アルベドさん大勝利ぃ!【完結】   作:神谷涼

41 / 41
 なんか、さらっと書けてしまったので連日投稿……。
 商業原稿やれよ……。

 最終話のちょっと後。
 まだザナックやジルクニフは来てません。
 ラナーはまだ人間で、クライムと子作りしてる頃です。



後日談2:その後のカジットさん

 ナザリック地下大墳墓。

 第九層、モモンガの執務室。

 主だった階層守護者やプレアデスらが集まる中。

 男が一人(ひざまず)いている。 

 頭髪こそ復活していないが、彼の肉付きや顔色は十分に健康的だった。

 

「おお、かなり血色がよくなったではないか。レベリングもしてもらったが、状況はどうだ? 報告があるのだろう?」

「ははぁーっ、おかげさまで新たな呪文も多数習得し、独自の呪文も編み出しました!」

 

 男――カジット・デイル・バタンデールが、ひれ伏した。

 その姿に、媚びもへつらいもない。

 絶対的な感謝と敬意が溢れている。

 

「ほう、独自の呪文! 教えてくれ、どのような呪文だ?」

 

 取得呪文数では、ユグドラシルでも最多級だったモモンガ。

 聞いたこともない呪文とあらば、今も好奇心が刺激される。

 カジットやデイバーノックに、最も期待している分野なのだ。

 

「はい。母の蘇生において、まずは失われた母の霊魂を呼び出す必要があると感じました。よって、死者の霊魂を呼び寄せ、対話する第3位階呪文――〈亡霊対話(スピーク・ウィズ・デッド)〉を編み出しました」

「具体的にはどんな効果だ?」

 

 好奇心から身を乗り出す。

 

「は。死者の魂を肉体に呼び戻し、質問に答えさせる呪文です。腐敗していない遺体、少なくとも口が必要なため、遥か過去の霊魂を呼び戻すには至りませんが。呼び出した霊魂は基本的に下位霊体アンデッド。容易に支配し、秘密を――」

「なんだと!」

 

 モモンガの目が紅い光を放った。

 興奮からか、黒と紫の入り混じったオーラを放つ。

 

「も、もしやご無礼が……!」

「ご不快に思われたのでしたら、この男、処分いたしましょうか」

 

 カジットが恐怖にうずくまり、控えていたナーベラルが殺意を見せる。

 

「いやいや、すまない。逆だ。お前たちも有用性は、わかるだろう?」

「ええ。これは画期的な情報収集手段だわ」

 

 アルベドが笑みを浮かべ。

 デミウルゴスとパンドラズ・アクターも頷く。

 

「ど、どういうことでしょう?」

「わからないかな、マーレ。これまでは殺してしまったり、勝手に死んでしまった場合……蘇生させた上、支配したり拷問したりしなければ、いけなかったろう?」

 

 おかげで、情報を抱えたまま死者が出たら、様々な人員が呼ばれ、魔法やスキルを使う必要があったのだ。

 

「はい、いつもペストーニャさんかルプスレギナさんを……」

「だが、この呪文なら、頭部さえ残っていれば必要な情報を抜き出せる。とりあえず殺して首だけ保存しておき、必用な時に必用な情報を聞き出してもいい。不要な人間に餌をやる必要はなく、体はエントマたちが食べるのもいいね。蘇生と違ってレベルによる蘇生不可も起きない。実に画期的でありがたい呪文だよ!」

 

 おずおずと聞くマーレに、嬉々としてデミウルゴスが説明する。

 デミウルゴス自身、簡単に死に過ぎる人間には悩まされていた。

 満面に笑みを浮かべた顔には、カジットへの感謝すら見える。

 

「あっ、じゃあうっかり殺しちゃっても大丈夫なんですね!」

「王国貴族ハ、スグ死ヌカラナ」

「それは助かるでありんす!」

 

