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NHKスペシャル「東京ブラックホールⅡ 破壊と創造の1964年」東京オリンピックの年にタイムスリップ!… New!


出典:『NHKスペシャル「東京ブラックホールⅡ 破壊と創造の1964年」』の番組情報(EPGから引用)


NHKスペシャル「東京ブラックホールⅡ 破壊と創造の1964年」[SS][字]


山田孝之さん演じる現代の若者が、最新デジタル技術で過去を追体験する新感覚ドキュメンタリーの2弾。今度は1964年、前回の東京オリンピックの年にタイムスリップ!


詳細情報

番組内容

俳優・山田孝之さんが最新デジタル技術で「歴史映像」の中にタイムスリップ!過去を追体験する新感覚ドキュメンタリー。1964年。それは東京五輪に向け、東京大改造や農村からの人口流入など“ブラックホール”のようなカオスが生まれた年。銀座の地下でツルハシを振るう男たち、通勤地獄や交通戦争、過酷な現実に向き合う若者たち…。当時の貴重な「未公開映像」を発掘し、知られざる熱狂の首都の姿を浮かび上がらせていく。

出演者

【出演】山田孝之,【語り】守本奈実



『NHKスペシャル「東京ブラックホールⅡ 破壊と創造の1964年」』のテキストマイニング結果(ワードクラウド&キーワード出現数ベスト20)

NHKスペシャル「東京ブラックホールⅡ 破壊と創造の1964年
  1. 東京
  2. オリンピック
  3. 日本
  4. 若者
  5. 小雪
  6. ケンジ
  7. テレビ
  8. 工事現場
  9. 出稼
  10. 世界
  11. 地方
  12. マンガ
  13. 引退
  14. 映像
  15. 選手
  16. 万人
  17. カネ
  18. 一日
  19. 競技場
  20. 警察


『NHKスペシャル「東京ブラックホールⅡ 破壊と創造の1964年」』の解析用ソース(見逃した方はネタバレ注意)


解析用ソースを読めば、番組内容の簡易チェックくらいはできるかもしれませんが…、やはり番組の面白さは映像や音声がなければ味わえません。ためしに、人気のVOD(ビデオオンデマンド)サービスで、見逃し番組を探してみてはいかがでしょうか?

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敗戦直後
見渡す限りの焼け跡だった東京。

この時 人口は300万。

だが 20年足らずで巨大都市に変貌する。

1964年 東京の人口は1, 000万を数えた。

国民所得も3倍以上に伸び
世界有数の大都市となった。

その年
東京ではオリンピックが開催され

普及 間もないテレビに
人々は かじりついた。

日本に
最も夢と希望があふれていた時代と

ノスタルジックに語られる年 1964年。

しかし 発掘された映像は 人々の記憶から
多くの事実が失われていることを物語る。

1964年は その後の日本の形を
決定づけた年でもあった。

スモッグの海から顔をのぞかせる
東京タワー。

経済成長は 生活環境の整備よりも
産業の振興に向かっていった。

工場の周辺では 8割の子どもの呼吸器に
異常が見つかった。

しかし 国が公害問題に
本格的に乗り出すのは

70年代になってからだった。

あのね…

今も続く東京一極集中も加速した。

東京大改造は
日本中に 富のにおいを振りまき

出稼ぎ 集団就職

地方から東京への人口流入が
急激に進んだ。

オリンピック関連事業のために

国家予算の⅓にあたる
1兆円がつぎ込まれた。

首都高速 新幹線 競技場…。

以来 巨大公共事業は
日本経済の生命線と位置づけられた。

東京にパックリと口を開けた
ブラックホールは

オリンピックという巨大な引力によって
ヒト モノ カネを飲み込んでいった。

そして 今に至る矛盾の種を
産み落としていた。

この番組は ドラマ形式で進行する。

最新の映像技術によって
55年前の東京に 現代の若者が迷い込み

破壊と創造の時代を追体験する。

日本の岐路ともなった 1964。

その1年を見つめ直す。

それは 間もなく2度目のオリンピックを
迎える私たちの

道しるべとなるはずである。

(ケンジ)<2019年 春。

アルバイトで食いつないでいた…>

<夢を諦めて>

いや~ くどいようだけどさ
うまいんだよ 絵は。

ただね~ 暗いんだな 話が。

<敗戦直後の闇市を描いたマンガを
出版社に持ち込んだが 酷評された>

ちなみにさ あなた
かわいい女の子 描けるでしょ。

絵 うまいからさ…。

ストーリーは こっちで考えるから。
ね どう? 検討してみてよ。

いや いけるって。 絶対いける!
天下取ろう! なっ!

