憂い
久々に一日中寝てまして……ええ、先程書き終わった次第です。
なかなかに悪くない夢を見ましてね……触手欲しい。
まあ、SAN値が危うくなるような夢ではありましたが、間に合って良かったです。
今回触手は出ませんが、どうぞ!
ツイッターで投稿予約上げたりしてます。良かったらどうぞ。
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「俺はアイツを……レイトをどう判断すればいい……」
アドルフは『帝国』にある宿の一室でひとり呟く。
思い返すのは、ここに来る道中の零刀の姿だ。
「過度のストレスによる髪色の脱色、だろうな。今は戻り始めているようだが……」
彼の髪は途中までは昔のように黒であったが、半ばからは白く脱色していた。
この世界において魔力は強い意味を持ち、感情によって左右されることもある。
だからこそ、精神に過剰な負荷がかかるとそれが魔力に影響し、魔力の状態を色濃く映す髪に変化が起きる。
アドルフは戦争を経験した事もあり、そういう事例をいくつか知っているのだ。
因みにこの世界に様々な髪色の人物がいるのは魔力のせいであるとされている。
「それはまだいい。それよりも問題なのはアイツの言っていた『代償に手に入れた』というセリフだ」
アドルフはそれが気がかりであった。
「レイトの持っていた黒白二振りの剣。──アレからは本物の『魔剣』の気配がした」
『魔剣』は世間一般に『魔』のチカラを持った『剣』という認識であるが、それは間違いである。
『魔』のチカラを持つ剣は『剣型魔道具』があるから混同されやすいのだ。
ここで言う本物の『魔剣』とは、『魔堕』した剣のことだ。
──『魔堕』とは、『魔物』でないものがそれに等しい存在に変貌する現象のことだ。
すなわち、魔道に堕ちる。
有名なところで言えば『人間』から『吸血鬼』などがそれに当たる。
それと同じように、『魔剣』とは剣に魔力や瘴気が溜まり続けることによって『魔堕』した『剣』のことである。
そして『魔堕』した剣は、使用者を蝕むことが多い。
──『魔剣』は所有者を【魔道】へと惹き込み堕とすのだ。
「レイトから【魔堕】の気配は感じなかったが……あれ程のチカラを手に入れるための代償はなんだ?」
アドルフはカンタンに終わってしまったゴブリンの集落襲撃を思い出す。
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ゴブリンの集落の襲撃作戦は至って単純なものであった。
言ってしまえば、【魔法】をぶち込んで混乱したところで突撃するだけのものだが、単純であるからこそ成功率は高い。
「──【
「──【
「──【
「──【木生ノ叛逆】」
彩、光輝、レスト、桜によって紡がれた【魔法】により、光が風が木々がゴブリンの集落を蹂躙する。
「かなり削れたな。よし、俺らも行くぞ!」
まだ僅かに【魔法】の残滓が残る中を隆静を先頭にして鈴、零刀、光輝が続いて突撃する。
襲撃を察したゴブリンたちが隆静めがけて飛かかるが、それを盾で吹き飛ばしながら進む。
「──【
「光輝!」
「──【飛翔光斬】!」
彩の支援魔法を合図に光輝が光の刃を放ち、群がるゴブリンの一部を吹き飛ばす。
「隆静、背中は任せるよ」
「……!ああ、作戦通りにな!」
「私は光輝かな?」
「後ろにはネズミ一匹たりとも通しはしない!」
四人は各々が背中を向け、預けるようにして陣を組み、目の前の敵に集中する。
ここまで作戦通りに進んでいるのもあり、アドルフに不安は無かった。
──零刀がその『剣』を抜くまでは。
(──!?この気配、『魔剣』か!?)
