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『Mongolia Team wearing ASICS DS LIGHT X-FLY4』


さて、2019年10月10日アジア2次予選

日本代表 vs モンゴル代表の一戦が行われました。

その試合でモンゴル代表のスタメン11人の内、

8人がアシックスのスパイクを着用!

モンゴル国内ではアシックススパイクは市販されていないにもかかわらず、

なぜ、モンゴル代表選手がアシックススパイクを着用することに至ったのか?

その理由と経緯を解説します!


今回の事案は慈善活動

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今回、埼スタでの日本代表vsモンゴル代表の一戦で

モンゴル代表選手がアシックスのサッカースパイクを履いたのは

アシックス社がモンゴル代表にスパイクを支給したわけではなく、

様々な人たちの巡り合せや共感、協力が組み合わさって実現した出来事です。


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まず、発起人は現役モンゴルリーガーである渡邉卓矢氏です。

東南アジアなどのサッカークラブを渡り歩き、

現在は3シーズンに渡りモンゴル国内リーグでプレーしているサッカー選手です。

渡邉氏はモンゴルリーグでプレーする傍ら、

U-16モンゴル女子代表チームの指導やサポートにも尽力されていて、

その活動の中でU-16女子選手が足に合っていないスパイクや偽物スパイクを履いていることによって、

様々な怪我を招いている惨状を目の当たりに...。

モンゴル国内ではサッカーショップがほぼなく、

また、有名スポーツメーカーのスパイクを模倣したフェイク品も流通しており、

モンゴル国内ではサッカースパイクやサッカー用品が入手しづらいという現実が...。

この現状をどうにかしたいという気持ちから、シーズンオフで日本へ一時帰国した際、

とあるきっかけから関西のサッカーショップ「モリヤマスポーツ」の方にモンゴル国内のサッカー用品事情を相談。

その惨状を知ったモリヤマスポーツのスタッフさんが

倉庫に眠っていた試し履き用サンプルのスパイクをU-16モンゴル女子代表選手に寄付することを決断し、

渡邉氏が主導してU-16モンゴル女子代表選手の面々にスパイクを渡すことができたのが2018年の出来事。


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U-16モンゴル女子代表チームに寄付されたスパイクは

パティークXや、パティーク11プロHG、コパ17.1HGなどを筆頭に

アシックスのメナス2、リーサルスナイパー、

ミズノのウェーブイグニタス3MDなど、

計30足ほどにものぼりました。

この中でアシックスのスパイクが一番人気を誇り、

女子選手の中で争奪戦になったというエピソードが

のちのモンゴルA代表男子チームのアシックススパイク全員提供の布石となります。



モンゴル代表はアジア1次予選を突破

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モンゴル代表はアジア1次予選でブルネイ代表と対戦し、

1stレグは6月6日にホームで2-0で勝利。

6月11日、2ndレグでブルネイの本拠地に乗り込んだモンゴル代表チームの一部の選手は

ブルネイのサッカーショップでサッカースパイクを購入。

それを試合でいきなり履いた選手の中で

買ったばかりのスパイクが足に合わず、靴擦れが発生してしまった選手が続出。

そうしたアクシデントがありながらも2ndレグは2-1で敗戦となりましたが、

アウェイゴール差でブルネイに勝利し、見事アジア2次予選進出を勝ち取りました。



7月17日、アジア2次予選の組み合わせ決定

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2019年7月17日、2022年に開催されるカタールワールドカップアジア2次予選の組み合わせ抽選会が行われ、

日本代表はグループFに入り、世界ランク95位のキルギス、120位のタジキスタン、138位のミャンマー、187位のモンゴルと同組に入ることが決定しました。

このニュースはすぐさまモンゴルリーガーの渡邉氏の耳にも入り、

日本代表とモンゴル代表が対戦する際に何か有意義なことができないか、画策。


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モンゴル国内では依然としてサッカー用品が入手しづらい現状があり、

