携行缶 駄目なの? ガソリンスタンド給油 「お断り」に農家「困った」 京アニ余波相次ぐ自粛
2019年08月16日
ガソリン携行缶で四輪バギーに給油する橋本さん。最寄りのガソリンスタンドで給油を断られた(千葉県白井市で)
携行缶での給油を断るちらし。今月末で終了することを伝える内容のものもある(写真の一部を加工しています)
7月18日に京都市で発生した京都アニメーション(京アニ)放火殺人事件から間もなく1カ月。携行缶に入れたガソリンが放火に使われたことを受け、農家にも思わぬ余波が広がっている。薬剤噴霧に使うスピードスプレヤー(SS)や刈り払い機などを使う農家らが、ガソリンスタンド(GS)での携行缶給油を断られる事例が発生している。農家らは、携行缶での給油が生活に欠かせない人への配慮を求めている。(木村泰之)
総務省消防庁の通知でガソリンの携行缶などの容器への販売は、1事業所で1日200リットル未満とされている。京アニ事件以降、同庁は全国の消防本部などに携行缶での購入者に対し身分証の確認と使用目的、販売記録の作成を求める通知を出した。加えて、消防法を運用するための「危険物の規制に関する規則」で、危険物を扱う資格を持たない人が携行缶で販売することは認められていない。
しかし、資格を持つ従業員がいるにもかかわらず、自主的に規制をするGSが出てきた。今月末で給油を中止するちらしを客に示すGSも相次ぎ、農家らが対応に追われている。販売を中止する大手元売りブランドのガソリンを販売する会社は「事件後、GSが携行缶給油を利用する客の個人情報管理を求める社内ルールを設けた。対応できないGSでの携行缶給油は中止した」と説明する。
千葉県白井市で「幸水」や「豊水」など7品種の梨を生産する橋本哲弥さん(39)は、園地から徒歩で行ける距離にあるセルフGSを利用していた。SSや動力噴霧機などの動力源として、月に40リットルほどを購入し保管していた。
これまでは従業員に給油してもらっていたが、同じ従業員から携行缶での給油ができないと断られた。京アニ事件を機にGSを運営する会社から出された指示だという。橋本さんは、市内の若手農家でつくるグループに呼び掛け、携行缶給油が可能なGSの情報を共有した。橋本さんは携行缶を車に積み、約2キロ離れたGSまで通っている。
橋本さんは「社会的影響の大きさは分かるが、極めてまれな危険な事例に過敏に反応されては、本当に使いたい人が使えなくなる」と嘆く。
携行缶給油を自粛するGSが地域内で相次ぎ、携行缶給油を求める客が1軒のGSに集まり、指定数量を超えたために給油を断られるケースも発生している。
農家などの利用者からGSに苦情が寄せられていることを受け、総務省消防庁は今月7日、地域の消防本部やGS運営会社などに通知を出した。各給油所が容器に販売する量の基準を原則1日200リットル未満と据え置く一方、危険物を扱える従業員が給油し、給油設備の安全装置を完備していれば、200リットル以上の販売を認める内容だ。
同庁は「携行缶給油を求める人に供給されないことは国民生活への負担になりかねない。引き続き安全対策を呼び掛けたい」(危険物保安室)と話した。
JA―SSを運営するJA全農は「法令や消防庁などからの指示順守は徹底する。組合員だけでなく地域住民のために店頭での携行缶給油を続け、JA―SSの役割を果たしたい」(総合エネルギー部)と話す。
総務省消防庁の通知でガソリンの携行缶などの容器への販売は、1事業所で1日200リットル未満とされている。京アニ事件以降、同庁は全国の消防本部などに携行缶での購入者に対し身分証の確認と使用目的、販売記録の作成を求める通知を出した。加えて、消防法を運用するための「危険物の規制に関する規則」で、危険物を扱う資格を持たない人が携行缶で販売することは認められていない。
しかし、資格を持つ従業員がいるにもかかわらず、自主的に規制をするGSが出てきた。今月末で給油を中止するちらしを客に示すGSも相次ぎ、農家らが対応に追われている。販売を中止する大手元売りブランドのガソリンを販売する会社は「事件後、GSが携行缶給油を利用する客の個人情報管理を求める社内ルールを設けた。対応できないGSでの携行缶給油は中止した」と説明する。
千葉県白井市で「幸水」や「豊水」など7品種の梨を生産する橋本哲弥さん(39)は、園地から徒歩で行ける距離にあるセルフGSを利用していた。SSや動力噴霧機などの動力源として、月に40リットルほどを購入し保管していた。
これまでは従業員に給油してもらっていたが、同じ従業員から携行缶での給油ができないと断られた。京アニ事件を機にGSを運営する会社から出された指示だという。橋本さんは、市内の若手農家でつくるグループに呼び掛け、携行缶給油が可能なGSの情報を共有した。橋本さんは携行缶を車に積み、約2キロ離れたGSまで通っている。
橋本さんは「社会的影響の大きさは分かるが、極めてまれな危険な事例に過敏に反応されては、本当に使いたい人が使えなくなる」と嘆く。
苦情受けて 国が対策も
携行缶給油を自粛するGSが地域内で相次ぎ、携行缶給油を求める客が1軒のGSに集まり、指定数量を超えたために給油を断られるケースも発生している。
農家などの利用者からGSに苦情が寄せられていることを受け、総務省消防庁は今月7日、地域の消防本部やGS運営会社などに通知を出した。各給油所が容器に販売する量の基準を原則1日200リットル未満と据え置く一方、危険物を扱える従業員が給油し、給油設備の安全装置を完備していれば、200リットル以上の販売を認める内容だ。
同庁は「携行缶給油を求める人に供給されないことは国民生活への負担になりかねない。引き続き安全対策を呼び掛けたい」(危険物保安室)と話した。
JA―SSを運営するJA全農は「法令や消防庁などからの指示順守は徹底する。組合員だけでなく地域住民のために店頭での携行缶給油を続け、JA―SSの役割を果たしたい」(総合エネルギー部)と話す。
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