転生する?(異世界)

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三人称で書きました

 ウルルは大浴場に入る前、掃除用具置き場に『ある物』を取りに行った。

 その後、シャワーの前で体を洗うねずみの隣りに座った。


 ウルルは掃除置き場から持ってきた物をジッと見た。

 それは洗剤のボトルだった。

 風呂場を洗う用の洗剤。


 ウルルは自分に言い聞かせる。

 一思いに、一気に行くんだ!


 そして洗剤の入ったボトルを頭の上にかざし――


「!?」


 ウルルがもう少しで洗剤を頭上に流すところで、ウルルの手首がつかまれた!


「ね、ねずみ……!」


「何をやっているんだい、ウルル」


 とねずみがウルルの細い手首をつかみながら、静かに言った。


「別に。

シャンプーしようと思っただけだぜ!」


「それで?」


 とねずみはウルルの持つボトルをチラリと見た、


「洗剤で?

シャンプーしようとしているのかい?

シャンプーなら備え付けの物を使えばいいじゃないか」


「おれの毛は強力だからな!

シャンプーじゃ汚れが落ちないんだよ」


 ねずみはウルルの言い訳を何もかも見通すような目を向けつつ聞いていた。

 ウルルは初めは平常心で澄ましていたが、だんだん落ち着かなくなり、とうとう白状した、


「わかったよ、ねずみ。

ホントのことを言う。

おれはこの洗剤で、おれの耳としっぽの毛を脱色しようと思ったんだよ!

おれ〇ちゃんねるまとめサイトでそう言うコピペ見たことあるからな!

シャンプーと間違えてお風呂用洗剤で髪を洗ったら金髪になったみたいなコピペをな!

うろ覚えだけど」


「脱色なんて。

必要ないのに」


 とねずみが静かに言うのに、ウルルは言い返す、


「いや、必要あるんだよ!

おれの焦げ茶色の耳を見てくれ。

どう見てもこれ、おおかみの耳だろう!?

だけどな、脱色して金色の毛になったら?

犬に見えるだろ! 

かぁいい柴犬の耳に見えるだろ!

少なくともおおかみの耳には見えない!

そして!」


 ウルルは両手を体の前に大きく広げた、


「おおかみ少女に見えなければ、おれは一日目に処刑されない!」


 ねずみは静かにウルルを見つめてから、ぽつりと言った、


「それがそんなに大事なことかい?」


「えっ」


「一日目に吊られないことが君にとってそんなに大事なことなのかい……?」


 ウルルはその言葉にカッとして言い返す、


「ああ!

そうだよ!

おれにとっては大事なことなんだ!」


 ねずみは首を静かに横に振った、


「いや、君は物事を大袈裟に考えすぎる嫌いがある」


 ねずみは真摯な眼差しをウルルに向ける、


「大したことじゃないよ」


「え……」


「一日目に吊られるなんて、大したことじゃない」


 ウルルはねずみのその言葉を聞くと下を向き、こぶしをぎゅっと握った。

 大したことじゃない……だって?


 しばらく黙ったウルルの、洗剤を持つ手にねずみは優しく触れる、


「さあ、その洗剤を僕に渡すんだ。

君の耳にもしっぽにも髪にも、脱色は必要ないよ」


 いつもポーカーフェイスのねずみが、かすかに微笑んだ、


「君はそのままで、いいんだよ」


 ウルルはねずみの手を振り払った。


「ウルル……?」


 ねずみはウルルに戸惑った視線を投げるが、ウルルはそれはねつけるように、


「お前に!

何がわかる!」


 洗剤ボトルをギュッと握りしめながら、叫ぶ、


「ねずみに!

おれの気持ちがわかるかよ!」


 そう叫ぶウルルの脳に今までの『一日目吊り』が浮かんできた。

 初めての吊りは、GMのサイコパス怪演のせいで滅茶苦茶怖かった……気絶までしたんだ。

 次の吊りは占い師騙りをしたが他に占い師候補が3人もいたのにピンポイントで処刑先に選ばれた。

 その次の吊りは潜伏したのに一日目に吊られた。

 その次の吊りは二日目は霊媒師騙りをしようと思っていたのにその前に一日目に吊られた。

 その次の吊りは……


「ねずみには……お前には……わからない……」


 ウルルは脳内の『一日目処刑』映像を消し去ろうとするかのようにギュッと目をつぶりながら言った、


「一日目に処刑される、おれの気持ち!

お前には、わからないよ……!」


 しばらくしんと静まり返った。

 そのうちウルルは落ち着くよう自分に言い聞かせながら顔を上げた。

 するとねずみと目が合った。

 ねずみはウルルをジッと見つめていた。

 その真剣な眼差し。

 ウルルはハッとして見返す――ねずみはいつからそんな目でおれを見ていたんだろう?


