トップ > 一面 > 記事一覧 > 記事

ここから本文

一面

源氏物語、最古の写本 豊橋・吉田城主の子孫所有

藤原定家が編さんしていたと分かった「若紫」の写本=京都市上京区の冷泉家時雨亭文庫で

写真

 愛知県豊橋市の吉田城主を務めた大河内家の子孫が所蔵していた源氏物語「若紫」の写本が、小倉百人一首の選者として知られる歌人、藤原定家(1162~1241年)が鎌倉時代に編さんした「青表紙本」だったことが分かった。調査した冷泉家時雨亭文庫(京都市)が発表した。専門家によると、重要文化財級の価値があるという。

 縦21.9センチ、横14.3センチ、本文部分が126ページ。鎌倉時代の写本用の紙が使われていることや筆跡などから、定家の編さんと判断された。

「若紫」の表紙=京都市上京区の冷泉家時雨亭文庫で

写真

 源氏物語は、紫式部が書いた原本は残っていない。写本が多く作られたが、鎌倉時代には文章が乱れ、定家が各写本を比較して校正。表紙の青い青表紙本を編さんした。

 現存する青表紙本は、源氏物語全54帖(じょう)のうち「花散里(はなちるさと)」「柏木」「行幸(みゆき)」「早蕨(さわらび)」の4帖で、最古の写本とされる。4帖とも、発見から少なくとも約80年が経過しているが、いずれも重要文化財に指定されている。

 若紫には、光源氏が、後に妻となる紫の上を見いだす場面などが描かれる。これまでは、青表紙本を祖とし、室町時代中期に書写された「大島本」の存在が確認されていた。

 青表紙本を所蔵していたのは、大河内家15代当主、大河内元冬さん(72)=東京都在住。祖父が集めた茶器を茶道関係者に見せようと収蔵用の箱を開けた際、この写本を見つけた。この茶道関係者に「青表紙本の本物ではないか」と言われ、調査を依頼した。大河内家に残っていた所蔵目録を調べたところ、大河内家出身の江戸幕府老中の松平信祝(のぶとき)が1743年、福岡藩主から「200両の価値がある」とする鑑定書とともに若紫を譲り受けたとの記述があった。

 元冬さんは「祖先は偽物をつかまされたのだろうと思っていた」と驚いた。

◆「驚きで意義深い発見」

 愛知県豊橋市美術博物館は、大河内家から寄託された一部の所蔵品を管理している。学芸員の久住祐一郎さん(34)は今回の調査でも、大河内家の所蔵目録解読などに協力した。「目録に記載があっても、行方不明の物もある。大河内さんが写本を持っていたことは驚きであり、うれしい。定家の写本が新たに見つかった意義は大きい」と喜んだ。

 (浅井弘美)

 

この記事を印刷する

中日新聞・北陸中日新聞・日刊県民福井 読者の方は中日新聞プラスで豊富な記事を読めます。

新聞購読のご案内

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山
地方選挙

Search | 検索