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魔法少女デュエルブラッド 作者:伯爵炎(バーニング)

第1話 - Duel blood wake-up -

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〈3〉

 公立美崎台高校。この地区最大のマンモス校である。


「なーなーセーラ、英語の宿題忘れちった! 教えれ! むしろノート写させて!」


 今日もその眼光で男子たちを怯えさせながら登校してきた緋川セーラ。

 1年Ⅳ組の教室に入るや否や、クラスメートの少女に抱き付かれる。


「あのな、アタシが真面目に宿題やってくる顔に見えるか?」


「にしし、ちっとも見えねー」


 クラスメート、葉住結子はずみゆうこ。身長151cmと小柄で、栗色に近い髪の毛を短めのツインテールに結った少女。人懐こい小動物の印象。


「でも、セーラはやってるっしょ? 中学からの付き合いだもん、お見通しだって!」


「……まぁな」


 結子は、セーラの凶悪な眼光を恐れない、数少ない一人である。

 中学時代の3年間も同じクラス、そして高校でまでも。

 セーラは「腐れ縁」と照れ隠しに言うが、親友と呼ぶべき相手。


 しかし、カバンからノートを出して結子に渡しかけるのを、別の少女が止める。


「ふふ、ゆーこを甘やかしちゃだめですよ、セーラ。宿題は自分でやらないと、身に付きませんから」


 白い指先、きれいに切りそろえた、艶やかな黒髪。いかにも茶道や生け花が似合う純和風のお嬢様。

 もう一人の親友、澤部文香さわべふみか


「だってさ、ゆーこ。ふみか様がお怒りだぞ」


「ええぇー、いいじゃん別に、宿題写すくらいさ。親友のわたしを見捨てるわけー!?」


「い・け・ま・せ・ん。親しき仲にも礼儀ありですよ?」


「……なにそれ、コトワザ?」


 二人を、セーラは止める。結子の肩を叩きながら、


「ほら、HRホームルームまで15分はある。アタシが教えてやるから、できるとこまで宿題やるぞ!」


 なおも文句を垂れる結子の、耳を引っ張って席へ連れていく。

 英語のノートを開いて、要点だけレッスン。

 いかにも不良な見た目と違い、セーラは成績も悪くないのだ。


「もう、セーラはゆーこに優しすぎです。ちょっと妬いてしまいますわ」


 唇を尖らせる文香に、結子は悪戯っぽい笑顔。


「にしし、セーラはわたしを愛してるかんな!」


「愛してねぇから」


 軽く脳天にチョップを入れてやる。


 ……いつもと同じ、中学の頃から変わらない日常。何気ないけど、セーラにとっては大切な時間。

 父を亡くしてからは、余計にその有難さを感じている。


 結子と文香は、小学校からの友達。セーラとは中学の時に出会った。

 物怖じしない結子はともかく、お嬢様の文香は、初対面の頃はセーラを怖がったものだ。

 セーラも、その時はまだ髪を脱色もしてなかったし、今のような不良ルックではなかったのだが、目つきと男っぽい口調に怯えられたらしい。


 でも、警察官の父が殉職し、泣いていたセーラを立ち直らせてくれたのは二人だった。


 だから、気恥ずかしくて口には出さないけど、とても感謝している。


(ホントは、二人とも愛してるよ。友達としてだけどな)



 ・ ・ ・


 放課後、カバンにノートや筆箱をしまい、帰り支度を始めるセーラに。

 結子が話しかけてくる。


「なーなー、セーラは知ってる? 最近話題のサイト!」


 自分のスマホを操作しながら、セーラの前の席に座る。この学校では、生徒の携帯やスマホ持ち込みを禁じていない。ここ美崎台はあまり治安の良くない都市なので、安全のためでもあった。


「セーラがさ、興味ありそうなんだよね!」


「へえ、どんなの?」


 セーラはあまり噂や流行に敏感な方ではない。

 尋ねると、結子は教えた。この時は、まだ毛筋ほども噂の内容を信じていない、軽い口調で。


 緋川セーラを、血と決闘の夜へ導く噂を。


「魔法少女になって、願いを叶えるサイトの噂」


 

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