貧困の解消、女性や障がい者など社会的弱者の自立支援、自然環境の保護など社会に必要とされながら、政府や自治体の手が届きにくく、事業化も難しい課題がある。そこに果敢に挑戦している女性の社会起業家たちが沖縄に集まった。
那覇市の県立図書館でアジア女性社会起業家ネットワーク(AWSEN、オーセン)サミットが開幕した。国連の提唱する持続可能な開発目標(SDGs)の理念を掲げ、「『だれ一人取り残さない』ために私たちができること」をテーマに13日まで議論が行われる。
社会起業家とは福祉、教育、地域づくりなど利潤追求だけでは成り立たない社会的問題の解決のために、ビジネスの手法を取り入れて新たな事業を創造する人たちのことだ。
普通の起業よりも難しく、困難な道のりであったはずだが、彼女たちはよりよい未来を目指し取り組んでいる。その事例は、子どもの貧困などの課題が山積する沖縄にも生かせる知恵があるはずだ。
AWSENはアジアの女性社会起業家たちが「活(い)かし合い、応援し合うつながり」として2014年に設立され、約250人がネットワークを構築してきた。
初日は各国で活躍する4人の女性社会起業家が事例を報告した。
バングラデシュで牛革製品を地場産業化した日本人女性や、障がい者にIT分野の職業訓練をするベトナムの起業家らが思いを語った。貧しい人々や社会的に弱い人たちに目を向け、慈善事業ではないビジネスにつなげている。
自身が貧困で大学に行けなかった経験から、ミャンマーで無担保少額融資のマイクロファイナンスを運営する日本人女性は「子どもが貧困によって涙することのない世界を」と訴える。弱い立場の人への視点が感じられる。
日本はもともと、起業自体が欧米諸国より低い水準にある。開業率で見た中小企業庁のまとめでは米国は9%台、英国やフランスは13%前後だが、日本は5%前後で推移している。起業に関心があっても行動に移す人の割合も低い。その中で社会的起業となるとさらに低いだろう。
野心的なベンチャー起業家がイノベーションをけん引してきた米国では、社会的起業家に対しても多様な形で支援する土壌があるが、日本ではこれからだ。
社会的に意義があっても事業を軌道に乗せるのは難しい。寄付やインターネットで資金を募るクラウドファンディングなどの金銭的支援だけでなく、若い起業家に不足しがちなマネジメント、マーケティング、情報通信技術の知恵を伝授して支えることも今後は必要だ。
AWSENのネットワークで女性社会起業家たちが国を超えて経験を共有し、取り残さない社会へ向けて進む力を蓄えてほしいと願う。