 王国貴族粛清や法国攻撃において、今まで“殺さないよう”かなりの注意を払って来た。

 それでも、ショックやストレスで死ぬ者は少なくない。

 ほんの少し、力を入れ過ぎて殺してしまう場合もある。

 至高の御方が、それを叱ったり失望したりはしないが。担当者にとっては、己の至らなさ、情けなさとして、心を痛める要因なのだ。

 

 

 

 そうして、即座に運ばれて来た貴族の死体により、御前実験が為された。

 かつての王国貴族浄化初期、あっさりと死んで氷漬けにされていた死体だ。

 

「お前の名を言え」

『私はチエネイコ男爵、誇り高き王国貴族ですぞ』

 

「お前の望みを言え」

『ラナー王女を嫁に迎えて、七番目の六大貴族となるのです』

 

「お前の最も隠したい秘密を教えよ」

『バルブロ王子を八本指の娼館に連れて行き、黒粉の味を教えました』

 

「お前が最も愚かだと思う貴族を言え」

『バカの中のバカ、フィリップ。下級貴族の三男坊の分際で――』

 

 長くなりそうなので、カジットは咄嗟に別の質問をする。

 

「魔法についてどう思う?」

『くだらん手品です。歴史ある貴族には通用しませんな』

 

 効果時間が切れたか、間抜けに『な』で口を開けたまま死体は硬直した。

 魔法で操られながらの最後の答えに、NPCらも笑いが漏れる。

 

「すばらしい! こんな漠然とした質問でも答えるのか!」

「当人ですから……ただ、本人の主観が混じり、偏見や嘘もそのままですので、ご注意ください」

 

 モモンガの称賛に、カジットは恐縮する。

 彼としては、あくまで母を蘇生させる前準備の――学術的価値はともかく、戦闘にも役立たない、評価されない呪文のつもりだったのだ。

 パンドラズ・アクターが、拍手する。

 

「第3位階魔法なら、使い手も増やせるでしょうッ。これは各種情報収集や諜報活動、犯罪予防などなどッ! すっばらし~い、価値を持ちます!」

「ありがとうございます!」

 

 遥か格上、神にも等しい者たちから誉めそやされ。

 カジットとしては、それだけでも過大な褒美だ。     

 

「カジットよ、よくやった! これは我らナザリックにおいて、画期的な呪文となるだろう! 有望な弟子、魔法職系の女淫魔(サキュバス)らにも伝授せよ!」

「おお!」

 

 カジットが、歓喜の色をさらに強める。

 モモンガとしても、攻撃・防御・移動・探知などといったユグドラシルで既知の呪文より、この世界ならではの“便利”な呪文こそ高く評価している。

 

「そして、上位呪文を研究せよ! 遺体なしで霊魂を呼び出せれば、ホムンクルスやクローンの肉体を使って、疑似的な蘇生や不死化も可能となるだろう! お前の母の蘇生も叶うはずだ!」

「承知いたしました!」

 

 遥か高みにありながら己を信じ、褒め、また生涯の目的を讃えてくれるモモンガに。

 カジットは心酔しきっている。

 有用性を証明し、狂信じみた忠誠を示す彼には、NPCらの目もやさしい。

 

「さて……カジット。お前は私の予想以上の成果を上げた。そして、私の言った通り、健康も取り戻しつつあるようだ。よって、お前に褒美を与えよう」

「ありがたき幸せにございます!」

 

 額を床にすりつける。

 

「我らは多くの人間――王国貴族の犠牲者を女淫魔(サキュバス)に変えた。しかし、お前を悪魔やアンデッドに変えては、申し訳ない。よって我らにも補充の効かぬこの“昇天の羽”を以て、お前を天使に変える」

「なんと――! よ、よろしいのですか!」

 

 それほどの褒美をもらえるほど、評価されるとは思っておらず。

 カジットは喜びより、戸惑いの声をあげてしまう。

 

「よい。お前は己の有用性を証明した。今の命令を遂行するためにも、不死の肉体を得るべきだ。研究中に事故や病で命を落とされては、我らの喪失。この決定は、私自身のためでもある」

