米民主党、トランプ大統領への弾劾調査を正式開始 ウクライナとの関係めぐり

お使いの端末ではメディアプレイバックはご利用になれません
トランプ氏は「就任の誓いと憲法と安全保障を裏切った」 ペロシ下院議長

米野党・民主党は24日、ドナルド・トランプ大統領が政敵に対する捜査をウクライナ大統領に働きかけたとされる疑惑をめぐり、弾劾調査を正式に開始すると発表した。

民主党幹部のナンシー・ペロシ下院議長は、トランプ氏が国の安全保障を脅かし、大統領就任の誓いと憲法を深刻に侵したと批判した。トランプ氏は民主党の動きに対して、「またゴミみたいな魔女狩りだ」、「大統領へのハラスメント」だとツイートで反発した。

来年の大統領選で民主党候補に選ばれる可能性があるジョー・バイデン前副大統領とその息子のウクライナでの活動について、トランプ大統領が今年7月にウクライナ大統領に電話で捜査するよう促し、その見返りに軍事援助の拡大を申し出たとされる疑惑が浮上し、民主党内では弾劾手続きの開始を求める声が高まっていた。

トランプ氏はこの日、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領を相手にバイデン氏について話し合ったことは認めつつ、自分は単に軍事援助を差し控えると圧力をかけることで、アメリカへの欧州の協力を確保しようとしただけだと説明していた。

お使いの端末ではメディアプレイバックはご利用になれません
トランプ氏、ウクライナとの通話記録「見てもらいたい」と記者団に

これを受けてペロシ議長は、トランプ氏が「法律に違反」したと述べ、その行動は「憲法上の責務に抵触する」ものだと批判。「大統領は今週、自分に有利になる行動をウクライナの大統領に要求したと認めた」と糾弾し、「大統領の責任を問わなくてはならない」と、弾劾調査の開始を発表した。

議長はこれまで、大統領選でむしろ不利になる可能性などを理由に弾劾手続きに及び腰だったものの、この日は、大統領の責任を問わなくてはならないと強調した。

昨年秋の中間選挙で、下院は民主党が多数党となったため、弾劾訴追決議が成立する可能性が高いものの、解任するかどうかを決めるのは上院の弾劾裁判。上院は与党・共和党が多数を占めるため、約20人の共和党上院議員が造反しなければ、トランプ大統領は解任されない。

バイデン前副大統領も、トランプ大統領がウクライナとのやりとりについて議会調査に応じないならば、弾劾手続きもやむを得ないと述べた。バイデン氏は、トランプ氏を弾劾することになればそれは「悲劇」だた、「自分が作り出した悲劇だ」と批判した。

トランプ大統領は、ウクライナ大統領との通話記録公表を約束し、「まったく適切な会話だった」ことを示す意向を示している。

共和党のケヴィン・マカーシー下院院内総務は、「ペロシ議長は下院議長だが、この件についてはアメリカを代弁していない。弾劾調査を開始すると一方的に決めることはできない」と述べた。

<関連記事>

ウクライナ疑惑とは

複数の米紙報道によると、トランプ氏は今年7月、ゼレンスキー大統領に対して、バイデン氏ならびに、ウクライナのガス会社ブリスマの取締役だった息子のハンター・バイデン氏について捜査を要請し、その見返りに軍事支援の拡大を約束したという。大統領の通話内容に「非常に気がかり」な内容があると情報機関の担当者が、所管の監察総監に内部告発したことで、問題が浮上した。

米紙ワシントン・ポストによると、このやりとりが「あまりに気がかりだ」と感じた情報当局者が、自分が属する機関の監察総監に報告。これを受けて、民主党はすでに調査に着手していたという。大統領と外国首脳との電話会談に同時通訳がつき、情報機関の担当者が内容を聞いているのは通常の手続き。

米紙ウォールストリート・ジャーナルは消息筋の話として、トランプ氏がゼレンスキー氏に「8回ほど繰り返し」、自分の顧問弁護士のルディ・ジュリアーニ氏と協力してハンター・バイデン氏を調べるよう促したものの、見返りは提供しなかったと伝えた。

米情報諸機関のマイケル・アトキンソン監察総監が連邦議会に宛てた手紙によると、告発内容は機密情報に関する「深刻で甚だしい問題、法律の乱用もしくは違反」に関するものだったという。

国家情報長官代行のジョセフ・マグワイヤ氏は今のところ、告発内容の詳細を議会に提出することを拒んでおり、民主党が強く反発している。国家情報長官だったダン・コーツ氏は7月末に辞任を発表した、8月半ばに退任。トランプ氏がマグワイヤを長官代行に任命した。

米連邦法では、監察総監への告発が「緊急の懸念」だと判断され、監察総監がその内容に「蓋然性がある」と判断すれば、その省庁のトップは7日以内に連邦議会に情報を共有しなくてはならない。

お使いの端末ではメディアプレイバックはご利用になれません
米大統領を弾劾するには? 法学教授が説明

次はどうなる

ペロシ議長の発表を受けて、いずれかの下院委員会が、トランプ氏とゼレンスキー氏の電話会談をめぐり、大統領が弾劾に相当する問題行動をとったか調べることになる。

ペロシ氏は、すでに複数の案件についてトランプ氏を調べている下院の6つの委員会も、正式な弾劾調査の一環として調査を継続すると述べた。

調査の末に下院本会議に弾劾決議案が提出された場合、定数435議席のうち民主党が235議席を占めているため、成立に必要な単純過半数は獲得できる見通し。

一方の上院では、定数100議席のうち、共和党が53議席を占める。上院の弾劾裁判の結果、解任の動議が成立するには3分の2以上の賛成が必要となるため、多数の共和党議員が造反しない限り、大統領が実際に解任される見通しは少ない。

調査会社「YouGov」がアメリカ人を対象にした世論調査によると、もしもウクライナ政府にバイデン氏を捜査させるため、ウクライナへの軍事援助をトランプ氏が一時停止したと確認された場合、55%が弾劾を支持すると回答した。

(英語記事 Trump Ukraine row: Democrats launch formal Trump impeachment inquiry

この話題についてさらに読む