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(喜美子)ア~ハハッ ハハッ!
うわ~! 止まらへ~ん!(信作)止めろや…。
何 これ 楽しい~!
昭和28年。 喜美子 15歳になりました。
♪~
♪「涙が降れば きっと消えてしまう」
♪「揺らぐ残り火 どうかここにいて」
♪「私を創る 出会いもサヨナラも」
♪~
♪「日々 恋をして 胸を焦がしたい」
♪「いたずらな空にも悔やんでいられない」
♪「ほら 笑うのよ赤い太陽のように」
♪「いつの日も雨に負けるもんか」
♪「今日の日も涙に負けるもんか」
おもろいなあ 自転車。 楽しいなあ。
これで高校通え言われた。伊賀のおばあちゃん買うてくれた。
高校歩いてすぐやんけ。
俺 高校行きたないねん。
また辛気くさいこと。
見ろ うちの絵を!
寺岡先生が絵画展に出してくれやった。
今年は ついに金賞や!これ見て元気出せ。
学校飾ったったやんけ目ぇが腐るほど見たわ。
ハハッ。
何で 高校 嫌や? 勉強嫌いか?勉強好きなやついる?
うち 勉強好きやで。でも 働くのも好きや。
ええなぁ 俺も働きたい。今年は進学する子の方が多いで。
ほやけど 高校には怖い先輩いるいう うわさやし…。
照子に守ってもらえ 頑張れや!
俺も喜美子みたいに就職したい。まだ続くんけ?
喜美子は 中学を卒業したら照子のお父さんが経営する丸熊陶業で働く予定です。
今日は そのご挨拶です。
お世話なります。遅い~!
髪の毛 きちんとせえお母ちゃんに言われてん。
態度が きちんとしてへんもん髪だけ きちんとしても あかんで。
態度きちんとするで。ほな やってみぃ?
照子お嬢さん 行ってらっしゃいませ。
「今日も かわいいなあ」言うてくれる?
そんなん勤務内容に含まれへんわ。どこや?
うちの陶工さん みんな言うてくれるで。
これからはうちのこと見て言うかもな。
「かわいいなあ 喜美ちゃん」言われてもお世辞やで。
「かわいいなあ 照ちゃん」もお世辞やで?
ほんまか!ほんまや!
(笑い声)(西牟田)照子さん。
あっ 西牟田さん。こんにちは。
ほな よろしく。よろしくお願いします。
(西牟田)行きましょか。
足元 気ぃ付けて。はい!
このころ 日本の火鉢のほとんどが信楽で作られていました。
丸熊陶業は その信楽の中でも一二を争う会社です。
(秀男)せっかく来てもろたんやけどなこの話は なかったことにしてもらいたい。
えっ?照子の頼みやしよう知ってる喜美ちゃんやしな働いてもらおう思うとたんは確かや。人もおった方が助かる。
ほやけど…喜美ちゃんには厳しいんちゃうけ?
厳しくてもかまへん。うち 一生懸命 働きます!
いや… 男ばっかりの職場に15歳の女の子を受け入れるやなんてそもそも わしの考えが甘かったでよ…。
「そんなん困ります」いう…これは みんなの意見なんや。
(西牟田)すんません。改めて おわびに伺うわ。
学校にも出向いてほかに ええ就職口探してもらうよう 頼むでよ。
ほんま 申し訳ない。堪忍や 喜美ちゃん。
♪~
ありがとうございました。
信楽のような小さな町で 新たな就職口がすぐに見つかるとは思えません。
ましてや 2月も半ば過ぎてのこの時期です。
♪~
(直子)こう こう こう こうこう こう こう こう こう!
どうや? うまいやろ。
難しいで。ほんま?できる?
百合子は無理やろ。ヘヘヘヘッ。
あっ! 喜美子姉ちゃん お帰りなさい。
お帰り。ただいま。 外で遊んでたんやな?
うん。人 来てるさかい表で百合子と遊んどき言われた。
(常治)博之君なほな 4月から来てもらおか。
(保)よろしくお願いします。
ほら。(博之)あ… よろしくお願いします。
(マツ)お弁当 どないしましょ。
ご両親いたはれへんのやったらおばあちゃんが?いや 毎日作って持たすの大変でしょ?
僕がやりますんで!
(谷中)お兄ちゃんも偉いでの勤めてた工場が閉鎖されて次の働き口 必死に探してるとこや。(マツ)あら~。
よっしゃ。 ほな うちで雇うたろう。
(マツ)え…。(常治)ええから ええから…。
(谷中)2人とも?
おやっさんの紹介やったら間違いおまへんやろ?
う~ん そりゃまあわしの眼鏡にかなった子やさけ…。
力仕事やし男手は多いにこしたことおまへん。
これから どんどん商売広げていく算段してまっさかい。
(谷中)ほやけど… お給金2人分やど?