「ごめん……」


 とウルルは眉を八の字にしてねずみを見た。

 頭を下げる、


「ねずみは、何も悪くない。

おれの八つ当たりなんだ……」


 再びギュッとこぶしを握る。

 先ほどとは違って、今度は自分自身への怒りを込めて。


「おれ……ほんと……ごめん……ねずみ……」


 頭を下げたままでいるウルルをねずみは静かに見つめた後、ポツリと言った、


「わかる」


「えっ?」


 ウルルは顔を上げ、ねずみを見る。

 そこにはねずみの真剣な顔があった。

 ねずみはウルルを真っ直ぐ見つめて言った、


「僕にはわかる」


 ウルルは目を見開いた、


「ねずみ……?」


 ねずみはウルルに弱々しく微笑んだ、


「僕にはね、わかるんだよ、ウルル。

君の気持ちが……」


 苦しげに顔をゆがませて、ためらったような表情をした後、


「だって僕……。

僕は……。

僕も」 


 とだけ言うと、再び口をつぐむ。

 が、また決心したように口を開く、


「僕もね、ウルル……。

僕も初日に……」


 ねずみが続きを言う前に。

 ウルルはねずみの肩をつかんだ、


「ねずみ……!」


 ウルルはねずみの顔を自分の胸におしつけた。

 ねずみはウルルの胸の中で不思議そうにくぐもった声で言う、


「ウルル……?」


「ごめん……!」


 ウルルはねずみの背に腕を回し、彼女をギュッと抱きしめた、


「言わなくていい!

無理して言わなくていいんだよ、ねずみ……」


「ウルル……」


 ねずみもウルルの体に自分の腕を巻き付ける。


「大丈夫、大丈夫だよ、ねずみ……」


「ウルル……」


 ねずみはウルルの胸の中でむせび泣いた。


(中略)


 ウルルとねずみは同じ湯船に隣同士浸かっていた。


「ウルルって本当に、猪突猛進だよね」


 とねずみは微笑んだ。


「おおかみに猪突猛進って……」


「だって」


 とねずみはクスクス笑った、


「ウルル、君がもし、あのお風呂用洗剤で耳を脱色していたらどうなっていたと思う?」


「ん?」


 とウルルは首をかしげ、その後ニヤッとした、


「柴犬少女に見えて、一日目処刑回避していただろ?」


「いや、それはない」


「なんで?」


「君が毛髪脱色に成功して金髪の耳としっぽを手に入れても、君は結局初日処刑だったよ」


「そんなことないだろー」


 と言うウルルに、ねずみはクスリと可笑しそうな視線を投げる、


「いや。そうなっていたさ。

『人狼ゲームアプリ』に金髪の耳としっぽを持つ人外が登場したら。

ヒトからどう見えるか、考えなかったのかい?」


「あっ……」


「そうさ。

君は柴犬と言うより、キツネに見えただろう。

たとえ赤ずきんをかぶっていようともね」


 ウルルはあんぐりと口を開けてねずみを見つめた後、笑い出した、


「そっかぁー。

そうだよなあ……。

バカだな、おれって……」


 と言った後、ウルルは真顔に戻るとねずみに聞いた、


「でもそれじゃあねずみは何でおれを止めたんだ……?」


「ん?」


「だって、おれがキツネと勘違いされたら、ねずみにとってラッキーなことじゃねーか。

だっておまえは……」


 と言うところでウルルは口をつぐんだ。

 これ以上言うとねずみを傷つけるかもしれないと恐れた。


 しかしねずみは先ほど泣いて、どこか吹っ切れたのかもしれない、まるで気にしていないかのようにアッサリと言った、


「僕は確かにキツネだ――毎回初日呪殺されているキツネ」


 と言うと少しだけ悲しげに微笑む。

 それから優しい目で、ウルルを見つめた、


「でも1日目夜に呪殺されないことよりも大事な、守りたい物が僕にはあるんだよ」


「何……?」


 と問いかけるウルルに、ねずみは心が洗われるような笑顔を向けて言った、


「おおかみ少女の、美しい焦げ茶色の耳としっぽ、そして髪だよ」




〈三人称編、終〉


※お断り※

上記の文章は実際に起きたことより多少ドラマチックに書いてあります。


※以下、実際に起きたこと※


ねずみ「ウルル、それシャンプーやない、洗剤や」

   (※実際の発言を少し脚色しております)


ウルル「いや、わざとだよ!

    洗剤で耳としっぽを洗うと!

    毛を脱色できるだろ?

    そう言うのネットで見たことあるぜ!

    金髪なら人狼には見えないだろ?」  


ねずみ「……」


ウルル「?」


ねずみ「ウルル。

    たとえ君の耳やしっぽが金毛になっても。

    君はスーパージンロー人にはなれない。

    やはり始めの方に脱落するだろう」 


ウルル「何で?」


ねずみ「人狼に見えなくとも。

    金色の耳としっぽなら、

    キツネに見えるだけだよ」


ウルル「……」


ねずみ「毛を痛めるだけなんだ」


ウルル「わかった。やめとく」


ねずみ「よかった」


ウルル「でもさ、ねずみ」


ねずみ「何?」


ウルル「おまえキツネじゃん?」


ねずみ「……気付いてた?(笑)」


ウルル「さすがのおれでも気付いた(笑)」


ねずみ「そっか(笑)」


ウルル「連続初日呪殺されてんの?(笑)」


ねずみ「連続一日目処刑の君よりマシだろ(笑)」


ウルル「ハムスター人間……(笑)」


ねずみ「おおかみ少女(笑)」


ウルル「それでさー。

    もしおれがキツネに見えたなら。

    ねずみ初日呪殺回避できたんじゃね?

    だからねずみ、

    おれが金毛にするの止めない方が、

    キツネにとっちゃ良かったんじゃね?」


ねずみ「……そうかもね。

    でも僕は初日呪殺のままでも構わないよ」


ウルル「えっ何で」


ねずみ「その方が楽なのかもしれない。

    あるいは」


ウルル「そう言う考え方もあるかー」

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