大型で非常に強い台風19号は12日夕から夜にかけ、勢力を保ったまま静岡県や関東南部に接近して上陸する見通しだ。夜に向けて雨風がピークに達する地域が多いとみられ、気象庁は7都県に大雨特別警報を出した。首都圏では鉄道の大規模な計画運休が同日朝から始まった。先月の台風15号で大きな被害を受けた千葉県などでは竜巻とみられる突風が発生、1人が死亡した。停電も発生し、厳戒態勢が続いている。
12日午前8時すぎのJR新宿駅南口。電車の運休予定を告げるアナウンスが流れる中、隣接するルミネなどの商業施設は入り口に臨時休業の告知を掲げ、周囲を行き交う人もまばら。駅構内の売店で働く40代の男性は「普段なら土曜日の朝でも混雑しているが、こんな風景は初めて」と戸惑いの表情を浮かべていた。
千葉県や同県市原市消防局によると、同日午前8時すぎ、同市で竜巻とみられる突風が発生した。車が横転して50代の男性が死亡し、子ども3人を含む計5人が負傷、住宅1棟が全壊するなど少なくとも10棟に被害が出た。
気象庁によると、台風19号は12日正午現在、八丈島の西約210キロを時速30キロで北北東に進んでいる。中心気圧は945ヘクトパスカル、中心付近の最大風速は45メートル。中心南東側370キロ以内と北西側280キロ以内は風速25メートル以上の暴風域となっている。
非常に強い勢力を維持したまま12日午後6時には伊豆半島南部の石廊崎の西南西約30キロに達し、その後、上陸するとみられる。
西日本から東北地方の広範囲で雷を伴う猛烈な雨などが予想され、13日正午までの24時間予想雨量は東海地方600ミリ、北陸500ミリ、東北や関東甲信400ミリなど。13日にかけての最大風速は東海と関東甲信地方で45メートル、東北や近畿でも30~35メートルに達する見通しだ。
東京電力パワーグリッドによると、千葉県内では12日午前8時20分ごろ、一時的に数十万件の停電が確認されたが、同9時50分時点では約9500戸まで減少した。同社が状況や詳しい原因を調べている。
全日空は12日、羽田、成田、静岡各空港を発着する国内線全便を欠航。日本航空と合わせた欠航便は国内線を中心に1300便以上、影響人員は約21万人に上った。東海道新幹線も東京―名古屋間で始発から運休、名古屋―新大阪間は午前6時台発の6本のみの運行とした。
JR東日本が運行する東北などの新幹線や首都圏の在来線、私鉄各社も順次運転を取りやめた。JR東によると、山形新幹線「つばさ」などについては13日も終日運休予定。各社は台風通過後の安全点検を経て13日の再開時期を判断する。
成田空港は12日午前11時から国内線と国際線すべての旅客便の着陸受け入れを停止した。羽田空港も同日午後2時以降の受け入れを停止する方針だ。
高速道路でも通行止めが続き、午後にかけて新東名や中央道などの複数区間も通行止めとなる可能性がある。
影響はレジャー施設や飲食にも及んだ。
オリエンタルランドは東日本大震災の影響を受けた2011年春以来、東京ディズニーランド(TDL)と東京ディズニーシー(TDS)の両パークを休園した。
よみうりランド(東京都稲城市)やサンリオの屋内型施設「サンリオピューロランド」(多摩市)も12日の営業を見合わせた。利用客の安全を考慮したなどとしている。
飲食ではロイヤルホールディングスが関東、東海圏で「ロイヤルホスト」「天丼てんや」を原則的に終日休業。回転ずし最大手のスシローグローバルホールディングスも、関東や東海地方の約150店舗を12日に臨時休業することに決めた。
日本マクドナルドは交通状況などに応じ、店舗ごとに休業を判断するという。大手百貨店やスーパーでも首都圏などの店舗を臨時休業する動きが相次いだ。