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漫画の電子版を配信する上場企業の売上高が急拡大している。インフォコムやイーブックイニシアティブジャパンは2年間の増収率が5割を超える。違法コピーした漫画などを掲載していた海賊版サイト「漫画村」が2018年4月に閉鎖され、正規版の配信サイトに利用者が集中しているためだ。若者を中心にスマートフォンでの漫画購入は定着しつつあり、市場は拡大が続く見通しだ。
漫画配信サイト「めちゃコミック」を運営するインフォコムは2020年3月期の電子コミック配信事業の売上高が前期比2割増の318億円となる見込み。18年3月期(202億円)から2年で約1.5倍となる。同社の利用者は30代の女性が中心で、婚活や妊娠・出産といったテーマを取り扱うオリジナル作品の人気が高い。同事業の利益は51億円の見通しだ。
Zホールディングス傘下のイーブックイニシアティブジャパンは20年3月期に190億円の売上高を見込む。18年3月期(119億円)から2年間の増収率は約6割に達する。有料サービス「ヤフー!プレミアム」の会員向けにポイント還元を大幅に増やしたり、スマホ決済「PayPay」で支払いできるようにするなど、グループの連携を強化したことも奏功した。
恩恵は出版社にも及んでいる。KADOKAWAは19年4~6月期に電子書籍・電子雑誌の売上高が前年同期に比べて31%増え、四半期として過去最高となった。「自社の配信サイトと外販がともに好調だ」(同社)という。
コンテンツ海外流通促進機構の推計によると、違法配信していた漫画村による著作権被害は約3千億円にのぼる。漫画村閉鎖を契機に各コミック配信サイトはマーケティング費用を積み増し、ユーザーの取り込みに動く。インプレス総合研究所によると18年度の電子コミックの市場規模は前年度比29%伸びたという。
ただ電子書籍は価格競争に陥りやすい。紙の本のように再販売価格維持制度(再販制度)で定価が決まっていないためだ。電子商取引(EC)で高シェアを握るアマゾンジャパンや楽天のほか出版社の直営サイトも乱立する。独自作品で差別化できなければ、現在のような売上高の伸びや利益率を維持できない可能性がある。