27話 突然の訪問者
布団を足元までめくって、ゆっくり起き上がる。頭がボーッとするな。寝過ぎか?今何時だ。
壁にかかっている時計を見ると、午前9時を過ぎていた。俺昨日何時に寝たっけ。9時前?てことは、12時間寝てんのか。うん。寝過ぎだ。
1階に降りて、洗面所に入る。着替えとかを済ませて出てくると、トイロが階段から降りてきた所だった。こいつが自分の部屋で寝るとか久しぶりな気がする。
「なんだよ変な顔して。」
「どの顔が言ってんの。」
「は?」
普段派手な格好してるくせに、上下黒のスウェットとかかなり変だと思うけど。まぁどうでもいいや。
テレビをつけて、べっこう飴の袋を開ける。寝過ぎだせいか腹減ってないし。飴をバリバリ噛み砕いて大量消費してたら、いつもの格好のトイロがリビングに入って来た。俺の手元に小山になった飴の包装紙を見て、「うわ」と声を漏らす。
「飴ってそんな一気に食うやつだっけ。」
「俺の場合ね。」
つまらないニュースを眺めながら答える。内容は全然頭に入って来ない。緑茶でも飲もうかな、と思った時。
ガチャリ、と玄関の鍵が開く音が聞こえてきた。その後に、扉が開かれる音。母さんは仕事に行ってるはずだし、父さんも仕事の関係でどっか行ってるんだっけ。どっちかが忘れ物でも取りに来たのかな。
深く考えずに飴の大量消費を続けていると、足音がリビングの前で止まった。チラリとその人物を見て、俺は一瞬硬直する。自分の目が僅かに見開かれるのが分かった。
「え......なんでいんの?」
俺と同じくらいの長さの白髪に、俺より青い目の少女。そいつは、
「会いたかったよお兄ちゃん!!!」
俺を床に叩きつける勢いで飛びついてくる。抱きついてるのかな。いやこれはどう考えても飛びつくだ。飴飲み込んでなかったら窒息死してたかも。
「何年ぶりだろうね!! 5年かな?」
「6年......どうやって帰って来たの。」
重い。この勢いのまま柔道の寝技かけられそう。
「お前、まさかのシスコン?」
おいおいふざけるなよ。
「俺がいつ妹いる素振り見せた。思い出してみろよ。」
「そう言われると全くねーな。」
「だろ。現に俺はこいつの名前を思い出せない。」
「ひでぇ兄貴だ。」
「
ああそうそうそんな名前。耳元で叫ばないでもらえるかな。
とりあえず俺の上からどいてもらって、莉乃亜に向き直る。
「で、お前はどうやって帰って来たの。ていうか、なんで帰って来たの。」
こいつは6年ほど前にまぁ色々あって、祖父母の家に送り込まれたはずだ。俺の記憶が正しければ、莉乃亜は俺の1つ下で、今は中高一貫の女子校に通ってたはず。
「お兄ちゃんと同じ高校行くため!!」
「なんでわざわざそんな。今の学校にいりゃ受験する必要ないだろ。」
「もう転校することになってるもん。」
そうだこいつはこんな奴だった。
「夜宵の妹なのに、髪白いって謎だな。」
違う。莉乃亜の白髪は生まれつきじゃない。元々は、父さんと同じ鈍いブロンズだった。
「......また脱色したの。」
「うん」
毛先をイジりながら笑顔で答える。色素が薄かったからなのか、最初の髪を見ていない奴が見たら、生まれつきの色だと思うだろう。
「お父さんと同じ髪の色なんて吐き気がするからね。お兄ちゃんと同じ黒が良かったけど、染めるのってなんか違うし。」
脱色はしといてそんなこと言うわけ。
「なんとなく今日帰って来てみたけど、ラッキーだった。お父さんもお母さんもいない上に、お兄ちゃんはいるんだもん。会いたくない人がいなくて、会いたい人がいるってすごい幸運。」
母さんが聞いたら泣きそうなことを笑顔で言う。ていうか、この状況かなりヤバいぞ。莉乃亜と両親のこれは、ただの思春期とか反抗期って問題じゃない。莉乃亜が祖父母の家に行った事で一旦落ち着いただけ。
今年俺厄年か何かかな。