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昭和28年喜美子の働き口を父が決めてきました。
(喜美子)大阪?(常治)春から お前は大阪や。
信楽を離れる前に訪れた場所で見つけたのは 焼き物のかけら。
喜美子は 旅のお供にしました。
♪~
♪「涙が降れば きっと消えてしまう」
♪「揺らぐ残り火 どうかここにいて」
♪「私を創る 出会いもサヨナラも」
♪~
♪「日々 恋をして 胸を焦がしたい」
♪「いたずらな空にも悔やんでいられない」
♪「ほら 笑うのよ赤い太陽のように」
♪「いつの日も雨に負けるもんか」
♪「今日の日も 涙に負けるもんか」
♪~
♪「やさしい風に吹かれて」
♪「炎は再び舞い上がる」
喜美子は 生まれ故郷の大阪にたった一人で6年ぶりに戻ってきたのです。
(さだ)あかんわ~。うちにはデザインのセンスがないわあ。
(京子)目の付けどころは間違ってない自信持ちぃ。
ごめんな。 これ 外して 全部。(千賀子)あ… はい。
う~ん?今日 何か用があったような…。
♪~
約束の待ち合わせ場所にいつまでたっても 荒木商事の荒木さだ社長は やって来ません。
あ… すいません あの~ 荒木商事いう…。急いでるんで すんません。
あ… すいません 荒木商事いう…。
♪~
せやからな 若い子向けにここんとこに おリボンをな?
うんうん。ええ思わへん? 新しいやろ?
(警察官)失礼します。こちら 荒木商事さん?
(京子)は~い。荒木さださん 社長さんおられますか?
あ… はい。 はいはい 私です。あっ 社長…。
川原さんいう女の子と待ち合わせたはりました?
あ~! せやった!
せやせや! ちょっと待ってや。
ここで合うてた。 もう安心や。すみません ありがとうございました。
ほんま ごめんなあ。下着ショーのことで もう頭がいっぱいで。
したぎしょー?下着。
こういうの 分かる?
ちょっと前までは 乳バンドいうてたの。
ブラパッド入れてな。(千賀子)今はブラジャーいうんよ。
洋装が当たり前になってきたでしょう?
ディオール分かる?(京子)衝撃的やったわあ。
ここがキュッとなってここ ふわんとなってなあ。
そういう新しい洋服出てきたから下着も変わっていかな あかんの。
体の線が はっきりと出るからね。
ボディーラインいうの。ファンデーションな。
美しく着こなすための下着作りをしてるの。
デザインする会社ね。
え~!(千賀子)すてきやろ?
これもな コルセットいうの。
ほかも見る?
(麻子)お茶どうぞ。
あっ すみません 頂きます。
まだ ちゃんと挨拶も終わってへんのに…。
あ~ そやねん もう下着ショーのことでうっかりしてたんよ。
ほんま申し訳なかった。
改めて紹介しとこか。 私が荒木さだ。
私の片腕の二ノ宮さん。名前でええやん。
ほな 京子さん。
縫製担当の千賀子さんに麻子さん。どうも。
麻子さんは まだ学生さんで洋裁の学校に通ってはるの。
洋裁…。はい。
下着のモデルもやるのよね?いや まだ やるって決めたわけや…。
えっ だって モデル兼縫製いうて雇ってもろうたんでしょう?
千賀子さんもやるんやったら…。
うちは やるよ~。ほな うちもやります。
以上 荒木商事の面々よ。 フフフフ。
さださんのご両親亡きあと 荒木商事は下着会社に生まれ変わろうとしてるの。
女の遊びちゃうか言うてばかにする人もおるけど。
こっから おっきな会社にしていくんよ。みんなで意見出し合うてな。
上下関係 気にしいひん いい会社よ。はい。
あっ 川原さんは 何を?
ああ うち 和裁なら ちょっとはできます。
一とおり お母ちゃん…母から教わってまいりました。
そう。せやけど ここは試着品作るだけやから…。
あ~ せやねん。 縫製は千賀子さんと麻子さんで足りてるの。
(千賀子)ほな 何するん?
(さだ)あ~ せやから…。まさか!
えっ?うん?
分かりました。 下着のモデルですね!
ブラ… ブラジャーですか?こうですか? どうですか?
いやいやいや…。あなたの仕事はあの… ここやないのよ。えっ?
お父さんから 何て聞いたか知らんけど…。いとこや言うてましたけど…。
ううん ちゃうちゃう。お母さんの方の遠い親戚よ。
お互い よう知りません。
せやのに 無理やり ツテ頼ってここまで来て何べんも頭下げはって…。
回想 そこを なんとか雇うて頂けませんか?
