今夏の甲子園の主役は静かに運命の日を待っている。中日などがドラフト1位候補に挙げる星稜高(石川)の奥川恭伸投手(18)は茨城国体の1回戦で智弁和歌山に敗れて、プロ志望届を提出。今夏が甲子園準優勝で終わった直後、「もう一回甲子園に立つ時はもっと大きくなった姿で戻ってきたい」と明かした時の思いは変わらない。
「野球が生活の一部となって生きていくのがプロの世界。とにかく勝ち星をたくさん挙げられる投手になりたい」。プロ志望届提出を表明した際にも「それなりの覚悟も必要」と語ったように、腹はしっかり据わった。
今夏の甲子園で最速154キロをマーク。そんな右腕の武器は周囲の声を素直に聞ける性格だ。林和成監督(44)は奥川が入学した時に「これはプロに行かせないといけない素材」と思い、多くの目標設定をしてきた。達成に向けての道のりではライバルや壁に直面した。しかし、奥川は「上には上がいる。自分はまだまだ…」と受け入れて黙々と努力を続けた。
そして、自らを誇らない。今夏の石川大会を制した時も、甲子園3回戦で智弁和歌山とのタイブレークに及んだ延長14回の熱闘を制した時も「負けた相手の分まで…」と涙を流した。自分の心にうそをつかないピュアな男の姿勢はプロと面談しても、ドラフトの日が直前になっても同じ。くじの行方に全てを委ねる。
「12球団に対するこだわりはないです。どの球団から指名されても行きます」。甲子園に4度出場した強運を持つ右腕は果たして、どの球団に進むことになるのかー。奥川は“その瞬間”が来るのをひたすら待つ。(川越亮太)
▼奥川恭伸(おくがわ・やすのぶ) 2001(平成13)年4月16日生まれ、石川県かほく市出身の18歳。183センチ、84キロ。右投げ右打ち。小学2年で野球を始め、石川・宇ノ気中3年の時に全国制覇。星稜高に進んだ後は1年春の北信越大会で公式戦初登板。甲子園は2年春のセンバツから4季連続で出場し、今夏の甲子園大会で準優勝した。高校日本代表には2年連続で選ばれ、今年はUー18W杯(韓国・機張)に出場した。