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【社説】

台風 19号  見直し必要な洪水対策

 台風19号が日本列島に大きな傷痕を残した。行方不明者の捜索を急ぎ、被災地の復旧作業を進めなければならない。近年、激甚化する気象災害にどう備えるかも、問われている。

 暴風域が直径六百五十キロにも及び、スーパー台風ともいわれた台風19号。気象庁は九日には「十一日金曜日までに備えるように」と呼び掛けた。台風はほぼ予想通りに静岡県・伊豆半島に上陸した。

 鉄道各社は計画運休を決め、レジャー施設やコンビニなども休業を発表。多くの人が先月の台風15号の経験を生かして備えた。それでも、多くの死者・行方不明者が出た。

 車で移動中に犠牲になる人が目立つ。災害時にはどこまで車を利用してもよいのか。どんな危険性があるのかを検討してほしい。

 風も強かったが、それ以上に雨台風だった。神奈川県箱根町で四十八時間雨量が一〇〇〇ミリを超えるなど、山間部を中心に各地で年間降水量の30~40%にあたる雨量を記録した。大雨特別警報は過去最多の十三都県に発令された。河川の氾濫や堤防の決壊が相次ぎ、被害を大きくした。

 国は大河川では百五十年から二百年に一回、中規模の河川は百年に一回、起きるような大洪水にも耐えられるように堤防などの設備を整備している。

 堤防が決壊した、長野県の千曲川は歴史的にも水害が多い。下流の新潟県では信濃川と呼ばれ、全体では日本一長い川であり、流域面積は三位である。流域面積とは降った雨が集まる範囲を示す。今回の台風は、南からの湿った風が山地にぶつかって大量の雨を降らせた。それが集まって一度に流れたのだろう。

 山間地で森林が伐採されたり、地形が変わったりすると、雨水を一時的に貯留する能力が低下し、地表を流れるスピードが速くなる。市街地化が進んでいくと、雨水が地下に浸透しにくくなる。防災対策が進む一方で、危険性も増していた。

 昨年も西日本豪雨で二十五河川の堤防が決壊。岡山県では多くの死者を出した。

 気象庁気象研究所によると、西日本豪雨は地球温暖化にともなう気温の上昇と水蒸気量の増加が影響している。スーパー台風は珍しくなくなるかもしれない。

 堤防のかさ上げやダム建設といったハードに頼る洪水対策は限界を迎えている。抜本的に見直す必要がある。

 

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