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林田力『東急不動産だまし売り裁判』二子玉川ライズ第二地区問題
お花見交流で見た二子玉川の環境破壊(1) 二子玉川ライズ タワー&レジデンス
多摩川暫定堤防の見直しを求めるお花見交流会開催=東京・世田谷
東京都世田谷区の住民団体・二子玉川東地区住民まちづくり協議会による住民意見交換会が2009年8月1日、玉川町会会館にて開催された。
協議会は2010年3月に事業認可が予定されている二子玉川東地区第一種市街地再開発事業(主に第2期工事)について周辺住民が自ら街づくりを考えて行政や事業者に提案することを目的として2009年7月に結成された。
協議会では住民の意見を集めることを目的として住民意見交換会を3回開催する。1回目は7月29日行われ、今回が2回目である。3回目は8月9日17時半から19時半まで玉川町会会館で開催される。曜日と時間帯を分けて開催することで、広汎な住民の意見を集約する。
この活動は早稲田大学卯月研究室(卯月盛夫教授)の協力により進められ、今回の意見交換会でも早稲田大学芸術学校の奥村玄氏らが出席した。奥村氏は「再開発は周辺住民に大きな影響を受けるが、これまで再開発計画に地権者以外の住民の意見が反映されることはほとんどなかった。協議会の試みは大きな挑戦であり、日本社会に求められていることでもなる。皆さんの願いをお手伝いしたい」と挨拶した。意見集約にはKJ法を活用した。住民は再開発への意見をポストイットに記入する。それを模造紙に貼り付けることで整理していった。
二子玉川東地区再開発事業は住環境を破壊するとして住民から反対運動が起き、再開発組合に対する事業差止訴訟や世田谷区に対する公金支出差止訴訟が裁判所に係属中であるが、第1期工事は進行中の状態である。一方で再開発地域の中央部に位置するII-a街区は具体化されていない。再開発地域の中心部分が具体化していないということ自体が再開発事業の無理を印象付けるが、そこに住民主導の計画を提言することが協議会の狙いである。
意見交換会の内容として注目すべきものを4点指摘する。
第1に高層ビルへの嫌悪である。大規模地権者の東急電鉄及び東急不動産の基本計画ではII-a街区に31階建て(約137m)のオフィスビルを建設することになっている。これに対し、意見交換会では高層ビル不要論が噴出した。
既に第1期工事での高層マンション「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」建設で日照・眺望の妨げ、風害(ビル風)、電波障害などの被害が顕在化した。加えてビルの反射光により、変なところから変な時間帯に光が照射されるという想定外の被害も明らかになった。そのため、駅から離れた場所に盛り土で公園を造ることを止めて、II-a街区を公園にすればいいとの意見も出された。営利施設を建設しても、これからの経済情勢では採算は困難であり、建物を建てない方が経済面でも合理的と主張された。
第2に住民への情報公開が不足する再開発事業への不信感である。I-b街区の商業棟は元々8階建てと説明されていた。それがいつの間にか16階建てとなり、階数が倍増してしまった。この変遷は東急電鉄・東急不動産の基本計画から確認できる。このような不誠実な説明が横行している状態に「おかしい」との声があがった。
第3に住民無視で行われる建設工事である。二子玉川は町中が工事現場になり、工事現場の中を道路が通っているような感がある。工事の都合で道路が突然、通行止めになり、住民は毎週のようにルートを変えなくてはならない。夜間、自転車で走っていて通行止めのバーに衝突した人もいる。
ここでは住民に事前に周知するという姿勢が施工会社や再開発組合に欠けていることが槍玉に挙げられた。工事担当者に意見を言った住民もいるが、工事の進行によって刻々と変わるから掲示板を出せないと開き直られたという。会場の玉川町会会館の道路も「七月三〇日この道路封鎖」の看板が8月1日時点でも残っており、紛らわしい状態である(写真参照)。
この工事の問題は多くの住民が不満に思っており、一人が発言すると堰を切ったように発言が続いた。自分の感覚が過敏なのではなく、皆が我慢を強いられていると確認できたことは意見交換会の大きな成果である。
第4に住民のバランス感覚の良さである。税金を投入する再開発で営利施設(ホテルやオフィスビル)を建設することに疑問が呈された。そのため、図書館などの公共施設が要望されたが、一方で「公共施設が入居した場合、税金で賃料を支払うのか」との意見も出された。
他所の再開発事業では主要テナントの撤退の穴埋めとして公共施設を押し込むことで破綻を回避した例がある(NPO法人区画整理・再開発対策全国会議『区画整理・再開発の破綻』自治体研究社、2001年、98頁)。住民にとって図書館が歓迎できるとしても、区の財政や図書館整備計画と整合するかは検討しなければならない。再開発事業とは無関係に再開発地域外で図書館を建設することもでき、その方が安上がりということも考えられる。その意味で利便施設を求めるだけではなく、その維持コストにも目配りする意見が出たことは貴重である。
意見交換会で浮かび上がったことは、大規模地権者の東急グループの営利目的の開発と住民の快適な生活の衝突である。現在の二子玉川は工事だらけで魅力的な町とはお世辞にも言えない。住民本位のまちづくりを進められるか、地域の力が試されている。
二子玉川住民意見交換会開催8/9
【転送・転載歓迎】二子玉川東地区まちづくり協議会からの転送です。
二子玉川東地区まちづくり協議会では第3回住民意見交換会を2009年8月9日17:30-19:30まで玉川町会会館(東京都世田谷区玉川)で開催します。
二子玉川では大規模地権者の東急電鉄・東急不動産の営利優先の二子玉川東地区第1期再開発工事が進行し、地域住民の住環境が破壊されています。その上に第2期工事の計画まで予定されています。
今年度中に予定されている事業計画作成の前に住民自らが自分達の住む街のあり方を話し合い、要望としてまとめることで事業者(再開発組合)や行政に提案していきます。昔からの良好な住環境を維持できるまちづくりを目指す行動が必要です。積極的な御参加をお待ちしております。
http://hayariki.seesaa.net/article/124909942.html
東京都世田谷区の住民団体「二子玉川東地区住民まちづくり協議会」(飯泉善一郎会長)が2009年10月24日に「住民提案お披露目&意見交換会」を玉川町会会館で開催した。
協議会は二子玉川東地区第1種市街地再開発事業(主に第2期工事)に住民の声を反映させることを目的として結成された団体である。今回は7月から8月にかけて開催した意見交換会で出された住民意見を踏まえた提案を披露し、改めて住民の意見を集めた。住民提案は協議会に協力する卯月盛夫・早稲田大学芸術学校教授が説明した。
最初に卯月教授は意見交換会で出された住民意見を整理した。現状の再開発の問題は以下の7点になる。
第1に事業者(再開発組合)の説明不足である。説明や告知がほとんどなく、回答も不親切極まりない。
第2に高層ビルの悪影響である。建築中の二子玉川ライズ タワー&レジデンスにより既に日照、電波、プライバシー、ビルの照り返し、景観、通風の問題が生じている。これ以上、高層ビルが増えれば住民の被害は一層増大してしまう。
第3に水害の懸念である。再開発地域の人工地盤と盛り土で雨水がせき止められ、周辺地域が水浸しになりかねない。
第4に渋滞の激化である。既に駅も道路もパンク寸前である。
第5に都市計画公園への疑問である。公園を駅から最も離れた場所に移動する合理性がない。
第6に現状の再開発は二子玉川らしさを壊している。富士山、桜、花火、多摩川、崖線(坂道)など、水と緑と景観を大切にすることが二子玉川スタイルである。
第7に公共施設の少なさである。二子玉川は福祉と文化の谷間であり、住民の暮らしに役立つ公共施設を希望する。
住民提案では、これらの意見を踏まえ、5つのコンセプトを打ち出した。高さ、ボリューム配置、用途構成、自然環境、安全安心である。
高さでは二子玉川の魅力である多摩川の水辺、及び国分寺崖線の緑の連なり、水平的な連続空間を断ち切らないため、計画敷地内の建物の高さを国分寺崖線の高さ25m以下に制限する。
ボリューム配置では周辺住宅地の魅力を損なわず、調和させるために、建物のボリュームをできるだけ小さくして分散配置する。大きな建物を集中して配置するのではなく、ヒューマンな雰囲気とする。