いける いける…。

<来年は 2度目のオリンピックがある。

工事現場の人手は足りない。

外国人の若者が 低賃金 長時間労働で
2020年を底辺で支える>

ハングリー?

ケンジさん ありがと いつも。

きついな この現場。 給料安いし。
そうね。

ケンジさん
いいもの 見せてあげようか…。

ん? 何これ?
ブラックホール。

時間の缶詰。

見える… ケンジさんの運命。

まさか。

<魂は見いだす。 失われた時間を…>

<人は取り戻す。 うずもれた記憶を…>

<気が付けば
見知らぬ工事現場の片隅に倒れていた>

働け おら! 見てんじゃねえよ おら!

お前もちゃんと働け おら!

<悪夢なのか 幻覚なのか… それとも…>

昭和39年?

♬~(ラジオ「明日があるさ」)

<問答無用で
突貫工事の現場に放り込まれた>

(笛)

<一日16時間 働かされる>

うっ。 はあ はあ…。

あがりだ。   あ~っ!
悪いな。

あんちゃんよ おめ 東京もんでねが?
なして こんたどさ いる?

おい そんたごど 何とでもいいべ!

あんちゃん 勘弁してぐれ。

みんな 何年も突貫工事ばかりやらされて
くたびれてるんだ。

何年もですか?
んだ。

おいだば クニを出でがら もう5年だ。

稼ぐだげ稼いで こんな所 早ぐ足洗え。

死ねば 死に損だぞ…。

工事現場では 一日に10人以上の割合で
転落事故が起こっていた。

労災病院には
半身不随となった患者があふれた。

多くが下請け 孫請けの労働者。

補償は なきに等しい。

「オリンピックまでに」の掛け声のもと
危険を顧みない作業が横行していた。

これは 東京湾に向かう砂利船の映像。

積み荷の重さで 沈没寸前である。

道路やビルの突貫工事のため
大量の砂利を命懸けで運んでいた。

この年 3隻が沈没。 16人が死亡した。

工場では 生産を急ぐあまり
安全管理は後回しにされ 事故が続発した。

<給料もらえた。

僅かなカネでも ありがたい。

カネがなくなるまで
東京見物することにした>

<工事のおかげで 表通りはピカピカだ>

<しかし 裏通りに入ると
小さな木造住宅がひしめき合う>

<道路は凸凹で 水たまりだらけ>

<路地にまでダンプが押し寄せる>

あんたが急に曲がりゃあ

こっちだって お前…。
急に曲がってんじゃねえよ。

<誰もが殺気立っている>

<隅田川へ行ってみた>

<船で暮らす人が多いのに びっくりした>

<300年の伝統があるという 佃の渡し>

<だが 工場廃液の垂れ流しで
すさまじい悪臭だ>

は… はい。

<トイレは くみ取り式が当たり前。

バキュームカーも 毎日は来てくれない>

あら 嫌だ! はねるよ!

<一日850台のバキュームカーが集めた
し尿は 東京湾の沖合に捨てる。

そんなことをして大丈夫なのか…>

<ゴミの量も当然
1, 000万人分あるわけで…

船で夢の島へと運ばれる>

<野良犬も ゴミ扱い>

<川にゴミを捨てるのは日常茶飯事>

<ネズミ ハエ 蚊が大発生>

<赤痢やコレラやチフス。
日本脳炎も流行している>

<俺の住んでいた同じ東京とは
思えなかった。

2019年よりも 光は強烈だ。

しかし その分 影も濃かった>

<上野駅は 東京の放つ光に引き付けられた
地方の若者たちであふれていた。

どの顔も不安そうだ。

だが 俺の時代にはない熱気も感じた>

<横町で小さな幸せを見つけた>

バン バン バ~ン!