娘が 春から丸熊陶業なんですわ。
(谷中)ええ!? そうなんけ?(マツ)おかげさまで。
(谷中)丸熊陶業なら安泰やじょ。生活助かるの!
(マツ)娘の稼ぎを当てにするようであれですけど…。
当てにするわ もう15やで。
ほな 雇ってもらいなさい。
(保)ほんまに ええんですか?(常治)ああ 任せとけ。
(保)ありがとうございます!(常治)おう!
おばあちゃん! もう くず拾い行かんでええで!
くず拾い…。
(常治)何や おったんか。(マツ)お帰り。
ただいま。 あの…。
お嬢さんですか?
喜美子や。喜美子お嬢さん お帰りなさい。
お世話になります!
おい!あ… お世話になります。
(保)おばあちゃん。(祖母)ありがとうございます。
(常治)ああ いいえ…。
(常治)丸熊陶業 月給1万!?
あんな 15の小娘に1万も出すかいなほんな…。
(大野)いやいやいや 丸熊陶業やったら若いもんにも そんぐらいは。
も… もろてんのん?よかったですな!
あ そう…。(笑い声)
飲んで。よろしいか?飲んで 飲んで。
もう一本!お代わり頂戴 お代わり。どんどん どんどん持ってきて。
(大野)頂きます。(常治)丸熊陶業様々やな。 あ そう。
あ~ めでたい酒は…。(2人)うまい! アハハハ…。
せや どうやった?丸熊陶業にご挨拶行ったん?
お母ちゃんからも 照ちゃんのお父さんに改めて きちんとお礼言わなあかんな。
お母ちゃん それやけどな…。・(母親たち)こんばんは~!
来た!え?
(陽子)こんばんは!(マツ)ほんま すんません。
持ってきたで~。お邪魔します。
(妙子)あ… これは?あ~ ええなぁ。
それもええけど これもええんちゃう?
(一同)わあ~!(久恵)ほな 下は これやの。
あの これ…。
あんたのブラウスとスカート作ってくれはるん。
えっ!?ブラウス担当とスカート担当に手分けしてな。え~!
うそやん!
これで ええんちゃう?こ… こう。
こんな感じ!え~!
こんなええ布? こんなきれいな色?
うそ! ええんけ?よう似合ってるやん!
これで決まりや!ええなぁ。
ほな ちょっと測らせてな?え… ほやけど… ほやけど これ…。
(久恵)なあ もうちょっと短くてもええんちゃう? ほら。
(百合子)ええなぁ?(マツ)うん。
ほやけど これ 何で?
何でて 喜美ちゃんの就職祝に決まってるやろう!
ありがたいね。
(陽子)中学出て働くやなんて頑張り屋さんや 喜美ちゃんは。
就職 おめでとう。(母親たち)おめでとう。
ブラウスとスカートが完成したら丸熊陶業に着ていってや?
着てってなあ。着てってなあ。
(泣き声)
そんな… そんな うれしいの?
うれしいんや! うれしいんやね!
(泣き声)
ああ そうですか。就職話 のうなりましたか。
ほんまに申し訳ありません。
いや~そっちの状況も よう分かります。
あんな小娘やしね話なくなるんちゃうかいうてさっき言うとったとこです。 なっ。
はあ… そうですか…。
この日から父は しばらく帰ってきませんでした。
どうも ご丁寧に。
こちらこそ お役に立てずに。
ほな 失礼します。
洗濯もんしてくるわ。
丸熊陶業からは おわびにとお酒やら何やらたくさんの品が届きました。
(直子)わあ!キャラメルぎょうさん入ってるで!
ほんまや。 お金要らんの?なあ お金払わんでええの?
百合子のこれ。 うちのこれ。 ヘヘッ。
こんな下着はいてんのけ?うちのちゃうわ。
あ… カツ子おばあちゃんのけ。
洗濯代わりにやったお金もろってんのまだやってたんやな。
なんぼ もらうのん?
もう謝りに来んでええよ。
謝りに うちがわざわざ来るわけないやん。
ちょっと待てるか聞きに来てん。
時間かけて説得するさかい 待てるけ?
うちが働けるように?そや。
みんなを説得してあげてもええよ?
まっ いつになるか分からへんけど。
お父ちゃん いいひんさけ今 何とも言えへん。
ほかに働き口 信楽にはないで?分かってるわ。
ほな 待っとき。
♪~
それから数日後。
喜美子。 お父ちゃんが…。
お帰り。
詰めが甘かったな。つめ?
丸熊陶業のことや。
就職話 なくなってしもうて すみません。
口約束やったらあかんっちゅうこっちゃ。
今度のとこは 一筆書いてきてもろた。
働き口 見つけてきてくれた。
そうなん?
荒木商事いう。荒木商事。
よう そんな会社 見つ…。
大阪?そや。 大阪で働け。
春から お前は大阪や。
♪~