用途構成では玉川地域の新たな生活文化拠点とするため、商業業務施設に特化せず、芸術文化施設や福祉保健施設を充実する。また、多世代で多様な区民が暮らせる街にする。
自然環境では高層ビルの足元を彩る人工的な緑ではなく、多摩川の水辺から吹き渡る風を感じながら、土や緑に触れることのできる二子玉川らしい暮らしと自然の共存する姿を追求する。
安全安心では自動車交通の過度の集中と水害に対する不安を取り除き、安全と安心を確保するため、分散を前提とした交通マネジメントを行う。また、雨水浸透率を向上させ、計画敷地内で周辺地域の治水にも貢献する。
この上で卯月教授は住民提案の具体的な内容を模型と共に披露した。まず比較のために東急電鉄・東急不動産が2008年12月に出した第2期事業基本計画を説明する。ここでは再開発地域II-a街区には約137mの超高層ビルが立ち、それ以外の敷地のほとんどを約30~20mのビルが覆う。建物の用途はオフィス・ホテル・商業施設である。
このII-a街区は容積率200%、建ぺい率60%と定められていた。ところが容積率520%、建ぺい率80%に変更されたために東急案が可能になった。高層ビルを建てる場合は通常、空き地を広く取るため、容積率は高くても建ぺい率は少なくする。このため、建ぺい率が80%という高い値に変更されたことを卯月教授は疑問視した。住民からも「このような勝手が通っていいのか」との声が出た。
住民提案はA案とB案の2パターンを用意した。A案はII-a街区に公共施設(図書館、多目的ホール)、商店、オフィス、住居、緑地を配置する。東急案と異なり、建物の規模を小さくし、分散させた。これによって様々な機能が適度に混在するミックス・コミュニティを実現する。
B案ではII-a街区に都市計画公園を充てる。II-a街区の建物は公共施設と3棟ほどの商業施設(レストランなど)だけで、残りは緑地とする。II-a街区を公園としたため、公園予定地の西半分をIV街区として住宅とする。
住民の反応はB案への支持が圧倒的であった。そのB案に対しても、これ以上の住宅は不要との意見が出された。また、高さ制限の25m以下については反論が出た。風致地区であった二子玉川の歴史を踏まえると25mでも高過ぎ、第2種風致地区の制限である15m以下とすべきとする。この点は再検討することになった。協議会では住民提案を確定後に世田谷区や事業者に説明する方針である。住民の声が街づくりに活かされるか、二子玉川の取り組みが注目される。
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東急案を基づいて作成した模型。II-a街区には巨大な超高層ビルが塞がり、敷地のほとんどが30m程度の建物で覆われる。
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住民提案B案の模型。
二子玉川東第2地区第一種市街地再開発事業(第2期事業)の事業計画の縦覧が2010年1月7日から開始された。第2地区は東京都世田谷区玉川の二子玉川東地区再開発地域の中央部分に位置するが、2005年の二子玉川東地区第一種市街地再開発事業(第1期事業)の事業計画認可に際して、社会・経済情勢から白紙になっていた。
第1期事業では住環境破壊などを理由に住民から訴訟や反対運動が起きているが、第2期事業に対しては住民団体「二子玉川東地区住民まちづくり協議会」(飯泉善一郎会長)が住民参加の街づくりを目指し、水と緑と景観を重視する住民案を作成した(「二子玉川東地区住民まちづくり協議会が住民提案を披露」)。その上で約1000筆の署名を集め、「二子玉川東地区第一種市街地再開発事業第2期事業基本計画等について、住民、行政、事業者で協議する場を設ける事に関する陳情」を世田谷区議会議長に提出した。
ところが東急グループを中心とする再開発準備組合は2009年11月18日に事業計画の認可申請を世田谷区に提出し、区は11月24日に東京都に進達した。事業計画の認可権者は都知事であり、認可申請前の事前調整の段階から、認可申請を審査する都に主戦場が移行したことになる。
都にあっさりと進達した区への失望と批判の声が住民から出たものの、住民まちづくり協議会は情勢の変化に即応した。区議会への陳情を取り下げ、住民まちづくり協議会会長・にこたまの環境を守る会事務局長・二子玉川の環境と安全を取り戻す会代表の連名で「二子玉川東第2地区第一種市街地再開発事業に関する陳情」(2009年12月15日付)を東京都議会議長に提出した。ここでは事業認可申請の審査にあたり、住民の意見を十分に聞くように事業者を指導すること及び住民と事業者が話し合う場を調整するように世田谷区へ働きかけることを求めた。
にこたまの環境を守る会は第一期事業の反対運動や裁判を支援する団体であり、二子玉川の環境と安全を取り戻す会は玉川一丁目の大規模堤防計画の見直しを求める団体である。二子玉川の住環境の問題に取り組む3団体が団結することで、広範な住民意見を背景にしていることをアピールした。
一方、認可申請を受けて世田谷区では事業計画の縦覧を開始した。縦覧期間は1月7日から21日まで(土・日曜、祝日を除く)の午前9時から午後5時までである。縦覧に供された事業計画に対しては2月4日までに意見書を提出することができる(都市再開発法第16条第2項)。
事業計画によると、人工地盤の上に地下2階、地上31階、搭屋1階建て、高さ137mの超高層ビルが建てられる。敷地面積28083平米に対し、建築面積は22466平米で、建ぺい率80%を目一杯使用する。ビルの用途はオフィス、シネコン、フィットネスクラブ、ホテルなど営利性の強いものばかりである。
住民まちづくり協議会では1月9日に玉川町会会館で集会を開催し、区議会に提出した陳情の取り下げなどの経緯を説明し、今後の対応を話し合った。既に縦覧を見に行った住民も多かったが、一様に縦覧の不親切さを指摘した。具体的な指摘内容は以下の通りである。
・世田谷区の広報誌(2009年12月15日号)に縦覧の案内が掲載されたが、縦覧場所には区拠点整備第二課しか掲載されていない。実際には準備組合事務所でも縦覧されている。再開発で最も影響を受ける周辺住民にとっては区役所よりも、再開発地域内にある準備組合事務所の方が行きやすい。
・午前9時半に準備組合事務所に行ったが、門が閉まっており、入れなかった。
・平日夜間や休日にも縦覧をしなければ勤め人は見に行くことができない。特に土曜日は第1期事業の工事を行っており、対応は可能な筈である。
・資料を見ている間、係員にじっと見つめられており、気分が良いものではない。
「縦覧の手続をコソコソしている」「住民に見に来てもらいたくないのではないか」との感想が出され、分からない点は積極的に「これは何ですか」と質問しようと確認し合った。最後に飯泉会長が「多くの力を合わせて、意見を出し、良い街づくりをしていこう」と呼びかけ、集会は幕を閉じた。
東京都世田谷区の住民団体「二子玉川東地区まちづくり協議会」(飯泉善一郎会長)が2010年3月13日に玉川町会会館にて集会を開催し、東京都議会に提出していた陳情の審査結果を報告した。
協議会は二子玉川東地区第1種市街地再開発事業(主に第2期事業)に住民の声を反映させることを目的として結成された団体である。協議会会長・にこたまの環境を守る会事務局長・二子玉川の環境と安全を取り戻す会代表の連名で1138筆の署名を集めて「二子玉川東第2地区第一種市街地再開発事業に関する陳情」(2009年12月15日付)を都議会に提出した。陳情内容は第2期事業の事業認可の審査にあたり、再開発組合が住民の意見を十分聞くように事業者を指導すること、住民と再開発組合が話し合う場を調整するように世田谷区に働きかけることの2点である。
2010年2月22日に都議会都市整備委員会で陳情が審査され、継続審査となった。自民党と公明党の2会派が継続審査を主張したためである。一方、委員会で行われた栗下善行議員(民主党)と大島よしえ議員(日本共産党)の質問によって二子玉川再開発の問題が改めて浮き彫りになった。
栗下議員は再開発に対する周辺住民の生活環境への影響が大きいと指摘した。2005年の第1期事業の事業計画認可時も多数の反対意見が意見書として提出されたが、取り上げられずに住民は納得していないとする。住環境の悪化に加え、多額の税金投入にも反対意見が強い。
