星稜高(石川)の奥川恭伸投手に注目が集まる北信越地区で、福井の逸材も指名を待っている。最速147キロを誇る丹生(にゅう)高の左腕、玉村昇悟投手(18)だ。
「不安です。楽しみだけど、不安の方が大きい」。指名されれば、越前町にある同校から初のプロ野球選手誕生となる。周囲は盛り上がる一方で、玉村自身は不安な日々を過ごしているようだ。
本人の心配とは裏腹に、プロ側の評価の指標となる調査書は11球団から届いた。2年時からスカウトの間で話題となり、今夏の福井大会では準優勝。切れのあるストレート、抜群の制球力を武器に、5試合で52奪三振と際立った活躍を見せた。
それでも、玉村は進路に迷いがあったという。「プロは小学生の頃からの夢。でも、まだ早いのではないかと思って…」。そんな左腕の背中を押したのが、同校の春木竜一監督(47)。「自信がない」と躊躇(ちゅうちょ)する玉村を、「自分を過小評価している。自信を持ちなさい」と説得。最終的には「勝負しようと思った」と玉村も納得し、プロ志望届を提出した。
夏以降も、後輩に交じって毎日練習を続け、春木監督は「さらに良くなっている。今の方がいい球を投げている」。直球の球速は常時で2、3キロアップ。伸びしろも大きな魅力だ。中日・音スカウトは「両サイドに投げられ、スライダーもいい。真っすぐが速くなれば、さらに良くなる」と素材の良さを買う。
「高校に入って、体も球速も技術も全て上がった。プロで愛される投手になりたい」と玉村。夢の実現は近づいている。 (麻生和男)