<貸本屋だ>

<町工場の工員。 そば屋の店員>

<貸本マンガは
地方から上京した若者たちの心を捉えた>

当時 テレビでは「鉄腕アトム」などの
アニメ番組が始まり

子どもたちが夢中になっていた。

正義の味方が悪者を倒すストーリーが
夢を振りまいていた。

勧善懲悪に飽き足らない
若者の心をつかんだのが

貸本マンガだった。

世の中の底辺でもがく人々を
リアルに描く。

(銃撃音)

過激な描写も多い。

貸本マンガ
最大の巨匠 白土三平。

若い読者から
熱烈に支持された。

この年 白土が放った戦後マンガの金字塔
「カムイ伝」。

理不尽な差別に苦しむ江戸時代の農民が
圧政に立ち向かう姿に

貧しい若者たちは 自分自身を重ねた。

<しばらくは 貸本屋へ通い詰めた>

あんた 好きだねえ マンガ。

毎日だね。

すみません。

何だい 「墓場鬼太郎」かい?

(雷鳴と不気味な泣き声)

気味悪くないかい?

水木先生の傑作です!

先生は日本を代表する巨匠!
…になります 将来。

えっ? み… 水木しげるが?

間違いないです。 絶対です。

あんた… うちで店番やらないか?

へっ?

<貸本屋のおやじさん
住み込みの店員 探していたらしい>

<マンガの神様に救われた>

記録映画保存センターは
東京大学などと協力し

高度成長期の映像を収集している。

コレクションは 1万巻を超える。

貴重な未公開映像が残されていた。

「日本発見 東京都」。

テレビ局の企画だったが
お蔵入りとなった作品である。

当時 毎年7万人を超える若者が上京。

工場や飲食店に集団就職していた。

大食堂のウエイトレスになった女性たち。

東京への憧れは
現実の厳しさに 次第に色あせていく。

本当に驚いちゃうよね。

放送中止を決めたスポンサーは
監督に こう言った。

これは この年に建設された
ある新興宗教の巨大聖堂である。

地方から上京した若者が大量に入信し
新興宗教が急成長していた。

故郷を離れた若者たちの
不安や孤独を受け止める

格好の受け皿となっていた。

<テレビは夢の箱。
この中だけは やたら明るい>

(小雪)ケンジさ~ん。

あっ 小雪さん。

あの… ちょっと相談したいことがあって。

<小雪さんは 横町の団子屋の店員。

集団就職で 秋田から来た。

夜は バーテンの見習いをしている>

日曜日 お休みできない?

<デパートの屋上は 遊園地になっていた>

へえ~ 世の中には
こんたの買える人もいるったな~。

たまげだ。

ケンジさんの夢は?

マンガ家かな。            そうか。
小雪さんは?

(小雪)バーテンの学校さ 通ってる。

いつか独り立ちして お店を持つのが夢だ。

独り立ち…。

田舎には帰りたくない。 ここで頑張る。

ケンジさんは東京の人?

あ~… あの 実は 僕は
21世紀の東京から来たんです。

フフッ フフフ… へえ~。

じゃあ 聞くけど
21世紀の東京って どんなとこだ?

う~ん…。

あっ 水洗トイレは普及してます。
お尻も洗ってくれます。

でも やっぱり… 貧しい若者は多くて

生きるのは大変で…。

出稼ぎの人は外国から来ます。

…で 今 オリンピックの準備してます。

オリンピック?
うん。 2度目の東京大会 2020年。

フフッ それ
ケンジさんの描いてるマンガだべ!

小雪さん… 相談って何だったんですか?

(小雪)私のお父さん
出稼ぎで東京さ来てから 消息不明なの。

(小雪)
ケンジさん 工事現場で働いてたでしょ?