石川進・民間開発担当部長は再開発で使われる税金の内訳を答弁した。それによると補助金は国202億円、都6億円、世田谷区167億円の計375億円で、これに公園・道路の整備費用が加わり、トータルで700億円になる。二子玉川再開発が世田谷区だけでなく、都民・国民にとっても利害関係のある問題である。
石川部長は再開発組合に話し合いを働きかけたと答弁したが、栗下議員は「形式的な働きかけを行っても住民は納得していないから今回の陳情となった」と批判する。住民は説明だけでなく、計画の変更を求めており、都職員は権限の許される範囲内で都の株主である住民のためにベストを尽くす姿勢を忘れないで欲しいと注文した。
大島議員は「現地を見たが、水とみどりのまちとは異質なものになっている」と指摘した。その上で第2期事業計画案に対する意見書の内容説明を求めた。答弁によると、199通の意見書が提出された。
賛成意見は僅か8通(ホテルや映画館などを期待)で、残りの191通は反対意見である。日影被害、風害、景観の喪失、環境悪化、道路・鉄道の混雑激化、税金投入などを理由として、事業計画の抜本的見直しを求めた。この答弁を受け、大島議員は「住民の意見の価値、重みを受け止めるべき」と注文した。
都議会では2009年の都議選によって民主党が第一党になり、自民党・公明党が過半数割れした。この状況から協議会では陳情採択に期待を抱いていたために、継続審査という結果には失望を隠せなかった。一方で民間施行の再開発事業は再開発組合対住民という民間対民間の問題として政治は一方に肩入れすべきではないという意識が依然として根強い中で、都議会で再開発の問題点が具体的に議論されたことは変化である。
石川部長は「今後も区と再開発組合に住民と話し合うように指導する」「199通の意見書をしっかり審査する」と答弁した。この答弁を言葉だけで終わらせず、住民の意見を街づくりに反映させるために、協議会では今後の主張で活用していくことを確認した。
東京都世田谷区の二子玉川では二子玉川東地区再開発に対する住民運動が活発化している。再開発差し止め訴訟や世田谷区の公金支出差し止め訴訟を支援する「にこたまの環境を守る会」や住民参加の街づくりを目指す「二子玉川東地区住民まちづくり協議会」の活動は既に先行記事で紹介したことがある。
本記事では未着工の第2地区を「風と緑のあるエコタウン」とすることを目指す「玉川にエコタウンを作る会」(トシコ・スチュワート代表)を紹介する。
東急グループを中心とする再開発準備組合の計画案(第2期計画案)に依ると、二子玉川駅を出たらオフィスビルをはじめとする高層ビル群が目に入ることになる。これに対し、エコタウンを作る会では二子玉川らしさのある緑に溢れ、自然に負担をかけない次世代に残せる低層の街作りを訴えている。オープンカフェや小ホールそして図書館等のある緑の空間にテラスハウスを配した、コンクリートのビル群ではなく風の道を確保し、環境負荷を軽減した街作り構想である。
エコタウンを作る会は2009年7月に結成された。同じく第2地区を対象に住民主体の街づくりを目指す「まちづくり協議会」と別団体にして結成した理由は、今迄にない提案型の住民運動を目指していることである。つまりは自分たちの街作りとしてのコンセプトを示し、賛同者を募りパワーとする考え方だ。複数の団体がそれぞれ活動することで、住民運動の裾野が広がり、再開発問題自体の認知度が上がるという効果もある。「まちづくり協議会」ら他の住民運動とも情報交換しながら独自に活動している。
エコタウンを作る会では最初に住民向けにアンケートを実施したところ、エコタウン構想に圧倒的な賛同を得られた。アンケートは2009年9月に1ヶ月間実施し、回答数200強のうち、反対意見は僅か2名であった。
最近の二子玉川では昼間、若い母親層が子どもと高島屋に遊びに来ているのが目に付く傾向にある。しかしデパートしか行く場所がない状態は親子共々不幸だと思う。そのような親子連れにショッピングにプラスして提供したい場所がエコタウンである。
第2期計画案では巨大なオフィスビルが中心であり、親子連れの居場所もない。たとえシネコンのような娯楽施設を作ったとしても、高層ビル群では空がなく、息が詰まる。エコタウンでは映画館もミニシアターで低層棟に入れ、空を確保し、憩いの場所を作る。このエコタウン構想は次世代の親子が楽しめる場所であると共に、シニア世代も呼び込め少子高齢化という日本社会の課題にも対応できるものである。
第2期計画案は、第1期再開発事業で建設中の高層マンション「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」に入居する住民にとってもデメリットである。マンションから駅までの間にコンクリートで固められたオフィス中心の高層ビルが立ち塞がることになる。これに対してエコタウンならば従来からの住民にも高層マンションに入居する新住民にも共に心地よい出会いの場を提供できる。
エコタウンを作る会が第2地区を低層建築物中心にすべきだと主張する背景には、東急田園都市線の混雑・遅延状況がある。この数年、田園都市線沿線では数多くの高層マンションが建設され、人口が膨れ上がっているため、ダイヤ通りに電車が動いていない。この上に二子玉川に巨大ビルができたら、爆発的な人口が二子玉川に集中するため、田園都市線及び同じく二子玉川駅を通る大井町線はラッシュ時には危険なほどパンク状態に陥るであろう。その将来的不安を避けるために人口を抑える事が大切だ。
エコタウンを作る会では結成当初から世田谷区や東京都、区議会議員、都議会議員、準備組合、東急電鉄などに直接訴えてきた。スチュワート代表は、エコタウン構想に賛同する議員等も少なくないと語る。世田谷区は都市計画法を盾に再開発推進の姿勢を変えていないが、これからも将来を見据えて働きかけて行きたい。それには住民パワーを集め、二子玉川が好きで訪れる人々等に会の認知度をアップさせて行くことが次の運動となる。そして将来的にはエコタウンを作る会を、玉川に緑の豊かな環境を維持する運動に繋げて行きたいと考えていると話す。
東京都世田谷区の二子玉川地域の住民団体が共同で2010年6月27日に玉川町会会館(二子玉川ライズ・バーズモール2階)で住民集会を開催した。二子玉川東地区住民まちづくり協議会、にこたまの環境を守る会、二子玉川の環境と安全を取り戻す会、二子玉川公園と道路を間う会など8団体の共催である。
二子玉川東第二地区第一種市街地再開発事業では多数の住民が反対の意見書を提出し、口頭意見陳述を行ったが、口頭意見陳述終了後僅か一ヶ月後に意見書不採択が通知された(林田力「二子玉川第二地区再開発への意見書採択結果通知」PJニュース2010年6月23日)。
http://news.livedoor.com/article/detail/4843071/
不採択通知内容を住民間で共有し、今後の行動につなげることが住民集会の目的である。最初に形式的な通知に対して憤りが表明された。東京都都市整備局市街地整備部の風間初美・民間開発課長は住民の口頭意見陳述に何度も頷いていた。あの頷きは何だったのか、と怒りの発言がなされた。
また、意見書提出者宛の通知文がほとんど同一であることも問題視された。そこでは都市計画決定など意見書や口頭意見陳述よりも前に行われた手続きを持ち出している。現段階で都知事が一人一人の意見に対し、どのように考え、どのように対処したのかという審査内容が示されていなかった。
意見書提出者の中には具体的な質問をした人もいた。それに対する都の回答も粗末であった。まず質問に対して回答していないものもある。回答があるものも、第二地区再開発準備組合や世田谷区などに「問い合わせ下さい」と、たらい回しにするものがほとんどであった。
以下、住民から意見書・陳述内容や東京都の対応その他の問題について説明された。
第一に意見書採択基準である。「どのような場合に意見書を採択するのか」との質問には都市再開発法第17条の「認可の基準」によるとの回答であった。しかし、第17条は抵触していたならば認可できない最低基準であって、より良い街づくりのために意見書を採択するかの基準とすることは、すり替えである。
第二に道路問題である。駒沢通りや多摩堤通りなど渋滞の緩和にはなっていない。再開発工事をやるための道路の整備にしか見えない。地域内の車両通行状況など様々な質問をしたが、返事は一括でなされ、「再開発準備組合に問い合わせよ」というものであった。
第三に二子玉川公園問題である。東急自動車学校解体工事の協定書締結協議は前進していない。事業主の学校法人五島育英会が捺印しようとしないためである。施工業者の東急建設も担当支店が二子開発建設事務所であることさえ住民には中々明らかにしようとはしなかった。東急側の頑迷さは仲介に入った世田谷区の担当者が呆れるくらいであった。