電撃が走ったかのように感じたそれは、恐らくステータスに表記されている『職業』の恩恵なのであろう。
しかし、零刀の次の行動にも驚愕せざるおえなかった。
「──この程度なら剣を使うまでもないか」
喧騒の中、強化していた耳に僅かに届いたかと思うと、零刀は剣を鞘に収めたのだ。
「【喰手】」
その言葉と共に手が黒く染まったかと思うと襲いかかるゴブリンの首を掴む。
──瞬間、その触れた部分が消えた。
「これだと効率悪いな。じゃあ……」
【破滅錬成】。
アドルフにはそう、聴こえた。
紡いだ零刀が再びゴブリンに触れると、今度も触れた場所が消え──
「グギャアアアアアア!?」
──そのまま全身が塵となって消えていった。
「──皆さん、行きますよ!【進撃ノ緑生】」
「【
「【
彩の【激化魔法】によってチカラを増した【魔法】が襲いかかる。
「『金剛』『身体強化』、『領域守護』──『
『
それで、襲いかかってきていたほとんどのゴブリンが倒された。
「ふぅ、これで一段落かな」
【魔法】の効果が終わり、騒音の止んだ中で光輝が零す。
「まだ油断するな。残党が残っているかもしれないだろ」
「じゃあ後は残党狩りかな?」
「──いや、まだみたいだね」
終わった気になっている彼らだが、零刀は気がついていた。
「これだけの規模の集落なのに、上位種が少なすぎる。どこか別のところにいるか、隠れているかだね」
アドルフも薄々疑問に感じていたことであった。
この規模であればジェネラルどころかキングがいてもおかしくなかったのにも関わらず、上位種がほとんど現れなかったのだ。
そしてその答えは、すぐに現れた。
「グォォオオオオオ!!」
ゴブリンキングが、他の上位種と共に奥から現れたのだ。
「『鑑定』……一番奥のは『ゴブリンキング』。後は『ナイト』、『マジシャン』『プリースト』、『ルーク』と……『クイーン』?」
「なるほど、チェスだね」
「鈴、そんなこと言ってる場合じゃあ無いかもしれないぞ」
「隆静の言う通りだね。あの『クイーン』、多分『変異種』だ」
零刀がそう言った瞬間、異変が起きた。
「ギュアアアアア!」
「グ、グォォオオオオオ!?」
その『クイーン』が『キング』を殴り倒すと、喰らい始めたのだ。
「なんだ、あれ……」
「なるほど、共喰いかな。これは厄介なことになった」
一同が唖然とする中、零刀は呟いた。
「あの『クイーン』、確実に『進化』するよ」
零刀の言葉が引き金となった訳では無いだろうが、『クイーン』が光り始めた。
「『ゴブリナ・アンセスター』?」
「『女鬼の祖』ねぇ? これまたヤバいものが生まれてきたが……正直、進化したての今以外に手の打ち用はないんじゃないかな?」
「……そうだね。よし、やろう!」
光輝の戦意を感じ取ったのか、『ゴブリナ・アンセスター』はゴブリンナイトを数多生み出す。
「雑魚は僕が殺る。アンセスターの方は任せるよ。道も僕が作るから、続いて」
そう言って零刀は両の手を黒く染めると生み出されたゴブリンナイトへと駆け出す。
零刀が触れれば、塵となり死に絶える。
零刀に触れれば、塵となり死に絶える。
まさに、【破滅】。
『アンセスター』はカラダが馴染んでいなかった上に戦闘技術が高くなかったため、後衛が加わると苦労しながら『勇者パーティー』のみで倒すことができた。
しかしながら、『ゴブリンキング』などが発生した場合における最も大きな脅威は数だ。
今回現れた『ゴブリナ・アンセスター』は『キング』以上の増殖力を持っていたのだろうが……
それを一人でどうにかしていたのは、零刀だった。
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「『黒耀石』の『錬成』に【破滅錬成】。さらに『魔剣』。これだけのチカラを手に入れるためにはどれだけの代償が必要だ」
居なくなる前の零刀も弱くは無かった。
むしろ、発想の転換で違った強ささえ持っていた。
しかし、アレは発想の転換とかいうレベルではない。
言ってしまえば、別次元。
発想どころか、根本的な何かを変えなければ思い付く事さえ無いだろう。
「……念の為、警戒はしておくか? いや、零刀が敵だとは考えたくないが……」
しばらく考えたアドルフは静かに呟く。
「……リーシャ、念の為に零刀を見ておいてくれないか」
「了解です。それと、数日後の『代表会議』はどうしますか?」
「ああ、そうか……王の付き添いは予定を変えて『騎士団長』の俺と『宮廷魔道士』のレスト、『メイド長』のお前、『勇者』のコウキで行く。零刀の件に関しては念の為ってだけだからな。『分体』とか『使い魔』でいい」
「了解しました。では、そのように」
そう残してリーシャは跡形もなく消える。
「はぁ、こういう時に限って妙な胸騒ぎがするんだよなぁ。何事も無く、終わればいいんだが……」
一息つきながら、今後を憂うアドルフであった。
次回、物語が大きく動く!
…………かも。