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(喜美子)大阪?
(常治)そや。 大阪で働け。
春から お前は大阪や。
♪~
分かった ほな 行くわ。(マツ)喜美子…。
大阪 働きに行きます。
♪~
♪「涙が降れば きっと消えてしまう」
♪「揺らぐ残り火 どうかここにいて」
♪「私を創る 出会いもサヨナラも」
♪~
♪「日々 恋をして胸を焦がしたい」
♪「いたずらな空にも悔やんでいられない」
♪「ほら 笑うのよ赤い太陽のように」
♪「いつの日も雨に負けるもんか」
♪「今日の日も涙に負けるもんか」
人生にはなどうしても人に頭下げなならんそういう局面が3回はある。
お父ちゃん しょっちゅうやん。やかましいわ アホ。
ええか?床なめるほど顔近づけて腹の底から声絞り出して「お願いします」言うて お願いする。
そういうのがな 人生には3回ある。
その1回が これや。
床なめてきたん?苦い味したでえ もう。
ほんま?ハハハッ。
うそか~。 お父ちゃんの口半分は うそでできてんな。
社長の名前 見たか?
荒木さだ いう 女や。 いとこや。いとこ!?
そんなんいたん 大阪に? お父ちゃんの?
せやから そう心配はいらん。悪いようにはならん。
そうか。
直子も百合子も喜美子おらんようになったら家の仕事 ちゃんとせな あかんで?(2人)はい。
大丈夫け?
(常治)返事!(2人)はい!
お給料もろたら送るしな。何か欲しいもんあるけ?
(直子)ほな テレビジョン。
テレビジョン!?(百合子)うちも欲しい!
テレビジョン欲しい!何年かかるか分からへんで?
はよしてや? うちも頑張るし!頑張る!
分かった。 ほな みんなで頑張ろう。
(常治)えらい ごっつい頼みやな もう~。
翌日 喜美子の担任の寺岡先生が訪ねてきました。
ほう 金賞。
(寺岡)金賞取ったこと言うてなかったん?
我が校では 川原さんだけです。
絵だけやない 勉強も ようできます。特に数学な?
今 信楽でな 上の学校に進みたい子を支援しよういう動きがあるんや。
川原さんは優秀やから上の学校に進むというのは どうやろ?
先生 それやったらなんとかしてあげられるで?タダで高校行けるかもしれません。
女に 学問は必要ありませんわ。
(寺岡)ほやけど…。この子が数学得意なんはうちの状態がどうか ちいちゃい時からよう計算してきたからです。
春から うちは若い男の子を2人 運送で雇うその給料が なんぼなんぼ…妹が2人おって家族の生活が なんぼかかる。瞬時に いろいろ分かっとるんです。働きへんかったら 食べていけんいうこと。
恥 さらけ出すようなこと言うて情けないですけど…。
あ… いえ!余計なこと言うて こっちの方が…。
(常治)大阪行って 仕送りする。この子には それ以外の道はありません。
♪~
そうして喜美子は中学を卒業する日を迎えました。
(信作)…で いつ行くんけ?
帰ったら準備せな。急やの。
会えんくなると思うと寂しいわタヌキ。タヌキかい!
辛気くさい話 聞かんで済むんはうれしいわ~。
うれしいんかい。
・(照子)喜美子!何や?
いた~! 喜美子!
何で勝手に帰るん!?卒業式の余韻も何もないやんけ。
うち忙しいさかい 言うたやろ。大阪行く話やったら 聞かへんで!
約束したやろ!? うちで働けるよう丸熊陶業のみんなを説得してあげるて!
約束はしてへんわ。
行くなら うちを倒してから行け。何で?
うちは 婦人警官 諦めた。夢やったけど 「諦めろ」言われた!
何の話や。「丸熊陶業 継げ」言われてる。
お兄ちゃん亡くなったからうちが継がんと あかんて。
うちは一生 信楽や!
行くなら うちを倒してから行きなさい。
信作 走って持ってきて。はっ?
柔道着2着 道場にな。あいつ倒したるわ。
ん!
♪~
来い!「礼に始まり礼に終わる」。 習うたやろ。
礼!
来い!柔道着 届くまで待たんか。
ん~ もう じれったいの~。
草間流柔道は 学校の制服着たままやるもんやない…。
キャ~!何や!?ギュ~したる~。
これ 柔道ちゃうやろ…。 放せ。嫌や。
ちょう… もう… ええ加減にせえ!
しゃあない 来い。よ~し 来い!
♪~
あれ? ほれ…。
♪~
とやあ~!
ああ…。アッハッハッハ…。
い… 息できひん…。
アッハッハ 新聞紙 詰めたった。
鼻血か…。出てへん。出てへんのかい!
アハハハハ…。はあ…。
中学も終わりや。うち性格悪いさけ 友達できひんかった。
ハハハハ。高校行っても できひんわ。
あんた いいひんと困るわ。
あんた いいひん信楽は想像できひん…。
大阪… 行ったら あかん。
信楽 捨てるんけ?
大阪行ったら あかん。許さへん! 一生許さへんで!
♪~
照子…そんなんやから友達できへんのやで?
(泣き声)ヘヘヘヘッ アハハハハッ。
(泣き声)
ハハハハッ。 さようなら~ 照子~。
そんなん聞きたない~!元気でな~。
あんたのこと忘れへんで~。言うな~!
(笑い声)
なあ お父ちゃん。
うん?
・タヌキの道 知ってる?
信楽に来たすぐの時になあの道で ほんまもんのタヌキに会うたで。
・「よそもんはタヌキに化かされるんや」信作が言うてな。
ほな 化かしに来たんやな。
ほやけど あれ以来 会うてへんねん。
見たことない。
ほんまのタヌキは現れへん。何でか分かる?
もう よそもんやないからな。
うちは よそもんちゃう。
うちは 信楽の子や。
うちは 信楽 好きや。
うちは…。
うち…。
大阪行きたない!
(泣き声)
ここにいたい! ずっと信楽にいたい!
・お父ちゃんとお母ちゃんと…みんなと…。
みんなと ここで暮らしたい!
(泣き声)
・タヌキの道の先 ず~っと行ったらな左に折れて また ず~っとず~っと登っていくんや。行ったことあるか?
細い道行ったらな急に パアッと開けるんや。
そこから見える夕日が きれいや。
・よう見とけ。
大阪行ったら もう見られへんで。
♪~
ここで見つけた焼き物のかけらを喜美子は 旅のお供にしました。
♪~
川原喜美子と申します。よろしくお願いします。
荒木荘でございますぅ。
かわいらしいなあ。うわ~い!
こうですか! どうですか!?
あんたには無理や。 信楽帰り。
もう~!