第四に再開発の事業遂行能力への疑問である。高層ビルを林立させる時代遅れの大規模再開発は失敗する。これは多くの住民が予想するところである。口頭意見陳述では再開発の失敗事例を持っていった住民がいる。
二子玉川東地区再開発が失敗したら、誰が責任をとるのかと質問したが、再開発組合との回答であった。再開発組合は再開発が完了したら解散してしまう。後は野となれ山となれの無責任状態になる。また、「東急に再開発を成功させるだけの能力があるのか」と質問には、「心配しなくてもテナントは入る」との回答であった。何を根拠にしているのか、無責任ぶりに驚いた。
別の住民は「東急電鉄が責任をもって再開発を担うことができる会社か」と問題提起した。東急電鉄の財務基盤は脆弱である。東急電鉄の有利子負債は一兆円を超過する。普通の会社ならば、二子玉川再開発のような大規模開発はできない。文字通り補助金あっての再開発である。補助金を出す側の世田谷区も財政は厳しい。二子玉川ライズは展望なき計画である。税金の使い方を徹底的に勉強する。誰でも事実を知れば、このようなことに何故、税金を使うのかと思う筈である。
第五に二子玉川ライズの人工地盤である。人工地盤は周辺住民を拒絶し、圧迫する壁として批判されている。この人工地盤に登った住民がいる。人工地盤の上から眺めると、二子玉川の街が大変なことになっていると実感できたとする。
第六に多摩川暫定堤防問題である。現在は見苦しい土のうが積み上げられた状態である。住民は個別の開発問題で異なる事情を抱えている。そこを行政や東急グループに突かれて、いいようにやられている。
第七に外環道(東京外かく環状道路)との関係である。外環道と二子玉川ライズは不整合を起こしている。東名以南が延びるとすれば第一に想定される場所は二子玉川である。喜多見ジャンクションの本線設計は二子玉川を向いている。まっすぐ進めば二子玉川ライズになる。こうなったら最早街ではない。国は余計なことをすべきではない。郷土の自然や景色を残すことが大切である。
意見書採択結果に対しては行政のポーズ作りに利用されたとの不満が上がった。東京都は準備組合や世田谷区に回答をたらい回しにしており、当事者能力のなさをさらけ出した。それにも関わらず、許認可権限があるところが矛盾する。日本の政治は腐っている。
一方で住民運動の広がりには期待の声が出た。かつて住民団体は「二子玉川東地区再開発を考える会」一つだけであったが、今は運動が広がっている。多くの住民団体が結集し、多数の住民・専門家から意見が出された。このため、東京都はまともに立ち向かったら大変なことになると考え、形式的な回答で逃げたのではないか、との分析も提示された。
再開発組合や世田谷区を相手とする裁判の代理人を務める淵脇みどり弁護士は「住民の取り組みは画期的」とコメントした。住民が街づくりを提案できる力があることを東京都にアピールできた。住民の連帯のベースができたことは大きな前進と評する。
これからの住民運動についても様々な意見が出された。この先どうするかが一番大事である。知りたいことは沢山あるから、フランクに話をする場所を作る。シンパシーが重要である。些々たる法律論を語るつもりはない。最終的に力になるのは住民である。政党も住民運動を値踏みしている。住民運動が盛り上がれば、行政は引く。今は行動の時であり、外に向かって発信しなければならない。
東京都は2010年6月29日、二子玉川東第二地区市街地再開発組合の設立を認可すると発表した。地域住民らによる度重なる審査基準明確化・実質審査の要請を無視したスピード認可であり、住民は激しく反発する。
二子玉川東第二地区再開発事業計画案(第二期事業)に対しては199件の意見書が提出され、そのうちの191件が反対意見であった。また、住民131人と専門家の補佐人9人が反対の口頭意見陳述を行った。それらの意見では再開発事業がもたらす様々な権利侵害を具体的に述べ、実質的な公共性の欠如を指摘した。
現在進行中の再開発一期事業(二子玉川ライズ)でも広域生活拠点形成の名目によって、住民の健康や生活が切り捨てられている。4月28日に開業した再開発ビル「二子玉川ライズ バーズモール」には空室が広がる。その上で住民と専門家の知見を取り入れた事業の進め方と現行制度の中で可能な解決策・代替案を示し、豊富な証拠物件も提出して、論証した。
東京都都市整備局市街地整備部民間開発課によると、審査のために意見を整理した文書は、400頁を超過するという。ところが、口頭意見陳述終了から僅か1ヵ月後の6月25日付で意見書不採択の通知が送付された(林田力「二子玉川第二地区再開発への意見書採択結果通知」PJニュース2010年6月23日)。
http://news.livedoor.com/article/detail/4843071/
住民団体・二子玉川東地区住民まちづくり協議会などが調査した限りでは、驚いたことに全ての意見書提出者に同一の文言が送付された。東京都情報公開条例に基づき開示された文書から、東京都都市整備局では回答文の雛形を作成しており、氏名だけを個別に入れていることが判明した。
そこには都知事が意見書提出者一人一人の意見をどのように判断し、どのように対処するかという審査の過程や結果は示されていない。しかも、民間開発課長名文書で「審査結果」について記載してあるのは全て、意見書提出と口頭意見陳述よりも以前に取られていた手続きに関する内容だけであった。
もともと東京都は審査にあたって、住民の意見を十分に聞くとの態度を表明していた。2010年2月22日の都議会都市整備委員会でも、石川進・民間開発担当部長が「199通の意見書をしっかり審査する」と答弁していた。
加えて意見書を提出した住民側は淵脇みどり弁護士を代理人として、審査基準の明確化などを東京都に要求していた。淵脇弁護士によると、最初は都の担当者も面会に応じていたが、口頭意見陳述開始後は審査で忙しいことを理由に先延ばしにされた。そして審査基準について回答がなされる前に意見書不採択の通知が送付された。
この結果に対し、淵脇弁護士は「こちらの返事がないのに不採択通知を出したのは、どういうことか」と抗議した。ところが、東京都側は不採択となった以上、今更話すことはあるのかと開き直ったという。淵脇弁護士は「それは人間としておかしい」と改めて抗議した。
世田谷区玉川地域の住民も2010年6月28日に石原慎太郎・東京都知事に連名で抗議した。抗議文には「二子玉川東地区住民まちづくり協議会」会長、「にこたまの環境を守る会」事務局長、「二子玉川の環境と安全を取り戻す会」会長、「玉川1丁目の住環境を守る会」会長、「二子玉川公園と道路を問う会」共同代表、「玉川にエコタウンを作る会」代表ら多くの住民団体代表が名前を連ねた。
抗議文では二子玉川ライズ(第一期事業)による住民被害が拡大し、それが第二期事業で増幅することは明白であるとする。それにもかかわらず、都知事名通知と課長名文書だけで、意見が全て「不採択」とされたことは全く理解、納得できないとし、強く抗議している。記載されている限りの不採択理由は、到底受け入れられないという。
その上で抗議文では以下5点の説明を要求する。
第一に意見書提出者一人一人の意見をどのように審査したのか、具体的な説明を求めた。今回の意見書提出と口頭陳述は、住民が意見を表明する極めて重要な手続きである。都知事が審査庁として、それらの意見をどのように聞き、どのように判断、対処するかについて明確にしないままで、認可することは認められない。
第二に数多く提出された質問に対して、その一部についてだけ、民間開発課長名の「回答」が送られてきた。「回答」されていない質問に対して、直ちに回答することを求めた。回答できない場合は、その理由説明を求めた。
第三に既に送られてきた「回答」もほとんど、都がどのように考え、対処するかではなく、二子玉川東第二地区再開発準備組合や世田谷区に「問合わせ下さい」というものであった。これはどういうことか、明確な説明を求めた。
第四に都知事名通知には、「都市再開発法第16条第3項の規定により内容を審査した」と当然の記載がある。しかし、上述のような状況である以上、どのような基準で審査したのかについて、具体的な説明を求めた。
