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 ノーベル化学賞の受賞が決まったリチウムイオン電池の開発に関わった吉野彰さん(71)。研究の裏にはどんな秘話があったのか。その研究はどんな意味をもつのか。生物学者で青山学院大学教授の福岡伸一さんが解説、吉野さんとも電話で対談した。

 ノーベル賞は世界最高の賞で、華やかなのは当然です。歴代受賞者の名前を眺めると、アルプス山脈を見ているようです。あれがマッターホルン、これがモンブランというように、ピーク(山頂)の一つ一つが目立って見えます。

 そのピークをつなげば、教科書的な科学史を語ることはできます。しかし、ピークが高い理由は、それを支える山麓(さんろく)があるからです。受賞者の業績をたたえることも重要ですが、彼らがピークに到達した道のりをたどることも有意義だと思います。

 最初に登山口を見つけたのは誰なのか。その点、ノーベル賞の選考委員会はかなりフェアな態度をとっています。

 端的なのは、2002年に化学賞を受賞した島津製作所の技術者だった田中耕一さん。たんぱく質の質量分析方法を見つけました。選考委員会は、著名でない学術誌に出した短い論文から田中さんを探し出し、貢献を評価しました。

 リチウムイオン電池が使われている携帯電話がない生活は私たちにとっては考えられません。この発明がいつかノーベル賞に輝くことは間違いないと私も思っていました。

 では、この山道をたどってみま…

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