エ・ランテルの執務室。そこで
「随分と楽しそうじゃない、デミウルゴス。」
「ああ、アルベド。パンドラズ・アクターからの報告を聞いてね。メイド悪魔……
「なるほど、アインズ様は
「他にも〝冒険者チーム〟という本来国家運営に関わらない彼女たちが、エ・ランテル襲撃に際し、アインズ様のアンデッドと共闘し、聖王国に反旗したという事実も大きい。こちらは彼女達のスキャンダルを握ったこととなる。この手札は強烈だ。切るタイミングさえ間違え無ければ、彼女達を駒として扱うことも出来るだろう。」
「流石アインズ様よね!ここまでお考えになってあの女共を呼んだなんて!」
「勿論アインズ様の事だ、我々はその深淵なるお考えの一端を察するに過ぎないだろうがね。……リ・エスティーゼ王国は風前の灯火だ。拠点を失った彼女達は何処へ行くか?バハルス帝国は既に我が国の属国となった。ローブル聖王国は論外。」
「残るのはスレイン法国や評議国への道だけれども、この手札は実に有効ね。アインズ様のアンデッドと共闘した事実を広めれば、彼女達を受け入れるのは難しいというわけね。魔導国を拠点とさせる計画を練ることだってできる。勿論モモンほどの手札とはいかないけれど、それでも高名な冒険者という駒は持っておくに越したことはないもの。」
「ああ。ただ彼女達は少し焦臭い匂いがする。上手くいけばパンドラズ・アクター……モモンの役目をそのまま蒼の薔薇に委ねることも可能だが、法国や評議会からなんらかの動きがあれば計画を練り直さなければならない。どちらにせよ膠着した現状を変えうる駒となる。」
「なるほど、どちらに転んでもあの女どもはいい駒ね。そうそう、駒と言えば、アインズ様からの課題。〝扇動家という駒〟と〝口伝に依存しない情報伝達の手段〟の進歩状況はどうかしら?」
「やはり難しいね。機関紙の発行などを行おうにも、この世界は識字率が低すぎる。となれば音声による情報伝達だが、国土全域に
「やはり愚民どもには稚拙な祭りや像による崇拝が効果的と思うけれども、アインズ様がお止めになるからには、相応の理由があるのよね……。」
「あれから色々と考えてみたのだが、やはり万という単位で国政を見据えるアインズ様のお考えには到底及ばない。ドラゴンを使って、空中からアインズ様を讃えるビラを一斉に雨霰と投下する案も却下されてしまった。ああ、アインズ様、そしてウルベルト様。〝プロパガンダ〟という悪の美学、その深潭なる世界へ及びも付かない無能なわたくしを御赦し下さい。」
「一斉の伝達……そう以前アインズ様は〝ジーエムコール〟なるものが効かなくなったと話されていたわ。この世界にナザリックが転移した弊害によるものかしら?何でも〝ジーエム〟とはアインズ様も一目を置く一斉に情報伝達をする機関だとか。」
「なるほど、興味深い。もし我々に〝ジーエムコール〟の再現、又は類似したマジック・アイテムの再現が出来たならば、アインズ様もさぞお喜びになられるだろう!」
「俄然やる気の出てくるお話ね!
「面白い意見だ。そういえば、至高の御方々の住まう神域ではオーパーツとして〝らじお〟なる類似した代物が存在したという。もし完成させられれば、この世界に〝情報〟の革命を起こす事だって可能だ。」
「アインズ様の庇護下にいる者たちが、毎日アインズ様のお声を聞き一斉に平服する!いえ、偉大なるアインズ様のお声を毎日だなんて、下等生物共には贅沢すぎるわ!それはわたし…………たちだけの特権よ!」
「しかし、一斉に広大な国土全域へ轟かせるのではなく、一定区画ごとで情報を送受信させるか……。ナザリックが誇る技術ならば現実的かもしれない。思想誘導・煽動・情報操作・果ては娯楽に至るまで、その全てを掌握さえ出来る。行商人や口コミに依存した情報伝達を基盤とした計画を根底から覆し、あらゆる計画を数十年単位で縮めることも容易だろう。」
「面白くなってきたわね!」
「ああ、机上の空論は好みではないが、もし情報管制が出来上がればというアイデアが捗って仕方ないよ。牧場の