第五に質問への「回答」のなかには、「意見書を採択すべきであると認める場合は、都市再開発法第17条の認可基準に該当する場合となります」というものがあった。これについて説明を求めた。第17条は抵触していたならば認可できない最低基準であって、より良い街づくりのための意見書の採択基準とすることは、すり替えであると住民側は考えている。
加えて抗議文では東京都が世田谷区と連携し再開発(準備)組合と住民との話し合いの場を設けることを要求した。上記2月22日の都議会都市整備委員会での答弁「今後も都が世田谷区と連携し、組合が周辺住民等と話し合いを行うよう調整してまいります」の具体的な実行を迫る。
意見書及び口頭意見陳述に対する「回答」には以下の内容もあった。「再開発組合及び再開発準備組合は、今後とも地元の要請に応じて話合いを行っていくこととしており、都は世田谷区と連携し話合いを行うよう指導していきます。」
また、情報公開での開示文書から風間初美・都民間開発課長から世田谷区生活拠点整備担当部拠点整備第二課宛てに以下内容の文書が送付されたことも判明している。「貴区におかれましても再開発事業の関係権利者、関連事業の関係権利者及び周辺住民の理解、協力が得られますよう、ご尽力をお願いします。」
これらの公式態度表明を東京都は実行し、世田谷区と連携して、再開発組合及び再開発準備組合と住民が同席して話し合う場を設けることを求めた。その場に都、区の担当者が同席して責任を果たすことは当然であると主張する。
抗議文では多くの住民団体の代表が名前を連ねていることが特徴である。街づくりへの参加を渇望する新たな勢力が結集しつつあることを予感させる。再開発工事で進行する街壊しを容認できない熱血漢が続々と生まれている。政治意識の低さから、改革の意欲にも進取の気象にも乏しく、秩序に寄せる偏愛と保守の発想ばかりが強い人々によって担われてきた街づくりを変えていかなければならない。
東京都は二子玉川東第二地区再開発事業計画案への意見書審査に対する住民からの抗議文(2010年6月27日付)に対し、7月5日付で回答書を提示した。二子玉川周辺地域の住民らは6月28日に東京都に住民・専門家の意見を全て不採択にした審査に抗議した。その上で、どのように審査したのか明確な説明責任を果たすこと、再開発(準備)組合と住民との話し合いの場を設けることを要求した(林田力「二子玉川東第二地区再開発組合設立認可に抗議(下) 」PJニュース2010年7月8日)。
http://www.pjnews.net/news/794/20100705_6
回答書は都市整備局市街地整備部民間開発課の風間初美課長名義で、以下の簡単な内容であった。
「意見書及び口頭意見陳述については、都市再開発法第16条第3項の規定により内容を審査し、その結果を平成22年6月16日付け22都市整民第155号で回答しております。
質問書については、平成22年6月16日付け22都市整民第160号で回答したとおりです。
なお、世田谷区及び再開発組合、再開発準備組合に対して質問への対応を申し伝えてあります。
意見害については、都市再開発法第17条の認可の基準及び国土交通省令に基づき審査しており、認可基準に適合しない場合、事業計画に必要な修正を命じることとなります。
東京都は引き続き世日谷区と連携し、組合が地元の要請に応じて話合いを行うよう働きかけをしていきます。」
これは住民の問題意識に全く応えていないものであった。最初に「意見書及び口頭意見陳述については、都市再開発法第16条第3項の規定により内容を審査」とあるが、都市再開発法第16条第3項は意見書を審査することを規定しただけである。どのように意見書を審査するかという審査基準については言及していない。そして住民が求めていたものは意見書の具体的な審査基準である。
後半では「認可基準に適合しない場合、事業計画に必要な修正を命じる」とある。これは裏返せば認可基準に適合しなければ修正を命じないことになる。これでは東京都は単に事業計画案が認可基準に適合するか否かを判断するだけで終わり、より良い街づくりのために広く意見書を受け付けた意味がなくなる。それは意見書の審査を定めた都市再開発法の趣旨を没却する。
また、抗議文では住民からの質問に未回答のものがあると指摘したが、回答書では無視された。さらに抗議文では東京都が住民からの質問に回答せず、世田谷区や再開発準備組合にたらい回しにした理由も尋ねたが、これも無視された。住民側は反発し、6月8日に改めて都庁で抗議した。
回答書は「引き続き世日谷区と連携し、組合が地元の要請に応じて話合いを行うよう働きかけをしていきます」で締めくくる。都は2月22日に都議会で「世田谷区と連携し、組合が周辺住民等と話し合いを行うよう調整してまいります」と答弁した。それから4ヶ月以上が経過した。都の働きかけにも関わらず、未だに組合が地域住民と話し合いに応じていないことになる。
地域社会に大きな影響を及ぼす再開発を進める立場の組合が行政の働きかけをも無視して、地域住民との話し合いを頑なに拒み続ける。これだけでも二子玉川東第二地区市街地再開発組合が再開発事業を遂行するために必要な能力が十分でないこと(都市再開発法第17条第4号)の裏付けになると考える。
東京都世田谷区の二子玉川地域で街づくりを考える住民団体が集まった「二子玉川の環境を守ろう お花見交流会」が2010年3月27日に多摩川の土手(多摩堤通り脇)で開催された。
以下の団体をはじめとする多くの住民団体の会員が交流した。
・にこたまの環境を守る会:二子玉川東地区第1種市街地再開発事業差し止め訴訟や再開発への公金支出差し止めの住民訴訟を支援する
・二子玉川東地区住民まちづくり協議会:二子玉川東第二地区第一種市街地再開発事業に住民の声を反映させることを目指す
・二子玉川の環境と安全を取り戻す会:多摩川の堤防建設の見直しを求める
・玉川にエコタウンを作る会:再開発地域(II-a街区)を「風と緑のあるエコタウン」にすることを目指す
会場となった多摩堤通り脇の土手は再開発で町中が工事現場となってしまった二子玉川の異様さが実感できる場所である。土手には桜の木が並び、お花見スポットであったが、道路の拡幅で道路側の枝が切られてしまった(写真参照)。また、多摩堤通りは慢性的な渋滞状態であり、再開発による人口集中で渋滞の一層の悪化が懸念される。その奥には盛り土がされ、小山のような都市計画公園が周辺住民を拒絶するようにそびえている。
交流会では多くの住民運動関係者が各々の運動について説明した。二子玉川東地区住民まちづくり協議会の飯泉善一郎会長は都議会に提出した陳情(「二子玉川東第2地区第一種市街地再開発事業に関する陳情」)など、二子玉川東第二地区第一種市街地再開発事業をめぐる状況を説明した。
差し止め訴訟や住民訴訟の住民側訴訟代理人である淵脇みどり弁護士は「地域を見て回ったが、街全体が工事で作りかえられている。住民にとっては街壊しになっている」と指摘した。世の中は開発優先を見直す方向に動いているので、力を合わせて頑張っていきたいとまとめた。
玉川にエコタウンを作る会のトシコ・スチュワート代表は再開発の問題点を指摘した。再開発で計画されている二子玉川公園(仮称)の盛り土の安全性について世田谷区に確認したところ、「検査して汚染されていないことを確認したから大丈夫」との回答であった。ところが、検査結果のデータは提示できないとする。「本当に検査しているのか疑わしい」と主張した。また、公園の下にトンネルを通す計画になっているが、トンネル内に充満する排気ガスを外に出す装置を設置していないとする。
その二子玉川公園の問題に取り組む木村氏は工事主体が東急建設の二子開発建設事務所であることが最近になって分かったなど、事業者や世田谷区は住民に対して隠す傾向にあると指摘した。きちんと追及していかなければならないと主張した。
「二子玉川の環境と安全を取り戻す会」の関代表は、暫定堤防建設工事によって河川敷が見るも無残な姿になってしまったと説明した。住民らは2010年1月29日に国と工事業者を相手として建築工事差し止め仮処分を東京地方裁判所に申し立て、現在も係属中である。
巨大な堤防は無用の長物であり、反対に雨水排水の障害となり、内水氾濫の危険を増大させる。また、堤防で河原への視界が悪くなり治安が悪化する。しかも、堤防建設は鳥獣保護区の貴重な自然環境を破壊するなどと主張している。いい環境を残せるように精一杯取り組みたいと述べた。
三菱地所のマンション(世田谷区玉川一丁目計画)建設見直しを求める吉倉氏は低層住宅地が広がる地域に川べりに沿って8階建てのマンションが建設されると、川からの景観が悪くなり、北側の戸建ての日当たりも悪くなると訴えた。地域に一つでも高層建設を許してしまうと、どんどん建ってしまう。
