トヨタ自動車の豊田章男社長から飛び出した「終身雇用難しい」の真意とは何か。労使双方を取材すると、トヨタですら悩む「50代問題」の実相が見えてきた。銀行、電機、通信──。あらゆる企業が日本型雇用の限界に喘いでいる。
トヨタ自動車の労使交渉が異例の展開だ。10月に「春季交渉の延長戦」を開く同社史上初の異常事態である。
春の交渉で、労使のかみ合わなさがあらわになった。13年ぶりに集中回答日まで決着がずれ込み、結局、一時金について年間協定が結べなかった。「夏季分のみ」という会社提案を組合がのみ、結論を先延ばしにした格好だ。
混乱の経緯をひもとくと、雇用に対するトヨタの焦りが見えてくる。
事業環境の変化による危機感を訴える経営側と、一律配分にこだわった組合側。一義的には両者の意見が真っ向から割れたことが原因だが、もう一つの背景がある。
豊田章男社長の怒りである。
きっかけは、その1週間前──。3月6日に開かれた第3回の労使協議会は、異様な雰囲気に包まれていた。「今回ほどものすごく距離感を感じたことはない。こんなにかみ合っていないのか。組合、会社ともに生きるか死ぬかの状況が分かっていないのではないか?」。緊迫感のなさに対して、豊田社長がこう一喝したからだ。
組合側からの「モチベーションが低い」などの意見を聞いての発言だが、重要なのはそのメッセージが、非組合員である会社側の幹部社員にも向けられた点にある。
「働かない50代」問題が顕在化
労使交渉関係者は次のように証言する。「社長は、若手が多い組合側よりも、ベテランを含むマネジメント層に危機感を持っていたようだ」
豊田社長の発言を受けて急きょ、部長などの幹部側が集まった。危機感の不足を議論し共有するのに1週間を要した。これが、会社回答が集中日までずれ込んだもう一つの理由だった。
労使交渉の関係者などへの取材によると、トヨタにはいまだ、年次による昇格枠が設定されている。
総合職に当たる「事技職」では、40歳手前で課長、40代後半で部長というのが出世コースで、このコースから外れると挽回はほぼ不可能とされる。
「あぶれた50代も肩書が付く場合があるが、部下はいないし、与えられる仕事も大きくない。相当モチベーションは下がっている。それでも年収で1200万円はもらっているから誰も辞めない」と40代社員は言う。
トヨタは、この「50代問題」を座して待っていたわけではない。例えば工場などの製造部門。同社の試算では、10年後には50代が数割増加する。
これまでは、体力が低下しがちな50代は生産ラインの外での作業に職務を変更してきたが、人手確保のためにライン内での作業が必要になる。そのため、2012年から評価制度見直しや健康面の対策を講じてきた。若手が減るなかで、50代も戦力として計算に入れる必要があった。
コメント11件
Andy 1st
ないところからは取れないので、まずは、逃げ切ったあるいは逃げ切れそうと思っている人から取りましょう。土地の時価評価、資産課税、相続税の収納強化、高額年金の引き下げ、天下りの受け入れ側に対する高コスト負担化、とかね。次は出す方の無駄遣いとめな
いと、東京近郊にこれ以上お金をかけないように、オリンピックをより安く済ませるように、その分を地方に振り向ければ、コストの安い所で雇用を生んで、東京を離れた人でも暮らしが成り立つようになるでしょうから。官僚も政治家もあまりこれをまじめにやらないのは、東京でよっぽど良い思いをしているのでしょうか。...続きを読むまた、工場などの現場の話は、給料払うのだから、仕事を見つけて働かせる、働けるような環境にするのが経営側の役目、それを放棄するというんじゃ、経営側の首取らなきゃいけないのでは?今まで働かせないでほっといたのだとしたら、何してたのでしょうね。それができていない管理体制に社長は怒ったのかな。
いっちゃん
兼業文学研究家
そうでしょうね、きっと
石田修治
定年退職