「おお……私如きをそこまで……もったいなや……!」

 

 感涙するカジットに、NPCらも羨望の視線を送る。

 狂人、悪人、背教者、利用物――過去のカジットに向けられた目は、そんなものばかり。

 だが、今こそカジットは、遥か雲の上の存在に讃えられ、羨まれている。

 法国の大神殿を消滅させ。

 腐敗した王国を清めた神。

 そう、まさに神によって、カジットが認められ讃えられているのだ。

 事実、NPC全員が認める形、能力で成し遂げた功績で、彼はこの世界で初めて讃えらえた人間なのだ。

 少なくともシャルティアやマーレにも褒められた人間は他にいない。

 

女淫魔(サキュバス)たちもそうだったが……彼女らは己の理想の年齢、最も美しい姿となっている。天使とて同様だろう。さあ、カジットよ受け取れ。そして思い描くのだ。お前が母に出会う時の姿を」

 

 モモンガの手にいつの間にか現れた、神々しく輝く羽根が……カジットに差し出される。

 

「あ……あ……」

 

 両手を差し出し、恭しく受け取れば、神聖な光が彼を包んだ。

 母を思い描く。

 かつての母の姿。

 そして母の傍にいた頃の己。

 母の死を知った日の、蘇る母の記憶の中にあるであろう姿。

 まだ外で走り回っていた少年の……。

 

「ほう、そうか……それがお前が母を失った時の姿か」

「時の流れは残酷なのね」

 

 モモンガが、どこか感慨深く頷いて。

 アルベドが、酷くしみじみと言った。

 

「ああ……これは……」

 

 喉から出るのは甲高い、声変わり前のもの。

 魔法化されたローブは体格に合わせて変わっているが。

 目の前に広げた手は小さく、柔らかい。

 顔に触れれば、瑞々しい、まるで子供のような……。

 

「どうぞ」

 

 戸惑うカジットに、ソリュシャンが鏡を見せる。

 

「おお……あの日の、あの頃の、姿……!」

 

 背中から輝く翼こそはえているが。

 あどけなく、活発な……幼い少年時代。

 背後には、母の姿が幻視される。

 感謝と感動と感激で、カジットはとめどなく涙を流した。

 

 

 

 しばらくして。

 スレイン法国に勝利したナザリック魔導国へと、隣接するリ・エスティーゼ王国の国王ザナック、バハルス帝国の皇帝ジルクニフが、多くの供を連れて訪れた。

 地上部は対応のため、多忙を極める状況。

 そんな中、カジットはなぜか地下に呼ばれていた。

 多忙な状況ゆえか、NPCらはおらず。

 モモンガの横には、アルベドではなく見知らぬ女が1人いるのみ。

 魔導国でも墳墓でも見たことのない人物だった。

 

「研究の邪魔をして、すまないな。ラナーやニグンは来賓の相手に忙しく、お前にも歓待を頼まざるをえないのだ」

「いえ、モモンガ様のお呼びとあらば。しかし、私は学究の徒。来賓の相手には礼節の類も……」

 

 そんなカジットに、モモンガは気まずそうな顔を見せる。

 

「いや、礼節は特に問わん。ただ、お前はその……地上では、相当な女淫魔(サキュバス)に誘われても、応じておらんようだな?」

「は。今までもこれからも、研究に打ち込むため、色に溺れぬよう努めております!」

 

 そんなカジットの答えに、モモンガは苦笑する。

 

「いや、長き時をそのように気を張って過ごしてはならん。百年千年をかけても、望みを叶えるべく歩む力を得たのだ。あまり気を張っては、叶った後に腑抜けてしまうぞ」

「それは……」

 

 確かに、ありえる話だった。

 母が実際に復活し、可能ならば母も天使か……吸血鬼や淫魔にでも変えてもらったとして。その後の日々をどう送るのか、カジットには思い描けない。目的を達成した後は、魂の抜け殻にもなりうる。

