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【静岡】

「ブラック校則」本紙調査 東部県立6高校「届け出制」

 地毛の茶髪を黒染めするよう強要するなど「ブラック校則」への批判が全国的に高まる中、県内の全日制県立高校全八十三校のうち、少なくとも県東部の六校に、くせ毛や天然パーマなど生まれつきの髪の特徴を、学校に届け出る校則や決まりがある。本紙が県教委に情報公開を請求し、分かった。多様性に配慮せず、生まれつきの身体的特徴などを申告させることには識者から「人権侵害」との批判が強い。 (高橋貴仁)

 本紙は八月上旬に「学校での決まり事を定めた校則や規則が分かる文書一切」を請求し、県教委は八十三校の現状を調べ、九月下旬に開示決定した。

 六校は三島南(三島市)御殿場、御殿場南(御殿場市)沼津西(沼津市)吉原(富士市)富岳館(富士宮市)。例えば、吉原は「くせ毛、髪の色などについて、生まれつきの特徴がある場合は頭髪登録をする」、沼津西は「色、くせ毛、天然パーマの者は、『頭髪についての申告書』に記入し、担任に提出する」と定めている。

 吉原の芹沢秀巳教頭は「事前に職員全体で把握し、地毛の色の薄い生徒や天然パーマの子に頭髪指導をしないため」と登録させる理由を説明する。三島南の高嶋政和教頭も「知らずに指導すると生徒がかわいそうだから」と話すが、「生徒の尊厳を傷つける可能性があり、規則の見直しを進めている」と続けた。

 多くの高校はパーマや染色、脱色などを禁じ、三校は直し方も統一している。富士宮北は市販染料で染めることを禁止し「美容室、理容室にて黒染めにし、短髪にする」と規定。「真っ黒になり、色落ちしにくくしてほしい」と店に申し出ることも求めている。清水西は、理容店や美容院の領収書の提示を義務付ける。

 男子は目や耳、襟にかからない、女子は肩の線より長くなったら束ねるなど、四十九校には長さの取り決めがあった。

 文部科学省によると、校則とは「各学校の責任と判断」のもと、各校が定めると定義。「児童生徒の実態、保護者の考え方、地域の実情、時代の進展」を踏まえ、積極的な見直しの必要性にも言及している。

 県教委の担当者は「形骸化している校則や決まりも多い。絶えず見直さなければならず、各校に指導をしていきたい」と話した。

◆ブラック校則が疑われる県立高校の主な校則や規則(抜粋)

【服装】

・コートの着用は不可(稲取)

・女子は黒または紺のPコートに限り認め、男子は原則として着用を認めない(伊豆中央)

・防寒コートは学級担任の許可を得て使用する(掛川西)

・暑い場合は授業担当者の許可を得てブレザーを脱ぐことを認める(富士宮北)

・シャツまたはブラウスの下に着用するものは白を基調とした地味な色に限る。柄ものは着用しない(浜松江之島)

【頭髪】

・男子は短髪またはスポーツ刈りを基本とする(静岡農)

・中学在学中や中学卒業から高校入学までの間に一度でも染色等をしてしまった生徒は高校を卒業するまでの3年間、継続した頭髪指導を受けることになる(静岡西)

【校外活動】

・外泊は極力さけること。やむを得ない時は保護者の承認を得る。かつ事後、担任に報告承認を受ける(伊東商)

・保護者同伴の場合を除き夜間外出は次の時間までとする。男子=年間を通じて21時。女子=5~9月20時、10~4月19時(浜北西)

・次の事項は禁止。祭典参加=許可者は除く(掛川工)

※かっこ内は高校名

◆識者「人権侵害」を懸念「生徒の多様性奪う」

 「ブラック校則 理不尽な苦しみの現実」(東洋館出版社)の編著者で名古屋大の内田良准教授(教育社会学)の話 頭髪の状況を報告させるのは人権面の配慮が足りない。服装や髪形だけでなく、学校外のことまで事細かく決めて口出しするのも、おかしい。どこまで細かく介入するのか、寒けがする。状況に応じて生活を営むことは考える力を養うことにもなる。(ブラック校則は)生徒が選択し、創造する力を奪っている。学校内を治外法権化や無法地帯化せず、校則をネットで公表するなど、外から見える化を進めることが大切だ。

 「ブラック校則をなくそう!プロジェクト」のメンバーで評論家の荻上チキさんの話 「ルールだから校則に逆らうな」と抑え付けると、社会に出た後も、ブラックな働き方や理不尽なサービス残業をさせる企業にも従えというメッセージになる。ルールはルールでしかなく、変えられるもの。男子はこうあるべき、女子はこうと、校則で性規範を求めることにもちゅうちょがない。多様性を奪い、それでよいのかと問われなければならない。

<ブラック校則> 2017年、地毛の茶髪を黒染めするよう何度も強要され、不登校になった女子高生が大阪府を提訴したことで社会問題化。同年、理不尽な校則の見直しを求める「ブラック校則をなくそう!プロジェクト」が発足した。「一般社会から見れば明らかにおかしい校則や生徒心得、学校独自ルールなどの総称」と定義し、今年8月に文部科学相に実態調査などを求める署名を提出した。全国的に見直しの動きも進み、大阪府は校則の点検と見直しを指示し、全府立高校の3割で削除や修正などがなされた。

 

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