美術デザイナーに聞くセットのこだわり!『Mr.サンデー』
毎週(日)22時~『Mr.サンデー』
宮根誠司をメーンキャスターに2010年4月にスタートした情報番組『Mr.サンデー』。毎週日曜日に、その一週間で話題になったニュースや事象を取り上げるほか、さまざまな角度から切り込んだ特集が好評だ。
番組10年目に突入したこの4月、セットが一新されリニューアルしている。
そんなスタジオセットの「コンセプト」や、デザインに込められた「思い」などをデザイナーの斎田崇史に聞いた。
Q.新しいセットのコンセプトを教えてください。
番組が10年目に入って、プロデューサーから「斬新で、かつ情報番組として芯の通ったセットにしたい」との要望がありました。どんなものがいいか何度か話し合ったある日、ディレクターが「“波紋”をモチーフにしたらどうか」と言ったんです。各地の波紋を追及して伝える、宮根キャスターが波紋を起こす…とさまざまな意味合いの“波紋”です。
そこで、新しいセットはその“波紋”を象徴した「円」をちりばめたデザインにしました。
一番大きいオブジェはもちろん、MCが立つ台も円形。“波紋”は、セットだけでなく番組の統一コンセプトとして、名前のテロップを乗せる座布団(=ベース)やワイプ(=画面の片隅で出演者の表情を映す小さな窓)の枠も、四角形の角を取った形にしています。
Q.今回のセットは番組としては何代目になるのでしょうか?
「5代目」になります。初代から3代目までは日曜日の夜にゆったりした気持ちで見てもらいたいと、木目調の落ち着いたものでした。「4代目」のセットは、“バラバラだったピースを組み合わせる”という意味合いで、パズルをモチーフにしていました。そこから、月曜の朝を気持ちよく迎えようという“ブランニューウィークエンド”がテーマになっていて、明るい色合いを引き継ぐことは早めに決まりました。
Q.そうして決まった色味のテーマが、「ピンクと黄色」ですね。
そうなんです。“波紋”だと水を連想してブルーにするのが自然なのかもしれませんが、寒色のセットだと冷たい空気感になってしまうんですよね。あと青系の色はスポーツ番組の印象が強いという話にもなりました。「明日から明るく一週間を過ごしましょう」というメッセージを込めて、ピンクと黄色という明るい2色をメインに据えて、そこに薄ピンク、白、グレーを施しました。
Q.“波紋”以外に特徴的なところはありますか?
MCが動けるスペースをできる限り広くしています。通常の情報番組ではMCがカウンターの後ろに座って話すスタイルが多いのですが、カウンターを作らず、モニターも一台しか置かず、宮根キャスターが動き回れる空間を最大限まで設けました。モニターを減らした分、出し物のクオリティの高さが強調できます。
週末の情報番組なので、一週間に起きたことをわかりやすく噛み砕いて伝えなくてはなりません。踏切事故現場や沈没船の内部、火山の噴火口の模型など、いろいろな“作りもの”をふんだんに使える空間を確保しています。
このセットになって半年、宮根キャスターがあちこち動いてニュースを伝えていますので「もう少しセットを足したい」なんて部分も出てきたりしています(笑)。
Q.このセットのデザインで特に苦労した点は?
「全部のパーツが円のセット」って、自分でイメージ図を描いてみたのはいいけれと、どうやって建てるのかまったく想像がつかなくて。アートフレームのスタッフに発注する、というよりほとんど悩み相談でした(笑)。
鉄骨や木(モク)のいくつもの輪を組み合わせる際、それらを支えるのにどうしても1本のまっすぐな芯が要るんです。“波紋”が広がっている世界の中にその「芯」が入ってしまうのが嫌で、支えの棒の表にも小さな円をたくさん貼り付けて、棒を見えなくしています。その小さな円は番組のロゴを模したものだったりします。
円だらけのセットが建った後、あるスタッフには「本当に建ったんですね。こんな形のセットは無理かと思っていました」と言われました。実は、僕自身もどうなるかわからなかったので、制作過程が気になって工場に何度も通いました(笑)。
Q.こだわったポイントは?
リング状の電飾ですね。海外の非常口なんかにも使われている「導光板」という素材を使っているのですが、普通、導光板は板状のまま光らせたい素材に挟んでくっつけるところを、今回は輪の形に曲げたものを鉄骨に付けて光らせています。
導光板を曲げる加工は、電飾スタッフとしても初の試みだったようです。また、取り付けた時の配線をどちらに逃がすかなど、小さな模型を作って、10年ずっと一緒にやっているスタッフでも「お任せ」にせず(笑)、みんなで何度も話し合いました。
Q.ほかに視聴者に気付いてほしい“遊び”のような部分はありますか?
実は、オブジェの輪はどれも完結した円になっていなくて、少し切れているんです。水面に広がる波紋って、完全に閉じた丸の形になっていないような気がして。
それと、これは実は正円ではなく、正円に見せかけた楕円なんです。正円だと大きさ的にスタジオに収まらなくて、だからといって小さくしてしまうとイメージとは違うものになってしまうので、閉じ切っていないひらけた空間、終わっていない、まだ伸びしろのある“波紋”。それを見つけて、“波紋”の広がりを感じていただけると嬉しいですね。
CGとのバランスも考え抜き、細部まで計算し尽くされたスタジオセット。新しい手法を取り入れて「斬新で、かつ情報番組としての芯の通ったセット」を見事具体化した。しかし、情報番組のセットは「建てて終わり」ではなく、より良くするための修正やアイデアも日々出されるのだそう。
<デザイナー・斎田崇史プロフィール>
2005年入社。『民衆の敵~世の中、おかしくないですか!?~』『とくダネ!』『Mr.サンデー』など、ドラマ、情報番組で活躍。10月17日(木)スタートの木曜劇場『モトカレマニア』も担当する。