心当たりないかなって思って。

聞いてみます。

ありがとう。

(発車ベル)

(笛)

出稼ぎに行ったまま
連絡が途絶えた人が増えていた。

この年 行方不明者全体では
8万人に上った。

東北の村役場は相談者であふれた。

工事現場で事故に遭ったり

悪徳業者に
だまされたりしたケースが多い。

衝撃的な映像が残されている。

両親とも消息を絶ち
子どもたちだけが故郷に取り残された。

「この家では 自分たちで食事を作り

ボロをまとって寝るという
生活をしている。

父親は 出稼ぎに行ったまま帰らない上

母親も 子どもたちを捨てて
逃げてしまったのである」。

このころ 東京と地方の所得格差は
2倍以上に広がっていた。

しかし その東京の中でも
格差が生まれていた。

貧困の深刻さを物語る ある事件が起きた。

(サイレン)

3月24日 正午 駐日アメリカ大使
ライシャワーが襲われ

刃渡り16センチのナイフで
太ももを刺された。

犯人は 心を病んだ若者だった。

病院に運ばれた大使は
1, 000ccの輸血を受けた。

大使は 手術のあと こう語った。

だが 事は美談では終わらなかった。

輸血されたのは
肝炎のウイルスに汚染された

いわゆる 黄色い血。

売血によって集められたものだった。

ライシャワー大使は

血清肝炎で長く苦しんだ。

<この街へ迷い込んで一番驚いたのは

命を削って僅かな金にかえる人が
いくらでもいるということだ>

<乳飲み子を抱えた女性が

朝早く 人目を避けて
小さな建物の中に入っていく>

<民間の血液銀行…。

血を売って生活費の足しにする>

<借金を抱えた人… 仕事にあぶれた人…>

<売血は
牛乳瓶2本で1, 000円くらいになる>

輸血用の血液の9割は
売血によって賄われていた。

しかし
その2割がウイルスに汚染されていた。

保存期間が切れた血液は 転売されて
化粧品の材料としても使われていた。

オーストラリアが
驚くべき声明を発表した。

「東京オリンピックに参加する選手は

日本での輸血を拒否する」。

その後も日本は
オリンピックの準備に邁進した。

日本橋に高速道路がかかり
競技場の建設も進んでいた。

建設業界の受注額は

オリンピック関連工事の始まった5年間で
総額5兆円を超えた。

この機に乗じた公共工事を巡る汚職が
頻発していた。

その数 2, 000件。

都庁 建設省 道路公団の役人が

政治家や業者と結託し 利権に群がった。

夏に入ると 東京では
42日間の日照りが続いた。

水源の水量は 僅か3%にまで落ち込んだ。

ダムでは 雨乞いの祈とうが続いた。

<そば屋や豆腐屋は 水不足で休業。

病院も深刻だ>

<ついに 自衛隊の給水車がやって来た>

<慌てて 俺も バケツを持って駆けつける>

終戦から この年までに
700万人が東京に流入。

高速道路や競技場は出来ても

人口増加に応えるライフラインの整備が
追いついていなかった。

(破壊音)

