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 星野リゾート(長野県軽井沢町)は10月9日、新規、リニューアル合わせて8施設の運営を近くスタートすると発表した。新たに運営する8施設を見ると、同社の今後の事業戦略が浮かび上がる。

星野リゾートは「西表島ホテル」の運営に再び乗り出した
 

 新規開業する施設は5カ所。年内に営業を始めるのが「リゾナーレ那須」(11月、栃木県那須町、客室数43室)、20年に営業を開始する施設のうち今回発表したのが「界 長門」(3月、山口県長門市、40室)、「BEB5土浦」(3月、茨城県土浦市、同90室)、「星のや沖縄」(5月、沖縄県読谷村、同100室)。星のや沖縄の開業と同時に隣接地には約200席のカフェをオープンする。

 既存施設のリニューアルは3カ所。年内の運営開始が「西表島ホテル」(10月、沖縄県竹富町、同138室)、20年に運営を開始するのが「サーフジャック ハワイ」(1月、米ハワイ、同112室)と「リゾナーレ小浜島」(4月、沖縄県竹富町、同60室)となる。

 注目されるのは、新たに手がける施設数が8カ所と多いこと。背景には星野リゾートにとって懸案だった開発体制の整備が進んできたことが挙げられる。

 旅館やホテルの開発は都市部のマンションやオフィスと違い、物件ごとの違いが大きく、収益性の見極めが事業成長のカギを握る。星野リゾートは創業地である軽井沢から外に踏み出して以降、数年ほど前まで施設の開発は星野佳路代表が多くを担ってきた。

 ただ開発には計画から運営開始まで手間がかかり、期間は5~6年ほど必要になる。持ち込まれる案件の増加に対応するだけでなく、将来の「ポスト星野」までを見据えると、星野氏に過度に依存しない体制が不可欠になる。

 星野リゾートは中途採用も活用して人材を確保しながら育て、組織的な開発の仕組みを磨いている。開発担当者はやみくもに全国の案件を回るのではなく、想定できる宿泊代などを踏まえながら候補となる案件を絞り込み、じっくり開発を進めるという。開発体制が整い人材が成長してきたことが施設数の増加ペースアップにつながっている。

 発表した8施設からは今後の戦略がにじむ。このうちサーフジャック ハワイは星野リゾートにとって初の米国での運営施設となる。17年に子会社を通じて所有権を取得していたが、運営にかかわらないため星野リゾートのホームページには載せていなかった。将来の北米進出に向けて星野リゾート色を打ち出し、運営も含めて本格的に取り組む。海外施設はインドネシアのバリ島、台湾に次ぐ3カ所目。星野氏は「現在、北米、中国での案件にも取り組んでいる。国内市場が将来的に縮小する可能性があり、海外展開をさらに進めたい」と意気込む。

 またユニークなのはリニューアル分のうち、西表島ホテルとリゾナーレ小浜島は数年前まで星野リゾートが運営を手がけていた施設であること。当時のオーナー企業の意向で一時運営から離れたが、再び運営を担うことになった。