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 急に先生が変わってびっくりしたね。ごめんね――。担任する児童らに宛てた長文のメッセージの内容が痛々しい。

 神戸市立東須磨小の教員間で暴力や嫌がらせが繰り返し行われていた。被害を受けた20代の教員4人のうち、体調を崩して休んでいる男性教員のケースがとりわけひどい。

 市教委によると、30~40代の男女の教員4人が加害行為を行っていた。ロール紙の芯で男性の尻をたたいたり、男性の車の上に乗ったりしたほか、性的なメッセージを同僚女性に送ることを強いた。辛い物が苦手な男性をはがいじめにして激辛カレーを食べさせた。嫌がる様子を撮った動画が残っている。

 市教委の調査に対し、加害教員の一部は「悪ふざけだった」と釈明したという。その認識に言葉を失う。人としてのモラルに反する行為を重ねながら、なんの罪悪感もなかったのか。

 事態にしっかり対応しなかった管理職の責任も大きい。

 被害男性は昨年、当時の校長に相談しようとしたが、校長は話を聞きもしなかった。加害教員の言動を見かねた他の教員が校長に伝えたものの、校長は個別の注意で済ませたという。

 今春、後任として教頭から昇任した現校長は状況を把握しながら、加害教員も反省しているとして口頭での対応にとどめ、市教委には「教職員間のトラブルを指導した」と報告しただけだった。ようやく事態が把握されたのは、被害男性の家族が市に相談した9月だった。

 市教委は、弁護士や教育の専門家ら第三者の協力を得て調査チームを発足させる。

 加害教員をめぐっては、男性への嫌がらせに児童を巻き込もうとしたり、児童に暴言をはいたりしたといった訴えも寄せられている。加害の詳細をはじめ校長らの対応、他の教員の認識のほか、問題を隠蔽(いんぺい)する意図や動きがなかったか、市教委が早期に関与できなかったかなど、解明すべき点は多い。

 加害側の4人は学校運営で中心的な立場にあり、発言力が強かったという。ものを言いにくい雰囲気の中で、経験の浅い若手への暴行が放置されてきたのではないか。問題の背景と構造に迫り、再発防止策づくりにつなげる検証が求められる。

 社会に大きな衝撃を与えた今回の問題で、忘れてならないのは子供たちへの配慮である。

 東須磨小の教職員は、一日も早く児童が安心して学校生活をおくれるように努め、市教委もそれを支援しなければならない。他の学校でも子供たちが動揺していないか目配りしつつ、日々の学校運営を改めて見つめ直してほしい。

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