ラグビーのワールドカップ(W杯)で日本が初めて八強入りを果たした。多様な選手たちの結束と緻密な強化策が生んだ快挙だ。次は強豪南アフリカとの対戦だがひるまず高みを目指してほしい。
前回大会で日本が南アフリカを破ったときは「奇跡」といわれた。だが今回、世界ランク一位経験があるアイルランドに勝ってもその表現は使われなかった。
むしろ低く鋭いタックルや安定したスクラムで強国の攻撃を食い止めた日本の防御力への称賛が相次いだ。これは日本の技術や戦術、体力面での強化が国際的に評価されたあかしといえる。スコットランドにも勝ち、強豪国を破ることがもはや「奇跡」ではないことを裏付けてもいる。
タックルされながら味方にボールを渡すオフロードパス。エディー・ジョーンズ前ヘッドコーチ(HC)はこのパスを原則禁じた。非常に高い技術が必要で、試みた際にボールを奪われる危険があるからだ。
しかしジェイミー・ジョセフ現HCは解禁した。さらに上を目指すために必要と判断したからだ。選手たちは厳しい練習で技術を磨き、この日もトライにつなげた。
コーチ陣の働きも高く評価したい。特にスクラムを指導した長谷川慎コーチは選手の信頼が厚く、大きな自信を植え付けた。
代表チームには日本で生まれ育った選手の他に、多様な国々から集まったメンバーがいる。ジョセフHCは「ワンチーム」を掲げた。その言葉の下でチームは結束し出身国の違いを強みに変えた。
日本ラグビーにとって未知の体験となるトーナメント戦では、過去二回の優勝を誇る南アフリカと当たる。アパルトヘイト(人種隔離)を乗り越え国際舞台で活躍する同チームは、初の黒人選手のキャプテンが率いる。前回大会で勝ったとはいえはるかに格上のチームである。
だが勝利への熱量と練習量では五分と五分だ。大観衆の後押しも心強い。強豪相手に堂々と戦う姿を期待したい。
ラグビーは相手に尊敬の念を抱きつつ、肉体同士は激しくぶつかり合う。それ故、礼儀に反したり危険なプレーには罰則が科される。
今大会でも、相手選手を頭から落とす危険なタックルや試合後に相手チームともみ合う姿がみられた。勝利への意欲は理解できるが、ラグビーの誇り高き伝統を汚す行為は厳に慎むよう各チームに強く求めたい。
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