そんなん言われても困りますわ。ほか 行くとこないんです!
ええ!?お願いします。いや ちょっと…いや もう頭上げて下さい。
ええ!お願いします!ええ!?
ちょっと いや…。お願いします!もう そんな困ります!
お願いします!
それで しゃあない…私の住んでる荒木荘で炊事 洗濯 掃除をするそういう下働きの仕事をな。
女中さんや。(さだ)そう。
そうでしたか…よう話分からんと来てしもて…。
こんな すてきなデザイン会社どないしよう思て…。
そうでしたか うち女中でしたか。
すいませんでした。 お茶おいしかったですありがとうございました。
(マスター)ありがとうございました。ごちそうさん。
ごちそうさんでした。
ごめん ごめん!
(大久保)ふん!どないなってんね…。
うん! 何で…。
(圭介)大久保さん ただいま。お帰りやす。 はよおまんな。
教授が休みで休講で…。ふ~ん そう。
閉まりませんか?あ これか?
まあ しばらく触ってなんださかいな。来たんですか 新しい人。
それが まだやねん。
後で 中から閉めときましょか?
やっといてくれる?もちろん。
助かるわ。 アハハッ ほな。
よし 次 うちの番やな。
こんにちは。(子どもたち)こんにちは。
あら~ こんにちは。こんにちは。こんにちは。
ここよ。
「荒木荘」…。親が残してくれた一軒家を改装したんよ。
どうぞ 入って。はい。
ただいま~。
どうぞ 入って。失礼します。よいしょ。
お上がり下さい。はい。
どうぞ。
大久保さんが来てるはずなんやけど…。
ああ お部屋は そこ。 荷物片しといて。はい。
大久保さ~ん? あら~?
空くなあ どないしても こんだけ…。
失礼します。
あの… こっちゃにお住まいですか?ああ。 ちょうど住んで1年になるかな。
そうですか…。
あの~ あれかな…?では よろしくお願いします。
川原喜美子と申します。あの この辺 使わせてもらいますね。
えっ?ご迷惑おかけしないようにこの辺りまで使わせてもろうてそっち行かんように厳重に注意します。
ちょっと… 何 言うてんの?もっと こっち?
ほしたら ないやん うちの場所…。どないしよ… ここら辺…。
可愛らしいなあ。えっ?
可愛らしいこと言うてるな思て。
ここに住んでるけど こことちゃうよ?
僕が住んでるのは 2階や。え… あっ…。
酒田圭介いいます。僕と ここで暮らす思うたん?
フッ 可愛らしいなあ。あ… いや…。
(さだ)畳も拭いてくれたん 助かるわあ。(大久保)いいえ。
あっ 圭ちゃん。(圭介)窓が もう…。
やっぱり閉まらへんか?
ちょっと いつの間に こんな子どういう関係や!?
(さだ)アハッ この子よ。信楽から来る言うてた子。
ええ!?(さだ)ご挨拶した?
お医者さん目指してる医学生よ。医学生…。
(圭介)新しい子やね。はい ここで女中やらせてもらいます。
川原喜美子と申します。よろしくお願いします。
喜美子ちゃん よろしゅう頼んます。
そして 大久保さん。 もともとは荒木家の女中さんやったんよ。うちのおしめも替えてくれたん。
今 近くに住んでてな手伝いに来てくれてんの。
仕事は 全部 大久保さんから教わってな。
はい。 よろしくお願いします。
明日からで ええわよね?そうだんな。
ほな 今日はごはん食べて ゆっくりしたらええわ。
ごはん…。(さだ)賄い付きよ?
えっ… えっ?
ウフフッ そら そうよ。 ほな。
あ… あの この部屋…。あ~ 狭うて堪忍な?
ほな 後でそこの隙間 新聞紙で塞いどいた…。どないしたん?(かばんを落とす音)
どないしたん!?
これ うちの布団!?うん。 何? 今更。
あ… はい。そやから そこの隙間をな 新聞紙で…。
ああ こんくらい 大した隙間やないですこのままで ええです。
ちょっとくらい風来た方が気持ちええさけ。
ああ… そう?はい。じゃあ。
ありがとうございます。
ごはん もらえるんや…。
布団も…。
うちの布団かあ。
うちの部屋かあ…。
うわ~い! うちだけの部屋!1人で使うてええんけ!?
うわ~い!
うれしい~!
・やった~!あんな子ども あきまへんわ。
任せられまへん。ええ~。
信楽に帰しまひょ!
うちだけの部屋。
こんなん初めてや!
うわ~…。(ふすまにぶつかる音)
(ちや子)うっ… うう…。 何?何!? はあ はあ…。
(ちや子)何?