モンゴル代表選手といえどもサッカースパイクを購入するのは海外の遠征先で苦労して購入することがほとんど。

さらにモンゴル代表選手の中でメーカーと契約できている選手はまだ一人もいません。

そうした中でモンゴル代表の男子選手にもスパイクを寄付することができないか思い立ち、

渡邉氏は再び関西のモリヤマスポーツのスタッフさんに相談してみたところ、

「じゃあ今回は試し履きサンプルのスパイクじゃなく新品のスパイクを提供します!」という太っ腹な提案が出現。

さらにいろいろと話し合っていく中で

埼スタでモンゴル代表選手全員がスパイクを統一して日本代表と試合を行えば、

「かなりインパクトがありそうだよね」という話に発展。


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その際、以前U-16モンゴル女子代表選手たちにスパイクを寄付したとき、

アシックスのスパイクが人気だったという事、

アシックスのスパイクが選手たちの間で争奪戦になったというエピソードを思い出し、

「じゃあモンゴル代表の選手全員がアシックスのスパイクを履くのはどうか」

という案が浮上。

・アシックスのスパイクなら万人の足に合いやすい

・日本のメーカーであるアシックスのスパイクを履いてもらうことでモンゴル代表選手に日本のモノづくり技術の高さを体感してもらえる

・モンゴルA代表の来日メンバー全員分、希望サイズのスパイクを寄付するが、全員着用の制約は設けずに、
普段から履いているスパイクか、アシックススパイクを試合で履くかの最終判断は各選手に任せる

という想定の元、とんとん拍子で話が進んでいきました。



この提案のパイプ役になったもう一人の日本人

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モンゴル男子A代表チーム全員にスパイクを寄付する案が浮上しましたが、

その時点ではあくまでも一つの案に過ぎず、

それを実現するためにはモンゴルサッカー協会の理解や許可を得なければいけませんし、

代表チームの監督・コーチ・スタッフの理解や許可、

さらには一番大切なA代表選手一人一人から理解や許可を得ないといけません。


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そんな中、渡邉氏やモリヤマスポーツと、モンゴルサッカー協会のパイプ役になったのが

現モンゴル代表でトレーナーを務めている日本人、錦戸雅俊氏です。

モンゴル代表の合宿・試合に帯同し、モンゴル語も堪能な錦戸氏がモンゴルサッカー協会に掛け合い、

「代表選手にスパイクを無償提供することを申し出ている日本人・日本企業があるのですが、いかがですか?」と提案。

その際、モンゴルサッカー協会は快諾し、代表選手にも理解と許可を得て、

見事モンゴル代表選手全員にアシックススパイクを提供することが実現できる運びになりました。



モンゴル代表チームは10月7日に来日

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モンゴル男子A代表チームの選手・スタッフの面々は

10月7日に来日。

都内のホテルに到着したのは7日の夕方頃だったため、

その日は練習は無しで休息日となりました。

その中で、事前にモンゴル代表選手にヒアリングし、


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全員分の希望サイズのアシックススパイクをモリヤマスポーツが用意。


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提供するアシックススパイクは

DSライトシリーズのトップモデル、『DSライトX-FLY4』をチョイス。

モンゴル代表選手にアシックスのフィッティングへのこだわりを存分に体感してほしいとの想いから

定価13,000円のDSライト3ではなく、定価2万円程度のトップモデルスパイクを提供することになりました。


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まずは宿泊しているホテルでサイズチェックや試着が行われました。

このとき、全員があらかじめ希望していたサイズでサイズ感がピッタリと合うとは限らないということを想定していたモリヤマスポーツの方々は

モンゴル代表選手のサイズ交換希望に応えるために予備のX-FLY4も用意していて

この時点でほとんどの選手に適正サイズのX-FLY4を手渡すことに成功。


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さらにDFなどの希望者には取替え式スタッドバージョンのDSライトX-FLY4 SIも提供し、

さらにモンゴル代表監督から

「全選手にグリップソックス(滑り止め付きソックス)も提供してほしい」との要望が来日直前に出たことから

渡邉氏は普段から自分がサポートしてもらっているスポーツメーカーのGIOCAに掛け合い、

GIOCAのグリップソックスも全員に提供することとなりました。

(試合ではスタメン中2人がGIOCAソックスを使用しました)


