前回は、人間の免疫力とがんの攻防と、現在治療に使われていて、今後も活躍が期待できる薬剤についてご紹介しました。
今回がんと免疫の関係について、わかりやすいと思った例がありますので、ご紹介します。
重症な心臓病(重症心不全)の方への強力な治療法として、心臓移植という方法があります。現在は以前よりのイメージよりもはるかに多い心臓移植が行われています。
心臓移植は他の方の善意の意思で、その方の心臓を移植させていただくものですが、当然、他の方の心臓ですから拒絶反応が起こるため、移植する際、移植後には免疫を抑制する(免疫にブレーキをかける)薬剤を続ける必要があります。
もうお分かりかと思いますが、心臓移植後のがんの発症が心臓移植のリスクになります。免疫が弱くなるのですから、その分、がん細胞は増殖しやすくなります。
もちろん心臓移植したら全員がそうなるわけではありませんが、リスクが上がるのは確かなようです。
これを聞いた時に、免疫がどれだけ発がんを抑えているのか、改めて気づかされました。
前回の内容をもう一度整理すると、
1、がん細胞の増殖を抑えているのは人間の免疫機構である。
2、免疫が弱くなると、がん細胞は増えやすくなる。
3、がん細胞は免疫からの攻撃から逃げるために、免疫にブレーキをかける場合がある。
4、現在の治療薬には、
a) 今までの細胞障害性抗がん剤
b) 分子標的薬
c) 免疫チェックポイント阻害薬 が主にある
(他にもCAR-T療法、エフェクターT療法などありますが、ややこしくなるので、また別の機会にします)
分子標的薬には、がん細胞にある特殊な目印(マーカー)を狙い、がん細胞の増殖を抑える作用があり、免疫チェックポイント阻害薬には、がん細胞からブレーキをかけられた免疫細胞(免疫細胞のブレーキを掛けられるある部分を免疫チェックポイントという)からブレーキを外す免疫チェックポイント阻害薬の2つがある。
ただし、これらの薬物療法は使用できる場面が限られていますし、当然副作用のリスクもあります。
今後の適応される状況が拡大される方向にいくことを期待したいと思います。
また、免疫を強化する自分でできる方法はないか、医学的に考察できればご紹介したいと思います。
ただ、改めてですが、早期発見、予防の重要性も強調したいです。