住民らの説得行動に対して三菱地所は東京地方裁判所に妨害禁止の仮処分を申し立てたが、工事現場に対する抗議行動は毎朝続けている。現地周辺の道路は狭く、玉川福祉作業所が隣接しており、大型の工事車両の進入は歩行者の安全も脅かしている。三菱地所本社前でのアピールも続けている。
交流会では二子玉川東地区再開発地域や多摩川暫定堤防や三菱地所のマンション建設現場を見て回り、開発による環境破壊の実態を確認した。
道路の拡幅で道路側の枝が切られた桜の木(撮影:林田力、3月27日)
二子玉川(東京都世田谷区)の環境を考える住民団体が集う「二子玉川の環境を守ろう お花見交流会」が2010年3月27日に開催された。
一年前の同時期に二子玉川東地区再開発の見直しを求める「にこたまの環境を守る会」では集会を開き(「「これで良いのか二子玉川再開発」の集い開催」)、集会終了後には花見をした。今回は再開発問題だけでなく、他の問題に取り組む団体も参加し、それぞれの現場(二子玉川ライズ タワー&レジデンス、玉川の暫定堤防、三菱地所の玉川1丁目マンション)に足を運ぶことで、相互に問題を理解しあった。4月3日の11時(雨天4日)にも多摩川の川岸で再び「お花見交流」が行われる。
本記事では「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」の問題について述べる。「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」は二子玉川東第二地区第一種市街地再開発事業で建設された超高層マンションである。タワーイースト・タワーセントラル・タワーウェストの3本のタワーを中心とする分譲マンションである。2010年5月竣工予定であり、完成に近づきつつある。
近隣住民は風致地区の二子玉川に超高層マンションは不似合いであり、日影被害や景観破壊・電波障害、人口増加による鉄道・道路のパンクなどの問題があると指摘されている。お花見交流では「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」の風害と圧迫感を改めて確認した。
急速に発達した低気圧の影響で3月21日に吹き荒れた強風は、「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」の風害の強さを示す置き土産も残した。「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」の目の前にある樹木が曲がってしまった。近隣住民は強風がビル風で増幅された結果と分析する(写真1参照)。
再開発地域の南側に位置する二子玉川南地区では「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」の圧迫感は想像以上である。一見すると細長いタワーマンションでは圧迫感は相対的には小さいと考えたくなる。しかし、3本のタワーが微妙な位置関係で建っている「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」では、どの角度から見ても視界を大きく遮ることになる(写真2参照)。
この3本のタワーの位置関係はマンション購入者にとっても微妙である。写真撮影時はタワーセントラルがタワーウエストの日陰になっていた。タワーセントラルは他の時間帯はタワーイーストの日影になる。日影になるような高層マンションの高層階が住民にとってメリットがあるか疑問である。
多摩川の河原からでも「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」の圧迫感は大きい。河原と再開発地域の間に位置する南地区の住民の圧迫感は甚大である。これだけ近くに見えるならば、上から覗かれるというプライバシー侵害も現実的な懸念になる。
再開発の反対運動では、これまで再開発地域の北側の被害に注目する傾向があった。伝統的な日照権の枠組みでは高層建築の被害は建設地の北側に目が向きがちである。また、再開発差止訴訟控訴審の争点になっている洪水被害も再開発地域の北側の問題である(「二子玉川再開発差止訴訟は洪水被害が焦点に」)。しかし、南側にも被害を及ぼしている問題であることを実感した交流会であった。
写真1:100327riseTree.JPG:「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」前の樹木。3月21日の強風で曲がっている。
写真2:100327tamaRise.JPG:多摩川の河原から撮影した「二子玉川ライズ タワー&レジデンス」。手前中央がタワーイースト、タワーイーストの日陰になっている右側がタワーセントラル、左側がタワーウエスト。
前回の記事に引き続き、二子玉川の住民団体が集った「二子玉川の環境を守ろう お花見交流会」を報告する。本記事では多摩川の暫定堤防を取り上げる。
二子玉川南地区の多摩川の川岸では暫定堤防の建設工事が進められ、自然が破壊されている。もともと二子玉川南地区は既存堤防よりも川寄りに位置している。これは地域の住民が川べりの景観を破壊する川岸への堤防建設に反対したためである(「TV番組「ブラタモリ」と再開発で失われるニコタマの魅力」)。川べりの自然環境と共存してきた二子玉川南地区であったが、国土交通省は2009年11月頃から暫定堤防の建設に着手した。
暫定堤防の建設地域は鳥獣保護区であり、「せたがや百景」に選定された松林(多摩川沿いの松林)があった。役所広司と渡辺謙が共演した映画「絆」(根岸吉太郎監督)に登場した桜も存在する。これらの貴重な自然が暫定堤防建設工事で破壊される。既に松林は伐採され、一部の樹木だけが移植された。しかし、元々の松林は樹齢百年を超える樹木が群生して根が絡み合っており、簡単に根付くものではない。
根付く前に洪水でも起きれば、水によって掘り起こされ、倒木が障害となって大きな災害を起こす危険もある。兵庫県佐用町などを襲った台風9号の豪雨水害(2009年8月)も流木が被害を拡大させた(「大切な奥山の生物多様性を取り戻すために」)。
松の木を移植した場所は公園になる予定であるが、数日前の雨でできた水溜りが広がっていた(写真1参照)。暫定堤防建設のために樹木を伐採して裸地だらけになった結果、雨水浸透力が落ちている。暫定堤防が内水氾濫の危険を増大させるとの住民主張の正しさを裏付ける状況である。
暫定堤防建設は区民の憩いや遊びの場も減少させた。玉川一丁目河川広場の入口には世田谷区玉川公園管理事務所と国土交通省京浜河川事務所田園調布主張所の連名で「多摩川の河川工事に伴い、11月16日をもって閉鎖いたします」との看板が立てられていた(写真2参照)。
この看板は手続き上の問題を示す証拠となる。世田谷区議会では議案第99号「世田谷区立身近な広場条例の一部を改正する条例」が2009年12月4日に自民党、公明党、民主党などの賛成で可決され(共産党、生活者ネットワーク、社民党などは反対)、玉川一丁目河川広場は廃止された。
廃止されるまでは玉川一丁目河川広場は広場として存在しており、行政が条例に基づかずに広場を閉鎖したことになる。これに対して区議会は広場廃止の議決で追認した。行政の暴走をチェックするのではなく、事後的にお墨付きを与える機関と成り下がったかのような区議会の議決に日本の民主主義とは何かと自問した住民も少なくない。
残された樹木には「桜や松を切るな!これ以上自然を壊すな!」の横断幕などが付けられ(写真3参照)、住民側は必至の抗議活動を続けている。
写真1:100327park.JPG:移植された松の木。手前には水溜りができている。
写真2:100327kanban.JPG:玉川一丁目河川広場閉鎖を告げる看板
写真3:100327matsu.JPG:「桜や松を切るな」の横断幕が付けられた樹木
東京都世田谷区の二子玉川地域で街づくりを考える住民団体が集う「二子玉川の環境を守ろう お花見交流会」が2010年3月27日に続いて、4月3日にも開催された。今回は暫定堤防建設の見直しを求める「二子玉川の環境と安全を取り戻す会」が主体で、多摩川のほとりで開催された。
お花見は棋士・阪田三吉をモデルにした名曲「王将」の歌手・村田英雄と作詞家・西条八十が出会ったとされる桜の木の下で行われた。美空ひばりや島倉千代子ら女性歌手の歌を作詞していた西条は、「女の歌しか書かない」と当初は村田の作詞に難色を示した。しかし、村田の熱心な頼みは西条の心を動かし、戦後初のミリオンセラー「王将」が誕生した。
