Mummy-Dの30年ラップを続けた境地「ラップで人間国宝を目指す」

Mummy-Dの30年ラップを続けた境地「ラップで人間国宝を目指す」

インタビュー・テキスト
宮田文久
撮影:鈴木渉 編集:久野剛士(CINRA.NET編集部)
2019/10/11
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今年、結成30周年を迎えたヒップホップ界のパイオニア・RHYMESTER。そのMCにして、トラックメイキングを含めたソロ活動やユニット・マボロシなど、幅広い活躍を見せてきたのがMummy-Dだ。

今年49歳を迎えた彼は、卓抜したライミングや飄々としたキャラクターで人気を博す。しかし、どんな人間にだって葛藤はある。今回彼がリラックスしたムードで話してくれたのは、Fikaのテーマであるクラフトマンシップや、もの作りへのこだわり、そしてキャリアを積み重ねたからこそ、絶えず自問自答を繰り返し、一歩でも前を目指そうとする「現在地」についてだ。

365日24時間音楽と向き合い続けるミュージシャンが、唯一心安らぐ余暇は「歴史」

―このインタビューは8月に行われていますが、RHYMESTER結成30周年を記念した47都道府県ツアーのお休み期間なんですよね?

Mummy-D(以下、D):そうだね。夏はフェスの出演が多いから、いまはそちらに集中している感じだね。

―腰を痛めていたそうですが、大丈夫ですか。『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019』出演時は、杖をついていたようですが……。

D:そうなんだよ(笑)。たぶんツアーの影響かなあ。俺たちはもうオジサンなわけだけど、ヒップホップのライブってめっちゃジャンプとかするわけよ。楽器を持っているわけでもないから、ロックバンドの人たちより動き回らなきゃ「生感」が出ないのね。

だから、ジャンプにしろコールアンドレスポンスにしろ、こんなオジサンが恥ずかしいほど動きまくるの(笑)。それが腰にきちゃったと思うんだけど……幸い、もう落ち着いたよ。

Mummy-D<br>1970年横浜市生まれ。ラッパー、プロデューサー、役者。ヒップホップグループRHYMESTERのラッパー、サウンドプロデューサーであり、またグループのトータルディレクションを担う。RHYMESTERでの意欲的な活動の一方でドラマ、CM、舞台など役者、ナレーター業に活躍の場をひろげている。
Mummy-D
1970年横浜市生まれ。ラッパー、プロデューサー、役者。ヒップホップグループRHYMESTERのラッパー、サウンドプロデューサーであり、またグループのトータルディレクションを担う。RHYMESTERでの意欲的な活動の一方でドラマ、CM、舞台など役者、ナレーター業に活躍の場をひろげている。

―記事が出るころは、ツアーの後半に突入しています。47都道府県をまさに跳ね回りながらツアーするのはタフなことですよね。

D:でも、なかなか47都道府県をまわることができる仕事ってないと思うんだよ。どんなに支社が多い会社で働いて転勤したとしても、47都道府県は行けないだろうから。これを機に、と思って、俺はライブの合間で各地の歴史的な観光名所も精力的にめぐっていて。楽しくやってますよ。

Mummy-Dがツアー中に史跡をめぐる様子が映るRHYMESTER“グラキャビ”映像

―Dさんのブログでは、熱心な名所めぐりの様子を書いています。歴史を好きになったのはいつなんでしょう?

D:お、聞いちゃいますか? 俺に訪れた「歴史革命」のこと(笑)。29歳のときなんだよ。

―明確に革命が起こった時期があるんですね(笑)。

D:俺、それまではなんっの趣味もなかったの。だって、趣味を仕事にしちゃったからさ。そんな中、29歳のときにレコード会社の人が歴史の本を1冊くれて、それから急にハマったんだよね。ほとんど行かなかった本屋にも、それから行くようになったなあ。

―名所に足を運んだとき、どんな瞬間がアガるんですか。

D:うーん、なんかの「理由」がわかったときとか。この街がこうなっているのは、このときにこういうことがあったから……たとえばこの道をこの人が作ったから、この街はいまこうなっているんだといったような「理由」がわかるのが面白いのかもしれない。いまにつながっていることがわかるのが楽しいんだよね。

―歴史スポットとして人気の三重県桑名市のために、Dさんが書き下ろした“くわなにさくはな”も発表されましたが、普段から歴史の趣味が曲作りに反映されているんですか?

D:桑名の曲は特別で、普段はどちらかというと趣味の範疇かもしれない。というのも俺、日ごろから頭の中で製作途中の曲がいくつも鳴っちゃってるから。

たとえばいまだと、同時に作っている曲が20曲ぐらいあるんだよ。そうすると、日によって違うビートが、たとえ寝ていたとしても頭の中で鳴り始めちゃう(笑)。1回鳴り始めちゃうと、どう作っていこうかついつい考えちゃうんだよね。

Mummy-D
桑名の「魅力みつけびと」に今年、就任したMummy-Dによる“くわなにさくはな”

―ラップを乗せるにせよ、トラックを作るにせよ、そうした制作中の曲が常に頭の中で鳴っている、と。

D:だから普段の趣味の時間は、できるだけ音楽だけでなく、映画や絵画、演劇のようなカルチャーから真逆のところにいたいのかも。そうしたものを見聞きすると、もの作りをする人間として、「俺だったらこうする」とか考えちゃって、全然余暇にならないんだよ。

雑誌を開いても俺自身が載ってることもあるから心落ち着かないけど、歴史の本には絶対に俺は出てこないじゃん(笑)。

Mummy-D
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イベント情報

RHYMESTER 結成30周年記念ツアー
『KING OF STAGE VOL. 14 47都道府県TOUR 2019』

2019年10月13日(日)
会場:北海道 PENNY LANE24
OPEN 16:00 START 17:00

2019年10月26日(土)
会場:福井県 福井CHOP
OPEN 16:30 START 17:00

2019年10月27日(日)
会場:滋賀県 滋賀U☆STONE
OPEN 16:30 START 17:00

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プロフィール

Mummy-D(まみーでぃー)

1970年横浜市生まれ。ラッパー、プロデューサー、役者。ヒップホップ・グループ「ライムスター」のラッパー、サウンドプロデューサーであり、グループのトータルディレクションを担う司令塔。1989年、大学在学中にメンバーと出会いグループを結成。活動初期の日本にはまだ、ヒップホップ文化やラップが定着しておらず、日本語ラップの方法論、日本人がどのような内容のラップをすれば良いのかなど、試行錯誤を重ねて作曲を続け、精力的なライブ活動によって道を開き、今日に至るまでの日本のヒップホップシーンを開拓牽引してきた第一人者。最近ではライムスターでの意欲的な活動の一方でドラマ、CM、舞台など役者、ナレーター業に活躍の場をひろげて好評を得ている。中でも2017年にTBSテレビ・ドラマ『カルテット』に出演すると、登場シーンはSNS上で毎回バズを起こしていた。ライムスターは2019年に結成30年を迎えて、さまざまなセレブレートリリース、イベントが企画され、現在は47都道府県ツアーを敢行中。

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