経営者の言う『やる気のない社員は要らない』の「やる気」の意味は良く分からないが、人生を楽しむために必要な糧を得るために働くのでも、仕事に必要な能力を備えていれば良いのではないか?まさか家庭を犠牲にしてでも会社のために働く人材を欲している訳で
はあるまい。こう言う発言が出てくる原因は年功序列型賃金体系の存在にあるのではないか。個人的には、企業が世界相手に負けないためには、全面的な能力給に切り替えたら良いと思う。しかも、要求される「能力」は固定的なものではなく時と状況により変わっていくものだと明白にすべきだ。だから、年齢に関わりなく、能力に応じて賃金を決定すれば良い。同じ年齢で「倍半分」どころか、「桁違い」の差が出るのも当然だと思う。対象は、社員だけではなく、経営者も同じ事だ。未来を描けない経営者は要らない。会社の未来のためになすべき事を明確にできる経営者でなければ意味がない。結果として生じる較差や子育てに必要な金は、所得税制度を中心とした政府の政策で対応すれば良い。そのためにも、現在の最高税率45%の所得税は以前の様に70%以上が必要になるだろう。近年、日本の経営者も欧米諸国などで行われていた、「経営が苦しくなれば人員整理」を平然と実行する様になった。派遣社員制度の浸透が対象者に対して『申し訳ない』と言う感情を沸かせなくしたのだろう。経営者は自身の能力を知ることと、社員に対してはどの様な能力を必要としているか明示する責任がある。それが出来ない経営者は、去れ!...続きを読むマウスカーソル
エンジニア
そもそも、こうなること、”少子高齢化”、”グローバル化”、”成長経済から安定経済へ”などが分かっていて、歴代の会社経営者は何も手立てをしてこなかった結果、”今の時代”で使えない50代が増えたと考えられます。
企業が成長しなくなったのは、今の
50代社員が原因でしょうか?
...続きを読む毎年、4月に一斉に学卒を大量採用したのは、なぜだったのでしょうか?
東京勤務で採用されて、その後地方転勤を命ぜられ、業務命令を受けないとろくな処遇も受けられません。会社の言う通りに仕事をしてきたら、最後に使えない社員の烙印を押されます。多くの会社経営者はとりあえず5~6年幹部を任されれば、その後は安泰です。リスクを冒さないように前例主義でやればよかったんです。だから、今後は会社もスリム化するから、40代~50代の社員は、今のうちに新しいスキルを付けて、他の領域でも生きていけるようになってほしい、なんて、会社の調子のいい時には言わななかったのが多くのケースです。はっきり言えば、成長経済の中では、誰が社長を務めても、うまく回ったと考えられます。
こんな状況で誰が50代社員を悪く言えるのでしょうか?
Ros
BeaTOOL代表 デザインエンジニア、大学院研究者
グローバリゼーションにも負けず 少子高齢化にも負けず
AIにも 地球温暖化の暑さにも負けぬ 丈夫な見識を持ち
欲は少しあり
時々小さく怒るけど
家族が笑っているのを見ながら
一日に 安いビール的なものと 少しのツマミを食べ
あらゆることを
自分は知っているつもりにならないで よく見聞きし 定説や常識を少し疑い...続きを読む失敗や嫌なことはすぐに忘れて、新しいアイディアを考え
自分にできる小さなことを探して実行し
東に困っている現場があれば 行って 話を聞き
西に自信を持てない若い人があれば 行って そのアイディア良いねと励まし
南に時代錯誤な役員がいれば 行って このままで良いのか?一緒に考え
北に混乱や 誤解があれば 守備範囲を超えていても行って調整し
工場で問題が起きたときは 一緒に汗を流し
クレームのときは お客様に真摯に謝り
みんなに役立たずの50代と呼ばれ
ほめられもせず 苦にもされず
年甲斐もなく新しい場所で新しいことを始める
そういうものに わたしはなりたい なれないけど
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