この出会いの桜の隣には役所広司と渡辺謙が共演した映画「絆」(根岸吉太郎監督)に登場した桜がある。言わば芸能界に由緒ある花見スポットである。すぐ先にはオレンジ色のネットが張られ、殺風景な工事現場となってしまった。桜の木も2009年度中に伐採される予定であった。これに対して、住民の粘り強い運動が桜の木を今日まで守ってきた。
芸能界に縁深い場所ということでヒット曲を用いた説明を許してもらうならば、歌手・中島美嘉が2005年に発表したシングル「桜色舞うころ」のプロモーションビデオでは桜の木を舞台とした人形劇が繰り広げられている。そこには思い出の桜の木を伐採しようとする工事業者に対し、身体を張って阻止するシーンがある。住民の運動は、まさにそのようなものであった。今年も花見を楽しむことができたのは、そのお蔭である。
3月27日には蕾の状態であった桜も4月3日は見事に咲き誇っていた。花見客や散歩者も多く、「二子玉川の環境と安全を取り戻す会」のメンバーは自然が破壊される暫定堤防建設の問題点を説明し、暫定堤防建設の見直しを求める署名を集めた。これは運動の内部で交流を深めるだけでなく、外部に訴えて運動を広げていくべきという考え方に基づくものである。
前日(2日)は強風が吹き荒れたが、まるで花見に来てもらうのを待っているように花は散らずに残っていた。古来、日本で桜が愛された理由には散り際の潔さが挙げられる。「散る桜 残る桜も 散る桜」(良寛の辞世の句とされる)や「散りぬべき 時知りてこそ 世の中の 花も花なれ 人も人なれ」(細川ガラシャの辞世)と歌われたとおりである。
しかし、散り際の潔さを是とする美意識が十五年戦争における特攻や玉砕という無謀な行為を正当化するために悪用されたという悲劇も忘れてはならない。むしろ、風雨に見舞われても、一部花びらが散ってしまっても、しぶとく残っている花びらには自然の生命力の強さが感じられる。やがて散ってしまう運命は避けられないが、それでも精いっぱい、花を咲かせ続ける桜に生物としての美しさがある。
工事業者は伐採を控えているだけで、伐採を諦めた訳ではない。しぶとく残っている花びらのように粘り強く運動を続けていくと「二子玉川の環境と安全を取り戻す会」のメンバーは決意を新たにしていた。
歌手・村田英雄と作詞家・西条八十が出会ったとされる桜の木(撮影:林田力、4月3日)
東京都世田谷区玉川地域のタウンミーティング「区長と区民との意見交換会 地域の活性化・地域の絆の再生」が2009年12月6日に世田谷区等々力の玉川総合支所で開催された。区長と区民との意見交換という題目とは裏腹に住民には失望と不満が残ったタウンミーティングであった。
タウンミーティングは定刻の14時を約5分過ぎてから、根津典史・玉川総合支所副社支所長の司会で始まった。最初に熊本哲之・世田谷区長が「穏やかで和やかな会にしたい」と挨拶した。続いて西澤和夫・玉川総合支所長が玉川地域の活性化をめぐる状況について説明した。ここまでで20分弱である。一方的な挨拶や説明が長くなり、肝心の意見交換の時間が少なくなるような運営もある中で、区長挨拶などを短時間で済ませたことは評価できる。
問題は意見交換であった。住民の発言は事前に住民が提出した質問票に基づき、司会者の指名によって行われた。出された意見は公園への健康器具設置、防犯カメラ、まちづくりセンターのバリアフリー化、保育園、教育、庁舎など様々であった。司会者は二子玉川についての意見が最も多いとしながら、最後にまとめて行うとした。
住民意見への区側の答弁は各セクションの部長や次長が行うことが多かった。しばらく後、住民から政治家としての区長の回答を聞きたいとの意見が出され、会場からも「役人の答弁はいらない」と同調の声が出た。このため、熊本区長が自ら答弁する機会も増えたが、区民感覚との断絶が浮かび上がった。
象徴的なやり取りは区長が業者とゴルフをした事実についての質疑である。質問者は区長側がゴルフをした事実をオープンにしなかったことを問題視した。これに対して熊本区長はゴルフをプライベートとして正当化した。会場からは「区長は公人である」「疑惑を招く行動は説明すべき」との声が上がった。
最も意見が多かった二子玉川東地区再開発は最後に回されたために時間切れとなってしまい、意見交換としては不十分であった。それでも住民側から断片的に鋭い主張がなされた。
・二子玉川東地区再開発への税金の支出は東急グループへの援助ではないか。住民は恩恵を受けていない。
・世田谷区の職員が再開発組合に天下りしている。
・二子玉川園など緑地であった再開発地域の自然を破壊した上で、一部に新たな公園を造るのではなく、既存の緑地を大切にすべきである。再開発地域は盛り土して小山になるために北側の住民が多摩川に行くためにはトンネルを通らなければならなくなる。わざわざ山にしてトンネルを造ることに意味はない。
熊本区長は最後の意見に答弁したが、問題意識は噛み合っていなかった。まず安心・安全をまちづくりの最優先とし、トンネルが悪いわけではないと主張した。これに対して、会場から「区は水と緑の街づくりを目指しているのではないか」と指摘された。
これに対して区長は「緑の重要な供給源は農地である」と話題を変えた。固定資産税や相続税が高いために農家の跡継ぎがいなくなることが問題とする。区長答弁は再開発地域の自然がなくなることへの回答になっていない。肩透かしを食らった会場からは諦めと絶望から溜め息が漏れた。
予定時間を過ぎたために司会が意見交換を終了しようとした際、一人の女性住民が抗議した。「タウンミーティングといっても、この雰囲気は総会屋対策である」と主張した。その上で世田谷区議会(平成21年第4回定例会、2009年11月25日)における区長答弁を批判した。これは二子玉川再開発の抜本的見直しを求めた岸武志議員(日本共産党)の代表質問への答弁である。熊本区長は「(再開発に)反対の方は共産党に煽られた一部の住民だと私は理解しています」と答弁した。この答弁に区議会では「暴言だよ」「取り消しなさい」「撤回しなさい」と騒然となった。
しかし、意見交換は終了したとして女性の発言は区側に遮られた。会場からは女性の発言を聞きたいとの声が出されたが、聞き入れられなかった。区長による閉会の辞が述べられ、タウンミーティングは閉会した。
タウンミーティングは区民からの自由闊達な意見交換とは程遠いものであった。会場では区の職員が立ち並び、質問者の質問中は複数の職員が質問者の周りに集まるという異様な光景が見られた。高齢の住民は戦前の「弁士注意」を想起したと語った。また、持ち時間を越えて区政を鋭く批判した質問者に会場から暴言から吐かれたが、区側は暴言を止めさせることよりも、暴言に反応した質問者を押しとどめることに注力していた。
二子玉川再開発の問題について十分な時間配分をしなかったことは、住民の関心に応えるという点では大失敗である。二子玉川再開発は民間施行では最大規模の事業であり、住民への影響も甚大である。様々な住民反対運動が続いており、複数の訴訟が係属中である。しかも二子玉川東第二地区市街地再開発準備組合による第2期事業の動きが出てきた上に、前述の区長答弁で区議会が紛糾したばかりである。それ故に再開発についての意見が集中することは予想できることである。
意見交換の前半で出た健康器具や防犯カメラの設置などは通常の陳情や窓口の相談で対応できる問題である。それらを長々と行って、再開発は時間切れとしたことに作為的なものを感じた住民も少なくない。小泉内閣のタウンミーティングでは「やらせ質問」が発覚したが、陳情で済むような質問をした質問者には民生委員などの役職者が多かったことも住民の疑心をかき立てる結果となった。再開発に問題意識のある住民にはガス抜きにもならなかったタウンミーティングであった。
東京都世田谷区砧地域のタウンミーティング「区長と区民との意見交換会 地域の活性化・地域の絆の再生」が2010年2月7日に世田谷区成城の砧総合支所で開催された。世田谷区では5つの地域(烏山、北沢、世田谷、玉川、砧)で順番に意見交換会を開催しており、今回が最後になる。大荒れになった玉川地域に比べれば穏やかであったが、それでも参加者の不満が残った運営であった。
最初に熊本哲之・世田谷区長が挨拶した。熊本区長は経済情勢の悪化の中で区の歳入も大幅に減少する見込みであり、区民の力が必要であると強調した。続いて須田成子・砧総合支所長が地域の状況を説明した。砧地域は大型マンションの建設で人口が増加し、特に子どもの人口が多いとする。また、農地が多いため、緑地率が他地域に比べて相対的に高いとした。
