関電、原発部門の幹部一掃 内向き体質に批判

環境エネ・素材
関西
2019/10/9 23:35

記者会見を終え、会場を後にする関西電力の岩根社長(右)と八木氏(9日午後、大阪市福島区)

記者会見を終え、会場を後にする関西電力の岩根社長(右)と八木氏(9日午後、大阪市福島区)

関西電力は9日、福井県高浜町の元助役から役員が金品を受け取っていた問題の経営責任を取るとして、八木誠会長と岩根茂樹社長の辞任を発表した。八木会長は同日付で辞任し、岩根社長は第三者委員会の調査結果後に辞任する。経営陣の大幅刷新で統治体制を見直す。2日の記者会見から1週間で内向き体質への批判が勢いを増し、政府や自治体などからの包囲網が狭まった。問題の中心の原発部門の幹部を大幅に入れ替えるが、信頼回復の道は険しい。

9日に大阪市内で記者会見した八木会長は「信頼の回復を進めるために経営責任を明確にする」と語った。関電は同日、今回の問題を調べる第三者委員会の委員長に元検事総長の但木敬一弁護士が就くと発表。年内をめどに調査報告を受ける見込みだ。同日記者会見した但木氏は「先入観を持たずに十分な調査を進めていきたい」と話した。

関電は福井県高浜町の元助役(3月死去)から役員ら20人が2006~18年に約3億2千万円相当の金品を受け取っていた。八木会長のほか、受領していた森中郁雄副社長や鈴木聡常務執行役員など原子力部門の幹部ら4人も9日付で辞任した。会長は当面空席となる。

八木、岩根両氏は2日の記者会見では再発防止策を進めるため続投すると表明していた。ただ、調査対象以外の元役員が受領を認めるなど疑惑は広がった。電力業界を監督する菅原一秀経済産業相や原発の立地自治体からの批判も相次いだ。

岩根社長は「営業部門からお客様の(厳しい)声を聞いた」と漏らすなど通常業務にも影響が出始めた。先行きの業績不安を抱いた市場では関電株は下落基調だった。各方面の圧力が強まり、4日に辞任を決めた。

関電は信頼回復に向け、内向き体質からの脱却を目指す。今回の金品受領問題は高浜原発の地元との関係を良好に保とうと元助役に頼りすぎた側面がある。そのため金品を受領して辞任した原子力部門トップの森中副社長の後任には、原子力の経験がない松村孝夫常務執行役員を充てた。

関電は今後も3基の原発再稼働を目指し、「核のゴミ」である使用済み核燃料の中間貯蔵施設の候補地選定という難題も抱えている。「現時点でどんな影響が出るのか申し上げられない」(岩根社長)というが、先行きは見通せない。

再生可能エネルギーや海外戦略の拡大の方針も打ち出しているが、原発に比べて収益への貢献度ははるかに小さい。原発不信を払拭できないことには成長への展望を開けないのが実態だ。

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