 

「心に余裕を持つためにも、少しは女淫魔(サキュバス)らに応じてやれ。今回のお前に頼みたい件も、その前の……まあ、練習と思うがいい」

「は?」

 

 首をかしげる。

 

 だが。

 

 しかし。

 

「すんすん……はぁはぁ……瑞々しい匂い」

「なっ!」

 

 いつの間にか背後に現れた女が、カジットを羽交い絞め……いや、抱きすくめていた。

 モモンガの横にいる女とほぼ同じ衣装、同じ顔。

 双子だ。

 女はそのまま、カジットのうなじに顔を押し付け、すうはぁと荒く深呼吸する。

 

「神聖な味……さすが天使……しかも童貞」

「や、やめぬか!」

 

 さらに頬や首筋を舐めて来た。

 未知への嫌悪感と不安に、カジットはぞわぞわと震える。

 身をよじるが、魔法職専業のカジットでは、相当にレベルアップしていようとも、忍者の拘束を振りほどけない。

 

「だいじょうぶ……ちゃんと反応してる……」

「どこを触っておる!」

 

 咄嗟に魔法を唱えかけるが。

 

「カジットよ、彼女は我が恩人の姉妹だ。相手をしてやれ。お前にとってあまりにつらいなら、一晩で止めるようにしよう。とりあえず、明日の朝までは、彼女の伽の相手を(つと)めよ」

「な……は、はい……わかり……ました」

 

 初めて、モモンガの言葉に即答できなかったカジット。

 一方、彼に絡みつく女忍者――ティナは満面の笑みを浮かべた。

 

「よいではないかよいではないか……カジッちゃんも、気持ちよくなる」

「その呼び方はやめよ!」

 

 わめくカジットを抱き上げ、ティナは連れ去る。

 二人のための客室は、すでに用意されていた。

 残された二人が、顔を見合わせる。

 

「これでいいのか?」

「ん。あれでティナも満足する」

 

 ティアは既に、モモンガに身をすり寄せ、指を絡め始め。

 

「それなりのアイテムを礼に渡そうと思っていたのだが……」

「いい。あれが最高の礼。それに……私はモモンガを抱けるだけで十分」

 

 横からキスをし、くいくいと手を軽く引くティア。

 この場でするか、部屋に移るかと誘っているのだ。

 

 そんなティアに甘えるように、もたれつつ。

 モモンガは、夫婦用とは別の寝室へ転移するのだった。

 




 カジットさんが、おねショタ逆レの結果、トラウマを負うのか、性に目覚めるのか、そのあたりは読者諸氏の想像にお任せします。マーレを差し出すのもなぁってことで、ティナへのプレゼントはカジットになりました。
 その後、犠牲者ないし同好の士を増やすべく、カジットがニグンさんをそそのかす可能性があります。その場合、ショタ天使になったニグンさんが、またまたティナにいただかれるでしょう。

 「スピーク・ウィズ・デッド」はD&Dでは最初版からある呪文です。メカニズムやルールは版によって違うのですが、今回はカジットさんの目的に合わせてます。死者の証言が聞けるので、拷問も探偵も不要になる、けっこうなチート呪文です(オバロだと特に)。殺して口封じが不可能になるため、陽光聖典が受けてた呪いとかも、死んでからじっくり聞くし別にいいよって言えるようになります。
 位階も高くないから、伝授していけば使える人数も普通に増えるし……。
 でも、カジットさんの目的を考えると、これは避けられない呪文なんすよね。

 あと、フィリップは、賢い父と兄のおかげで表に出ておらず、粛清を免れていました。今回のチエネイコ男爵の友情により、きっちりパンドラが処分してくれます。あと、他の家も次男三男にバカが残っていないか、チェックが入りました。おかげで他の国への浸食&諜報が少し遅れます。
 各国はチエネイコ男爵とフィリップに感謝すべき。

 ▲ページの一番上に飛ぶ
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。