役所の無責任・非効率に憤る30歳公務員の嘆き

「安月給」「長時間労働」「クレーム」の三重苦

市役所勤めといっても、長時間労働や改善されることない業務の非効率などが横行し、過酷な労働環境に憤りを感じているという藤田正樹さん(筆者撮影) 
孤独死やうつ病、リストラなど中年を取り巻く問題はメディアでも毎週のように取り沙汰される。しかし、苦しいのは中年だけじゃない。10代、20代の死因の最たるものが自殺である事実が示すように、「生きづらさ」を抱えているのは若い世代も同じだ。本連載ではライターの吉川ばんびが、現代の若者を悩ます「生きづらさの正体」について迫る。

「とにかく人手が足りません。給与が安いので人が集まらないですし、ただでさえ人員が少ないのに、作業効率の悪い働き方が常態化しているんです」

地方公務員の藤田正樹さん(仮名・30歳)は、自身の職場環境について苦言を呈した。

藤田さんは大学院を卒業後、正規職員の技術採用枠で市役所へ入所。その後、部署異動もないまま今年で3年目を迎えた。現在の主な仕事内容は、「厚労省が提示した条件」に該当する特定の家庭や事業所へ訪問し、住民の任意のもとにインフラ設備の改修工事を行うことだ。費用はすべて公共料金で賄われるので、住民が負担することはない。

とはいえ、改修工事の際には住民に立ち会ってもらう必要があり、一時的にライフラインが使えなくなることから、住民からの反発もしばしばあるという。また、改修工事には強制力はなく、該当の住居一軒一軒に事情を説明して同意を得るのは、かなり地道で骨が折れる作業だ。

役所でも「不正打刻」が蔓延

忙しい時期だと、22時頃までの残業が2〜3カ月続くこともある。基本的に、担当しているエリアの業務はすべて1人で行うことになっているという。慢性的な人員不足により、それぞれが「自分にしかわからない仕事」を膨大に抱えているためだ。

属人的な業務がほとんどなので、部署内で仕事をまんべんなく分担しようにも、引き継ぎをする時間も、コストも足りない。業務の効率化うんぬんよりも、とにかく今ある仕事をさばくために、手を動かし続けるしかないのだ。

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  • からころもbc29c03168a9
    >新たなシステムを導入すれば仕事が効率化するかもしれないが、自治体の「収入」が増えるわけではない。そのため、上としては変革に対して後ろ向きで、予算をかけたがらないのが現実だ。

    「支出」が恒常的に減れば「収入」が増えたのと同じ意味を持つ、という事を理解出来ないのが上層部って事?
    そこまで頭が悪い人達なのかなぁ…。

    >しかし、こうした上層部の「見て見ぬふり」は必ず組織の下層部、つまり若者たちにしわ寄せが行く。藤田さんのように、しわ寄せをくらった若者から「効率化」を目指す声が上がり始めるいま、非生産的な体制に依存する組織は、次第に淘汰されていくのではないか。

    次第にと言っても、しわ寄せを受けてる若者が効率化への熱意を失わずに上層部へ出世しないと変わらないんじゃないかなぁ。
    up7
    down1
    2019/10/14 06:21
  • ヤマダハジメ690f64df3725
    変化したことで、何かあった際に自分で責任をとることが嫌な人たちが公務員の上層部なんでしょう。だから、変革が進まない。
    また、一部の市民による公務員批判。公務員がコンビニでお昼買ってなにが悪い?仕事中ジュースを飲んでなにが悪い?エアコン使ってなにが悪い?
    もちろん税金だからそれがきちんと使われているか検証は必要だが、上のはただの弱いものいじめでしかない。弱いものがさらに弱いものを叩いているだけだ。
    up5
    down0
    2019/10/14 08:34
  • 不安になってきた0c0e47699a52
    >現在の主な仕事内容は、「厚労省が提示した条件」に該当する特定の家庭や事業所へ訪問し、住民の任意のもとにインフラ設備の改修工事を行うことだ

    彼のメインの仕事がイメージできない。これって本当に必要な仕事なのか。この時点ですでに非効率が発生している気がする。そんな仕事をどんなに効率的に片付けても、結局税金が無駄に投下されてるだけで、長時間労働以前の問題に思えてしまうのだが。
    up6
    down2
    2019/10/14 06:45
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