政府は
人々の生活の向上を後回しにして

オリンピックだけに金をかけていると
批判が集まっていた。

NHKの この年6月の世論調査。

「今年 一番 関心があること」に

オリンピックと答えた人は 2.2%。

100人中 僅か2人。

開催まで4か月に近づいてもなお
人々は無関心だった。

「オリンピックに
費用をかけるくらいなら

今の日本でしなければならないことは
ほかに たくさんあるはずだ」。

6割の人が そう考えていた。

<夏の一日 小雪さんの父親を捜して
工事現場を歩き回った。

誰も心当たりがないという>

いえ…。

え~っと…。

<出稼ぎ労働者は使い捨てなのか…。

2019年も
非正規で働く人で あふれている。

立場の弱い人たちに
繁栄の恩恵が回ってこないのは同じだ。

一体 何のための経済成長なのか…>

<早朝アルバイトに出た>

<満員電車の押し屋>

<ハイヒールが散乱していた>

<どうやって
会社まで たどりついたのだろう>

ホワイトカラーが急増し
労働者の¼を占めていた。

年間の労働時間は
今より600時間も多かった。

会社の成長は 自分の幸せ。

所得倍増を夢みて 深夜まで残業に励んだ。

サラリーマンは 団地暮らしに憧れた。

だが 入居抽選会の競争率は30倍を超える。

当選 130番。 130番。

この夫婦は 25回目の抽選で
ようやく幸運を引き当てた。

当選までの5年間 佐藤さん一家4人は
4畳半一間で辛抱した。

小さな内風呂を新居に運ぶ。

くみ取り便所とも お別れ。

狭い風呂で 幸せをかみしめる。

長時間労働で不在の夫のために
妻は家を守ることを求められ

専業主婦という言葉も生まれる。

世界でも まれな
男だけの企業社会が出来上がっていく。

<オリンピックが2か月後に迫っていた>

<東京都知事の号令で始まった
東京浄化運動に

市民200万人が動員された>

<ゴミだけじゃない 警察も総動員され
風紀の粛正が強化された>

<傷痍軍人の募金活動も
取締りの対象となった。

オリンピックという平和の祭典には
ふさわしくないという>

これは 海外のカメラマンが撮影した
盛り場の映像である。

記者が体験したのは
東京名物 トルコ風呂。

こうした風俗店も
軒並み オリンピックを前に

取締りが厳しくなった。

盛り場の女性が
警察を見た途端 逃げていく。

世界に 先進国 日本をアピールしようと
必死だった。

取締りは 若者たちにも及んだ。

アメリカ風のファッションをまとい
銀座をたむろする みゆき族。

警察は みゆき族を非行の温床と見なし
見つけ次第 補導した。

アメリカの雑誌は
東京の若者の変貌を特集した。

<東京の若さに驚く>

<2019年に比べ 16歳も若い>

<俺も踊ってみた。

みんな 東京の息苦しさの
はけ口を求めているようだった>

ヒト モノ カネを飲み込む東京には
もう一つの世界も広がっていた。

闇経済である。

アメリカのノンフィクション作家
ロバート・ホワイティング。

かつて アメリカ軍の兵士として
秘密工作に従事した。

オリンピック前後の
東京の裏社会を目撃した。

組織暴力団は このころ
戦後最大の18万人に達した。

警察は オリンピック期間中

各組に 組員を地方に所払いするように
要望したが

大会が終わると 再び勢いを取り戻した。

海外のメディアは
敗戦国 日本の劇的な変貌に関心を持ち

大勢の特派員を送った。

特派員の拠点は
米軍基地近くの赤坂や六本木。

占領時代さながらの
キャバレーやバーも多かった。

ドライ・マティーニ お願い。
はい。

10月10日。

いよいよ オリンピックが開幕した。

入場券を持たない人々は

競技場の隙間から
一目 開会式をのぞこうとした。

<小学校の授業でも
テレビ中継を見せたらしい。

オリンピックに無関心だった人たちも
テレビにかじりついていた。

テレビは 日本中の空気を一変させた>

<オリンピックの熱狂に
水をさすニュースが飛び込んできた>

(テレビ)「16日深夜 中共は
初の核実験に成功したと発表。

世界に大きな衝撃を与えました…」。

大会に参加していなかった中国が

このタイミングで
初めての核実験を行った。

中国人は躍り上がった。

日本では 放射能の濃度が急激に上昇した。

東京で100倍 高知で500倍
新潟で1, 000倍。

<しかし 核戦争の恐怖も

オリンピックの熱狂を
消し去ることはできなかった。

10月23日。
女子バレーの優勝決定戦>

(拍手と歓声)