2日間の練習でX-FLY4を履き慣らして...いざ本番

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10月7日に来日したモンゴル代表チームは

7日に宿泊しているホテルでDSライトX-FLY4のサイズ合わせをし、

8日の夜には埼玉の某グラウンドで練習を行い、そこで初めてDSライトX-FLY4を着用してプレー。

モンゴル国内ではアシックスのサッカースパイクは流通しておらず、

この日、モンゴル代表選手は人生で初めてアシックスのサッカースパイクを着用。


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9日には試合会場である埼スタで前日練習を行い、

10日に日本代表との試合を迎えました。


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モンゴル代表のスタメンのうち、

8人がアシックスのDSライトX-FLY4を着用。


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モリヤマスポーツの方々はあくまでも全員分アシックスのスパイクを提供しただけで、

「試合で必ず提供したスパイクを履いてください」という制約は設けることなく、

普段愛用している自分のスパイクを履いても全然OKです、という条件の元、

スタメン11人中8人がアシックスのスパイクを着用した結果となりました。



モンゴルのサッカー環境・境遇の向上に繋がれば...

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モンゴル国内ではサッカー用品が入手しづらいのはもちろん、

モンゴルの平均月収は日本円に換算すると約4万円程度です。

平均月収が4万円という中で、モンゴルでサッカーをプレーしている選手たちは

なけなしのお金を払ってスパイクやサッカーウェアを購入しています。

また、モンゴルはFIFAランク187位で、モンゴル国内でのサッカーに対する人気度や環境面もまだまだな状況です。


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そうした中で、今回日本のサッカーショップがモンゴル代表選手に

1足2万円もするトップモデルのスパイクを全員分提供したという事実は、

モンゴルでサッカーを頑張っている子供たちや若いプレーヤーにとっては

非常に夢のある出来事・きっかけになりえます。

サッカーを頑張ってモンゴル代表チームに選出されれば、

そういった高待遇を受けることができて、より良いスパイクを履いてサッカーができるかもしれない...。

そういうことがモンゴルのサッカー環境下での一つのゴールとなれば、

モンゴル国内でのサッカー人気向上・サッカーの発展に繋がり、

ゆくゆくはモンゴルサッカーのレベルアップになりえる可能性を信じて

モリヤマスポーツや渡邉氏は頑張って今回の企画を実現したとのこと。


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発起人の渡邉氏や、渡邉氏のサポート役の砂原氏、

そしてモリヤマスポーツの方々は今回の企画実現のためにすべて無償で動き、

モンゴル代表の来日中は付きっきりでスパイクのことをサポートし、

モリヤマスポーツはスパイクを全員分無償提供しました。

アシックス社から金銭の享受は受けておらず、

あくまでも慈善活動の一環として今回の企画が成立したとのことです。

渡邉氏は約3シーズンに渡ってプレーしたモンゴルサッカー界に少しでも恩返しがしたいという想いから今回の企画を思い立ち、

それに賛同した砂原氏やモリヤマスポーツの協力も得て、

様々な人の想い、巡り合せが組み合わさって実現した本件。

私は今回の件にはなにも関わっていませんが、

渡邉氏からツイッターのDMで連絡を頂き、

今回の件をブログで記事にして頂けませんか?という提案を頂いたので、

記事で今回の件の経緯をすべて解説する記事を掲載した次第です。


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渡邉氏に直接お会いしてお話を伺った中で印象的だったのは

約3年に渡ってモンゴルでプレーしている中で

リーグ戦ではアウェイの試合でモンゴル国内をいろいろと巡る中、

「モンゴル国内でサッカーショップを1回も見たことがない」ということ。

そしてそういう事情があるために偽物のスパイクも出回っていて

やむを得ず偽物スパイクを買った一般プレーヤーがたとえ偽物であっても大事に大事に手入れしながら履いているという現状。


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いかに日本のサッカー環境・サッカーショップ事情が恵まれているかというのを改めて気付かされました。

都内にはたくさんサッカーショップがありますし、

地方に行くとサッカー専門店はあまりないですが、

スポーツ量販店やスポーツ用品店は地方にも結構ありますし、

amazonや楽天市場などでスマホでポチッと注文すれば早いと次の日には新品のスパイクを受け取れる環境が日本にはあります。

これは日本に住んでいれば当たり前の光景ですが、

一歩海外に出れば、それが当たり前ではない国が世界にはあります。

そういうことを今回の件で気付かされたので、

あらためて日本のサッカー環境、サッカーショップ環境に感謝するとともに

今後も誠心誠意サッカースパイクと向き合っていきたいな、と思った次第です。


それではまた次回!Gracias. Adios!