意見交換は玉川地域の意見交換会と同じく、事前に住民が提出した質問票に基づき、司会者の指名によって行われた。多摩川の河川敷のグラウンドの土の飛散、汚水、豪雨対策、防犯パトロールカー、緑地の維持・拡大、独居高齢者の見守りなど住民の意見は多岐に渡ったが、陳情的な内容が多く、激しい意見対立にはならなかった。区長の答弁終了後に次の質問に移ろうとする司会者に対し、区長が「質問者が回答に納得したか確認しなさい」とたしなめるなど、余裕も見せていた。
玉川地域の意見交換会では論争になった区役所庁舎の建て替え問題も、あっさりと終わった。玉川地域では質問者が「横浜市など他の自治体では財政事情から庁舎建て替えの優先順位を落としている」と迫ったが、区長は「横浜は横浜、世田谷は世田谷」として、自分が責任を持って推進すると言い切り、平行線となった。
今回は質問者が庁舎の文化性の要否について区長の見解を質した。これは区本庁舎等整備審議会(照井進一会長)の答申(2009年8月13日)にある以下の内容に基づいている。
「本庁舎等に求められる「文化性」に関する意見として、第一庁舎、区民会館は、設計コンペによって選出された日本を代表する建築家(注:前川國男)が設計したもので、区民にとってもその文化的意義は高く、保存活用すべきであるという意見がありました。他方では、文化的価値がどれほどのものなのか、庁舎に文化性は必要ないという意見も少なくありませんでした。」
質問者は庁舎に文化性を不要とした少数意見を暴論と批判したが、区長も「文化性が不要とは考えていない」と答弁した。
一方、住民間でも温度差のあった問題に外環道(東京外郭環状道路)があった。地権者であるという発言者は老後の生活設計のために早期の促進を訴えた。別の発言者は住民の意見を聞き、住民の総意が計画に反映されることを求めた。
外環道には環境問題が残っているとの指摘もなされた。大深度地下トンネルとなる外環道の換気塔から放出される排気ガスによる大気汚染が懸念されている。外環道単体だけでなく、清掃工場の排煙などと重合(複数の分子化合物が結合して別の化合物になること)して有害性が高くなる危険性も調査しなければ安全ではないと主張した。
興味深い内容として、区民の自助努力を求めた区長の発言があった。集中豪雨時に「浸水した地下室に閉じ込められた」などの救助要請が多数寄せられるが、行政では人手が足りず、完全に対応できないという。そのため、たとえば建築確認前に建築主が水害対応を十分に検討すべきと主張した。
これは二子玉川東地区再開発反対運動と通じるものがある。近隣住民が再開発の見直しを求める理由の1つに再開発が水害の危険を高めることが挙げられる(参照「二子玉川再開発差止訴訟・洪水被害の立証へ一歩前進」)。これは行政任せにせず、水害に強い街づくりを目指す住民の自助努力であり、区長発言に合致している。この点で区は反対運動と協力できるにも関わらず、そのようになっていないところに不幸がある。
順調に進行した意見交換会も最後になって味噌を付けた。予定時刻を過ぎたために司会者が閉会しようとした際、参加者から「質問票を記入して提出したのに選ばれないとはどういうことか」との抗議の声が上がった。自分の質問の番が来るのを待っていたという。区内の2つの清掃工場から排出されるダイオキシン問題について発言しようとしたが、遮られた。
会場からは「話を聞きたい」「言論封殺するな」との声が出たが、終了させるという区側の姿勢は頑なであった。会場からの要望で発言を記録に残すことだけは約束した。玉川地域と同じく、後味の悪さが残ったタウンミーティングであった。
関連記事:世田谷区玉川、タウンミーティングの呆れた実態 2009/12/07
http://www.news.janjan.jp/area/0912/0912074112/1.php
二子玉川再開発差止訴訟・洪水被害の立証へ一歩前進 2009/12/16
http://www.news.janjan.jp/living/0912/0912164460/1.php
世田谷区議会の平成21年第4回定例会(2009年11月25日)は二子玉川ライズ(二子玉川東地区再開発)の問題で騒然となった。日本共産党の岸武志議員は代表質問で、二子玉川再開発の抜本的見直しを求めた。これに対する熊本哲之区長の答弁が問題であった。
区長は「(再開発に)反対の方は共産党に煽られた一部の住民だと私は理解しています」と答弁した。この答弁によって場内は騒然となり、区長への激しい批判が続出した。
「今の発言は問題だ。区長、煽られたと言うなよ。」
「煽られたなんて酷すぎるじゃないか。」
「共産党が煽ったということはどういうことだよ。大問題だよ、それは」
「暴言だよ、それは」「取り消しなさい」「撤回しなさい」
「それはおかしいぞ。動議、動議を求めるぞ。」
この経緯を知った住民団体のメンバー達は「議場と言う神聖な場所で、首長がこの様な発言をすることはあり得ない。これから始まる第二期事業は環境的にも問題のある計画なので、やむにやまれず住民が再考をと訴えているのに我々の要望を無視した上に、この様な暴言で納税者の発言権を封じ込めるつもりか?都内で一番人口が多い世田谷区の区長がこの様なレベルの低さでは情けない。即刻辞めるべきです」と憤る。
記者は東急不動産(販売代理:東急リバブル)に新築マンションをだまし売りされ、裁判で売買代金を取り戻した(林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』)。裁判闘争を進める記者に対し、共産党員や創価学会員、中核派、在日朝鮮人であると勝手に決め付けられたことがあった。そのような悪意は反発を生み、闘争心を強固にするだけである。
http://hayariki.seesaa.net/article/134978895.html
http://blog.livedoor.jp/hayariki2/archives/1125934.html
世田谷区議会予算特別委員会では最終日の2010年3月24日に、生活者ネットワーク・社会民主党・区民の会から平成22年度世田谷区一般会計予算案に対する組み換え動議が提案された。動議は一般会計予算案から二子玉川東地区再開発第2期事業(二子玉川東第二地区第一種市街地再開発事業)への補助金5億2720万円を削り、予算の組み換えを求める。竹村津絵議員(生活者ネットワーク)が提案理由を説明した。
二子玉川東地区第一種市街地再開発事業は2005年に東京都から事業計画認可されたが、再開発地域の中央部分(II-a街区)は社会・経済情勢の変化を理由に白紙になっていた。このII-a街区の大規模地権者である東京急行電鉄・東急不動産らを中心とする再開発準備組合は2009年11月に第2期事業として事業計画認可を東京都に申請した。世田谷区は事業計画認可を前提として補助金を計上したが、認可は未だ下りていない。
二子玉川東地区再開発に対しては、高層ビル建築による日照被害・風害・電波障害・圧迫感・景観破壊など住民から反対意見が根強く、「にこたまの環境を守る会」「二子玉川東地区住民まちづくり協議会」「玉川にエコタウンを作る会」など様々な住民団体も活動している。第1期事業には再開発組合に対する再開発差し止め訴訟と世田谷区に対する公金支出差し止めの住民訴訟の2件の訴訟が係属中である。
このような状況から第2期事業の事業計画案縦覧に対して、199通もの意見書が提出され、そのうちの191件は計画の見直しを求める反対意見であった(2010年2月22日の東京都議会都市整備委員会での大島よしえ議員質問に対する答弁)。東京都では4月下旬に口頭陳述の場を設け、意見書を審査する予定である。このため、第2期事業が計画案通りに進められるかは未確定であると竹村議員は説明する。
世田谷区基本構想は「区民の主体性をもとにした区民自治」「区民参加のまちづくり」を掲げる。また、補助金の交付原則には「広く区民に対して納得の得られることが必要である」と明記する。これらを理由に竹村議員は、これから口頭陳述で明らかになる区民意見を踏まえ、区民の意思を受けとめた上で補助金交付の是非を判断すべきと主張した。
動議には提案会派に加え、共産党と無党派市民が賛成したが、賛成少数で否決された。動議に反対した議員は「第2期事業も区の基本計画・実施計画となっている」「第1期事業と一体にすすめるべき」と主張した。一方で反対議員からも「住民の声を聞かなければならない」との声が出るなど、波紋を投げかけた動議であった。