台風19号、利根川における八ッ場ダムの洪水調節効果

 台風19号が関東地方を直撃し、各地で大きな被害が出ています。

 八ッ場ダムは10月1日に試験湛水を始めましたが、この台風による大雨で一気に水位が上がりました。国交省八ッ場ダム工事事務所のホームページを見ると、ほぼ満水に達しているように見えます。右画像=八ッ場ダム工事事務所ライブ映像
http://www.ktr.mlit.go.jp/yanba/yanba_livecamera01.html

 試験湛水で注目されていたこともあってか、ネット上では、八ッ場ダムの湛水のおかげで、利根川が氾濫しなくて済んだという言説が流布しているようです。

 確かに、「利根川の洪水調節」は八ッ場ダムの主目的の一つですが、ダムの治水効果はそれほど大きなものではありません。

 八ッ場ダムの反対運動に長年取り組んできた嶋津さんによるコメントを紹介させていただきます。
 現時点では、公表されている洪水のデータは限られていますので、言えることは限られていますが、国交省関東地方整備局の水位観測所のある利根川流域の群馬県伊勢崎市八斗島(やったじま)地点と埼玉県久喜市栗橋地点のデータをもとに作成されたグラフも以下に掲載します。

「八斗島と栗橋の水位変化(以下の図参照)を見ると、今回の洪水で利根川の水位が計画高水位(注)に近づきましたが、利根川本川は堤防の余裕高が2メートルあって、計画堤防高にはまだ十分な余裕がありました。
 したがって、今回の台風では、八ッ場ダムの洪水貯留がなく、水位が多少上がったとしても、利根川が氾濫することは考えられませんでした。

 また、国交省による八ッ場ダムの治水効果の計算結果(以下の図参照)で明らかなように、八ッ場ダムの治水効果は下流に行くほど減衰していきますので、今回の八ッ場ダムの洪水貯留がなくても、利根川の中流下流の水位がそれほど上昇しなかったと考えられます。」

注:河川の水位は、ダムなどの洪水調節施設をつくる計画により、一定程度下がることが想定されている。堤防を整備する際には、計画高水位まで川の水が流れても耐えうるよう設計することになっている。

〈参考〉用語解説 計画高水位、計画高水量

★2019年10月洪水 八斗島の水位

★2019年10月洪水 栗橋の水位

★国交省の計算による八ッ場ダムの治水効果