日本の再成長への一手を考える「目覚めるニッポン」。今回は柳井正ファーストリテイリング会長兼社長。政治的な発言を控える経営者が増えるなか、柳井氏はあえて直言をやめない。怒りともいえる危機感を示し、企業経営から政治まで大改革の必要性を説く。
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ファーストリテイリング会長兼社長
1971年ジャスコ(現・イオン)入社。72年、実家の小郡商事(現・ファーストリテイリング)に転じ84年から社長。2005年から現職。01年からソフトバンクグループ社外取締役。山口県出身、70歳。(写真=竹井 俊晴)
最悪ですから、日本は。
この30年間、世界は急速に成長しています。日本は世界の最先端の国から、もう中位の国になっています。ひょっとしたら、発展途上国になるんじゃないかと僕は思うんですよ。
国民の所得は伸びず、企業もまだ製造業が優先でしょう。IoTとかAI(人工知能)、ロボティクスが重要だと言っていても、本格的に取り組む企業はほとんどありません。あるとしても、僕らみたいな老人が引っ張るような会社ばかりでしょう。僕らはまだ創業者ですけど、サラリーマンがたらい回しで経営者を務める会社が多い。こんな状況で成長するわけがない。
起業家の多くも上場して引退するから、僕は「日本の起業家は引退興行」と言っています。今、成長しているのは本当の起業家が経営している企業だけです。
結局、この30年間に1つも成長せずに、稼げる人が1人もいない、稼げる企業が1社もない。いや、1社はあるかもしれないですけど、国の大きさからいったらあまりにも少ないし、輸出に依存していてグローバルカンパニーにはなっていない。稼いでいる人がいなかったら家計は成り立たないでしょう。30年間、負け続けているのにそのことに気付いていません。
柳井会長はインタビューの冒頭から、怒りをみなぎらせた表情で日本の現状を語った。そして話は政治改革に向かっていった。
日本出身ということは必要で、日本のDNAはすごく必要だけど、強みが弱みになっています。例えば、みんなと一緒にやるという強みが弱みになってしまっている。たとえば忖度(そんたく)で公文書を偽造するのは犯罪で、官僚なら捕まって当然でしょう。
民度がすごく劣化した。それにもかかわらず、本屋では「日本が最高だ」という本ばかりで、僕はいつも気分が悪くなる。「日本は最高だった」なら分かるけど、どこが今、最高なのでしょうか。
新聞のスポーツ欄を見たらよく分かります。日本選手が3位や4位になったという記事ばかりで、1位は結局、誰かが書いてない。オリンピックなどにたきつけたお祭り騒ぎで、ローマ帝国の「パンとサーカス」と一緒ですよ。国民がそうした生活に明け暮れ、気が付いたらパンが全部なくなり、サーカスをする費用もなくなっていくということです。
いわゆる「ゆでガエル現象」というものが全部でき上がってしまった。私はそんな日本についてあきれ果てているけれど、絶望はできない。この国がつぶれたら、企業も個人も将来はないのですから。だからこそ大改革する以外に道はないんですよ。
コメント111件
Koichiro
日本の現状に問題提起する記事に対するコメントを見ると、暗澹たる気分になる。本当にこのままで平気だと思っているのか?それとも、心の奥底では心配だけれど、それを認めたくないのか?
逍遥遊
幸せの定義はそれぞれ自由だとは思いますが、惨めな貧困は避けたいところです。日本が落ちるというよりも周りが上がり続けている実態を正確に認知できない我々には何か欠点があるように思います。人生経験が豊富な方だと思いますが、十数年海外に住み続けてよ
うやく見えてくる日本の危機が国内にいるとなぜか見えない?見ない?…これが不思議です。...続きを読む日本再興、最高
柳井さんの仰っていることは的を射ていると思います。
日本は良い意味でも悪い意味でも1億総中流と言われてきた。この言葉も今では死語となりつつある。つまり、変化をしないといずれ陳腐化するということ。
新しいイノベーションを起こすには異端児も必要
。ただし、日本人は不思議と他人と同じであることに安心する。海外に出てみると色々な人がおり、それぞれの得意な分野を持って、自信を持って生活している気がする。どうしたら昔のように希望を持てる状態になるのか、教育と政治が果たす役割が大きいと思う。また、就職活動で失敗すると這いあげれない今の雇用システムも国全体で考えれば損失が大きい。雇用流動化と大きな国としてのビジョンが必要だと思う。...続きを読む何度、資本を注入しても潰れそうな製造メーカーに資金を投下するよりは、新しいスタートアップ企業にお金を投下するなど、国策としてやる必要があるかもしれない。
green
でもユニクロのやってることって下請け叩いたり、非正規労働者を安く使ったりしてコストカットすることしかしてないんじゃないの?つい最近も無人レジの件で下請け業者にちゃんと払おうとしないから特許訴訟になったりしてるよね。
議員や公務員減らすのもい
いけど、その受け皿どうするの?今や民間企業だって儲からないからリストラするだけで、結局一部の役員の給料はよくなるけれど、一般社員は給料下がったり、首切られたりでますます日本経済は悪化する。...続きを読むまずは賃金上げて内需拡大していくしかないんじゃないの?ユニクロのやってることと柳井さんの言ってることは矛盾してる。
石田修治
定年退職
「日本は政治家と生活保護の人だけになる」は言い得て妙と言える。滅びるまでは行かないにしても、財政破綻は必至だと思う。「財政破綻は無い」と言い切る人が、何故かMMT理論には反対している。滅茶苦茶で無籍人と言う意味で柳井さんの意見には全く同感。
「憲法より日米地位協定改正を」にも大賛成で、日本はいまだに米国による占領下と殆ど変わらない状況にある。表には出ないが、軍事に関しては自衛隊は完全に米軍管理下にあると言える情強であり、それを生活面で保証しているのが日米地位協定だ。米兵は、米国本土で犯せば明らかに罰せられる犯罪人が、日本では米軍による軽い刑で済んでしまう天国なのだ。似た様な状況はキューバのグァンタナモ米軍基地で有名だ。米軍が捕らえたテロリストなどを米国内の軍事施設では実行出来ない様な拷問なども何の支障もなしに行われていた。要は、「どの国の法律も適用されない特別な地域」で日本全土がその対象になっている様なものだ。日本で起きた犯罪は、日本の警察が捜査し、日本の法律に基づいて罰せられるのが当たり前なのに、そんな事すらできていない。決まり文句は日米政府が声を合わせて「運用で対応する」だ。戦後70年が過ぎてもいまだに米国に従属している姿は醜い以外の何ものでも無い。今から何10年も前に、有名な作家が「NOと言える日本」と言う主張をした。彼は、その後自民党の国会議員や知事などを歴任したが、米国に対して「NOと言える」立場にはなかったのか、その後も何も変わっていない。巨額の借金財政を支持し続けている日銀は買い集めた4割を超える日本国債の「償還辞退」でもして、日本の借金を減らしてもらいたいものだ。歳入の倍もの予算を20年位上も組み続けて平然としている政治家は、即刻辞めてもらいたい。財政を身綺麗にして次世代にバトンタッチしなければ死んでも死にきれないでは無いか!...続きを読むコメント機能はリゾーム登録いただいた日経ビジネス電子版会員の方のみお使いいただけます詳細
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