そもそもバレーボールは

集団就職の女子工員向けに導入された
レクリエーションであった。

日紡貝塚は
大松監督のスパルタ指導に鍛えられ

世界で連戦連勝 東洋の魔女と呼ばれた。

選手たちは 朝8時から午後4時半まで
工員として働き

そのあと 深夜まで練習が続く。

オリンピックの2年前。

日紡貝塚は世界選手権でソ連を倒し
世界一に輝いていた。

優勝を果たした選手たちは
引退して 結婚し

新たな人生を始めるつもりだった。

そもそも 女子バレーは

オリンピックの競技では
なかったからである。

だが どうしてもメダルが欲しい日本は

開催国の特権として
女子バレーボールを

東京大会の競技として採用することを
IOCに認めさせた。

しかし 選手たちは激しく反発した。

引退の意志は固かった。

東洋の魔女の引退は
日本中に議論を巻き起こした。

大松監督のもとにも
5, 000通の手紙が届いた。

引退を非難する手紙も多かった。

東洋の魔女の主力選手だった
谷田絹子さん。

80歳の今も
ママさんバレーのコーチをしている。

選手も大松監督も
引退を諦めるしかなかった。

しかし 開会式直前
関係者が青ざめる事態が起きた。

女子バレーの出場国の一つだった
北朝鮮選手団が突如帰国

参加チームが5つになったのだ。

競技開催には
最低でも6か国の参加が必要だった。

日本は 急きょ韓国へ参加を打診。

韓国チームが到着したのは
競技が始まる当日のことだった。

(テレビ)「日本優勝しました。

15対13 ストレートで勝ちました!

日本 優勝しました!
日本 金メダルを獲得しました!」。

勝利の瞬間の大松監督。

オリンピックの熱狂は

噴き出し始めた
高度成長の矛盾を封じ込めた。

東京オリンピックは 日本の復興と誇りを
世界に示した 成功体験として

人々の記憶に刻まれることとなった。

1兆円を注ぎ込んだ
オリンピックの2週間が終わった。

<冬が来た。

久しぶりにマンガを描いてみたくなった>

<東京の中に咲いた 消え入りそうで
決して消えない希望の物語だ>

<小雪さんに見てほしかった>

こんにちは。
あっ ケンジ君。

小雪さんは?

ゆうべからいないのよ。

どこ行ったのかしら…。

<胸騒ぎがした>

「高度経済成長に忍び寄る黒い影
企業の倒産

昨年の2倍半 史上最高を記録した」。

建設ブームに沸いた
オリンピック景気が終わり

深刻な不況が始まった。

不況の長期化を恐れた政府は
戦後初めて 赤字国債の発行に踏み切った。

しかし これが
国債に依存する体質を生むこととなった。

農村では 離農が その後も続いた。

農家人口は 10年前より600万人減少した。

後継者不足 嫁不足で
農村は疲弊していく。

過疎と過密。

農村と都市の所得格差。

今も日本が抱える大きな課題は
この時 あらわになった。

オリンピック直前 社会のひずみを
放置しているという批判に対して

池田首相は こう答えた。

<店を畳むことになった>

すまんな ケンジ君
随分 金策に駆け回ったんだけどな。

もう 貸本屋の時代でもないしな。

おやじさん お世話になりました。

闇市の頃から始めて 15~16年か…。

よう頑張ったんだけどね。

おはようございます。 辰巳運送です。

あ… ご苦労さん。

あっ そうそう。
ケンジ君に 手紙が来てたんだ。

「拝啓 賢治様
いろいろお世話になりました。

ようやく父の居所がわかりました」。

「過労で倒れたらしく
木賃宿のようなところで寝ていました」。

「悪い業者にお金を持ち逃げされて
血を売って暮らしていたそうです」。

「ずいぶん弱っています」。

「父を連れて 秋田に帰ることにしました」。

「みじかい間でしたが
賢治さんと出会えて しあわせでした。

賢治さん 夢を捨てないで下さい」。

「キタローと一緒に応援しています。

小雪」。

♬~

<小雪さんに会えるわけでもないのに
上野駅へ行ってみた>

<東京は 若者たちの夢を食いながら
太り続けているように見えた>

<どれだけの人が夢をつかめただろうか。

幸せを見つけただろうか>

<1964年を支え
報われることのなかった人たちに

金メダルを>

ケンジさん 夢を見ましたか?

夢?

<間もなく
2度目のオリンピックがやって来る。

東京には 再びブラックホールが
生まれているのだろうか。

だとすると 何を飲み込み
何を覆い隠そうとしているのだろうか>

<俺たちは もう55年前と
同じ夢を見ることはできない>

<新しい夢の形。

俺は 探した>

<2020年春
一冊の作品を世に問うことができた>

<夢を諦めてなかったんですね>

<俺も…。

あなたに出会えたおかげです>

<年老いた小雪さんは 美しかった。

年老いた東京は… どうだろうか>

♬「見上げてごらん 夜の星を」

♬「小さな星の 小さな光が」

♬「ささやかな幸せを歌ってる」

♬「ささやかな幸せを歌ってる」


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